JT with Farmers #01
島を支える資源を受け継ぎ、つなげるために
砂川祐輔さん/沖縄県宮古島市

2022/08/12

JTが目指すサステナビリティの一つに、日本のたばこ産業全体の持続可能性を探り、それを未来につなげていくことがあります。それは、たばこの製造過程で地球環境に与えるインパクトを最小限にすることや、地域経済への貢献、農業課題の解決・改善など、さまざまなテーマがあります。JTがそれらひとつひとつと真摯に向き合い、より良い環境づくりに挑み続けるために、欠かすことのできないパートナーが葉たばこ農家です。本特集「JT with Farmers」では、日本全国にいらっしゃる葉たばこ農家の、農業に対する想いや課題、新しい取り組みや未来の展望などを取材しました。彼らに寄り添い、ともにアクションを起こすことが、たばこ産業の持続可能性を探る第一歩であると考えています。

第1回目は、沖縄県宮古島市で葉たばこの栽培を行い、沖縄県葉たばこ耕作青年部長も務めた砂川祐輔さん。日本最南端の地で、どのように葉たばこが育てられているのか、地域とのつながりや、砂川さんが農業を始めたきっかけ、そしてどんな想いを持って葉たばこと向き合われているのか。収穫期まっただ中の宮古島に向かい、お話を伺ってきました。

軽い気持ちで受け継ぐも、農業の面白さに開眼

沖縄本島から飛行機で約45分に位置する宮古島市。「ミヤコブルー」と称される美しい海とサンゴ礁が有名で、ダイビングやサーフィンといったマリンアクティビティも充実し、国内外から多くの観光客が訪れる日本きってのリゾートアイランドです。

そんな海のイメージが強い宮古島市ですが、空港から車を南へ数分走らせると一転、サトウキビ畑や牛舎などが点在するのどかな風景が広がります。

その一区画で、葉たばこ農業を営んでいるのが、砂川祐輔さん。

「ちょうど5月の今は収穫の時期。毎日朝から畑に出て、家族やパートさんとともに一枚一枚大切に葉たばこを収穫しています」

柔和な表情でそう話す砂川さん。農作業機「AP-1」に乗って、葉っぱの熟れ具合を瞬時に見極め、収穫を進めていく手際の良さは、さすがの一言。しかし、実は砂川さん、もともと好んで葉たばこ農家になったわけではないそう。

「昭和48年に祖父が葉たばこ農業を始めて、親が継いで、私で3代目。学生の頃から手伝っていましたけど、やっぱり友達と遊びたいじゃないですか。だから、その頃はただただ辛いなぁって」

島の各所にはサトウキビが群生している

やがて砂川さんは東京へ出て、農業とは関係のない仕事に従事。しかし、家業の忙しさがピークに達し、「とりあえずお試しで」という軽い気持ちで作業を手伝うようになったのが21歳の頃。「まさかそこから20年以上も続けるとは思わなかったですよ」と砂川さんは笑いますが、続けられたのは周囲のサポートが大きかったといいます。

「とにかく先輩方がみんな優しくて。作業のことや、葉たばこのこと、地域のこと、辛いことも楽しいことも、全て教えてもらいました。少しの工夫が生産量、そして収益に直結する農業の面白さも、先輩たちから学びました。今では、やれる限りは続けていきたい、そう感じています」

起源は400年以上前! 歴史ある産業を日々改善

実は葉たばこは、北は青森、南は沖縄まで、全国32県で栽培されている農作物。山間の厳しい環境でも育てられており、地域農業の基幹作物となっているところも少なくありません。耕作農家とJTとの契約にて栽培されており、農家経営の柱と位置づけている農家も多いのです。

沖縄県でも、昔から葉たばこ農業がさかんでした。その起源は400年以上前にさかのぼると言われ、明治時代には現在の主な品種である黄色種の栽培がスタート。2022年のJTの調べでは、沖縄県で葉たばこを栽培する農家数は132戸で、そのうち宮古島市在住が66戸を占め、実に県の半分がこの島の農家です。

その分、重要な産業として位置づけられており、野菜や果物、畜産も含めた農業の中で基幹作物のひとつとなっています。
そんな宮古島市の基幹産業のひとつである葉たばこ農業を、砂川さんたちは試行錯誤しながら日々改善を図っています。

「作業の負荷を減らしたり、JTさんとも協力して新しい農機や栽培技術に挑戦したり。生産性を高めるために、やれることはまだまだあります」と砂川さん。その傍らには、JTのリーフマネージャーの姿があります。

一面に農地が広がる宮古島。その先にはミヤコブルーが控える

JTリーフマネージャーの大林桃百香(右)と砂川さん

リーフマネージャーは、農家に栽培に関する新しい情報の提供や、改善点などの共有を行いながら、より良い栽培をサポートする立場。とはいえ、若いリーフマネージャーにとっては、砂川さんをはじめベテラン農家の知見に学ぶことも多くあるようです。いずれにせよ、農家とJTは二人三脚で、葉たばこ農業の持続可能性を探求しています。

“ゆいまーる精神”で紡ぐ葉たばこ農業の未来

お父さん、お母さんとともに。一家で助け合いながら栽培を続ける

沖縄での葉たばこの栽培は、年末に種を蒔き、丁寧に育てて、暑くなり始めた4月〜5月に収穫を行い、乾燥を経て夏以降に出荷します。それが終わっても、畑の状態を良好に保つ工夫は欠かせません。常に葉たばこと向き合う暮らしの大変さもあり、年々担い手は減少傾向に。かつて葉たばこが植えられていた畑が、より簡単に栽培できるサトウキビ畑に変わっていることも珍しくありません。その一方で、宮古島市には20代前半の葉たばこ農家もおり、砂川さんは彼らに希望を感じています。

「若いということ自体がチャンス。私も20年以上、さまざまなチャレンジをすることで、成果を生むことができました。彼らにもどんどん新しい試みをしてほしいし、そのサポートは惜しみません」

かつて先輩たちに救われた砂川さんは、今度は自分が後輩たちの背中を押し、支える立場でありたいと話します。その想いの根底にあるのは、沖縄に根付いている共助の精神“ゆいまーる”です。

「内地(沖縄県以外)の方たちは宮古島と聞くと海をイメージしますが、私にとっては、人。宮古島の人たちって本当に温かいんですよ。助け合って、支え合う。葉たばこ農家にもそれが当たり前にあるから、続いてきたし、これからも続いていくのだと思う」

ちなみに、砂川さんが先輩から教えられ、今も欠かさず行っている行動があります。それは、毎朝必ず畑の状態を見て回ること。およそ5ヘクタールにもおよぶ広大な面積ですが、早朝にひとつひとつの畑に行き、異変がないかをチェックしているそうです。

整然と植えられた砂川さんの葉たばこ畑

「毎日チェックしているから、微細な変化もすぐに分かって対処できる。こればかりは、たとえ前の日に仲間たちと深酒した日でも、続けています(笑)」

そんな知恵のひとつひとつが、親から子へ、先輩から後輩へ、連綿と受け継がれてきた宮古島。ともに助け合うゆいまーる精神こそが、この土地に根付く、葉たばこ農業のサステナビリティの秘密なのかもしれません。

今回のサステナブルなポイント「事業承継」

1.

今でも盛んな宮古島の歴史的産業「葉たばこ農業」を未来へ!

2.

農家を続ける上で大きかった、先輩たちの支え

3.

技術を高め合いながら、次世代の背中を押す

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