JT with Farmers #06
人生を愉しむ農家が語る、“農家流ワークライフバランス”とは
森鉄也さん/青森県八戸市

2023/1/12

JTが目指すサステナビリティの一つに、日本のたばこ産業全体の持続可能性を探り、それを未来につなげていくことがあります。それは、たばこの製造過程で地球環境に与えるインパクトを最小限にすることや、地域経済への貢献、農業課題の解決・改善など、さまざまなテーマがあります。JTがそれら一つひとつと真摯に向き合い、より良い環境づくりに挑み続けるために、欠かすことのできないパートナーが葉たばこ農家です。本特集「JT with Farmers」では、日本全国にいらっしゃる葉たばこ農家の、農業に対する想いや課題、新しい取り組みや未来の展望などを取材しました。彼らに寄り添い、ともにアクションを起こすことが、たばこ産業の持続可能性を探る第一歩であると考えています。

第6回は、青森県八戸市で葉たばこを育てながら、アーチェリーの選手としても活躍する森鉄也さん。ハードな仕事と思われている葉たばこ農業ですが、森さんは「農家だからこそ、二足のわらじを履けるんです」と話します。農家流ワークライフバランスのかたちが、ここにはありました。

「農家」と「選手」…二刀流が可能なワケ

「ズドン」

と、的から発せられる鈍い音。矢は、的の中心の黄色い部分に深く突き刺さっています。

「まあまあですね」

厳しい表情を緩めながら矢を抜くのは、森鉄也さん。精悍な顔つきで、一瞬一瞬に集中し矢を次々と放つその姿は、まごうことなきアーチェリー選手の練習風景です。ただ一点、ここが葉たばこを乾燥させるパイプハウスの側であることを除けば。

「練習に必要な距離もしっかり取れて、集中できる静かな環境がある。自分にとっては最適な野外練習場です」

そう、森さんは葉たばこ農家兼アーチェリー選手という、世にも珍しい二刀流。しかも、葉たばこ農家としては高品質な葉たばこを育てることで定評があり、かたやアーチェリー選手としても高校時代にはインターハイで6位、全日本社会人ターゲットアーチェリー選手権でも6位になるなど錚々たる記録を持つ、現役バリバリのプレイヤーです。両分野でもトップレベルであり続ける森さんに、一本に絞ろうとは思わないのか、と問うと「とんでもない!」と言い切ります。

「僕にとってアーチェリーは生きがいだし、農家は生活の糧。その両輪が回っていることが大事なんです」

的に残された無数の穴が、これまで積み重ねてきた練習の数を物語る

森さんの言葉からは、ワークライフバランスを上手に取り、充実した毎日を送っていることが伺えます。そしてそんなライフスタイルは、ダブルワークが浸透し、自分らしい働き方を実現する昨今の社会傾向とも一致しています。持続可能な働き方を、森さんは葉たばこ農家という仕事を通じて体現していました。

仕事と趣味の好循環で、毎日を豊かに

ここで、葉たばこ農家としての森さんの一年を追ってみましょう。

まず、春先に種をまき苗となるまで育てると、4〜5月にかけて畑に植え付けます。その後は適宜農薬の散布や心止め(葉に栄養・水分が行き渡るように花をカットする作業)などを念入りに行いながら生育させ、十分に熟したところで梅雨から夏にかけて収穫します。収穫した葉はパイプハウスなどで自然乾燥させ、秋の終わりにJTへ出荷し、出来栄えの鑑定を受け、その年の収入が決まります。冬は休めるかというとそういうわけでもなく、次年度に向けて土壌づくりなどの準備を行っているそうです。

こうしてみると、一年中作業が続いており、特に収穫の時期は毎日朝早くから畑に出て、湿気と灼熱の中の重労働をこなさないといけません。そんな忙しい毎日の中で、森さんはどのように練習時間を捻出しているのでしょうか。

「午前中と午後の仕事の合間の休憩時間などを活用して、練習場に足を運んでいます。できるだけ時間を有効に使いたいので、家の中にも練習できる場所をつくりました。アーチェリーに限らず、スポーツは少しの時間でも毎日続けることが大事。仮にサラリーマンだったら練習は休日だけになっていたでしょうから、農家で良かったと心から思います(笑)」

実は森さんはアーチェリー以外にも、少林寺拳法の指導者として活動したり、他のスポーツにも勤しむ一方で、映画鑑賞や金魚の飼育といったインドアなものまで、さまざまな趣味を嗜んでいます。さらに、農業が少し落ち着く冬場は、市内の通信系の会社にアルバイトに出ており、それも「気分転換になる」と前向きに愉しんでいます。

取材に訪れた8月はまさに収穫と乾燥の真っ盛り。農家にとって最も忙しいシーズンだが、森さんは隙間時間を活用して練習はなるべく欠かさない

森さんの趣味の一つである金魚の飼育。特に好んでいるのは津軽錦という品種で、あの「金魚ねぶた」のモデルとも言われている。

「やりたいことがたくさんあるんです。子どもたちが大きくなったら一緒にスポーツカーにも乗りたいし、ボクシングにも挑戦したい」

と、夢にあふれ人生を楽しんでいる森さん。「趣味を愉しめると、農業のやる気も上がる。逆に、農業を頑張れるから、趣味にも全力で打ち込める」と、仕事と趣味がクオリティ・オブ・ライフを高める好循環を生んでいるようです。

ユニフォームに刻まれた、農家の誇り

実は、森さんは葉たばこ農家を継ぐ際に、父に対して「アーチェリーをやらせてもらうこと」を条件にしたといいます。当初は渋々了承したという父も、練習を続け大会に出る森さんに、今では「息子のやる気のもとになっているから、農業に支障がなければいい」というスタンスになっているとか。

そして今、森さんはさらに胸を張って農業とアーチェリーに打ち込めるよう、ある取り組みを行っています。それが、JTのロゴが入ったアーチェリーのユニフォーム制作です。

「葉たばこ農家と言うと、マイナスイメージを抱かれることがあります。そこで、JTさんという大企業がパートナーであることを示すことで、JTさんと葉たばこ農業について周囲の理解が進み、胸を張れる立派な仕事だと周知できるかなと思ったんです」

自分や家族、そして周囲の農家仲間たちが、もっと仕事に誇りを持てるきっかけにしたい――そんな熱い想いからはじまったロゴ入りユニフォーム計画。自らJTに持ちかけ、現在は大会でも着用。すると多くの反響があり、「たばこ」について問いかけられるようになったそうです。

「選手や観衆などと、ロゴをきっかけに会話が生まれ、そこからJTさんと葉たばこ農業についての正しい理解を社会に広めていければ嬉しいですね」

JT東日本原料本部の青木優作と。JTとしても、森さんの選手活動について後押しをしたい考えだ

その先には、農家とアーチェリー選手を兼業する森さんだからこそ描く未来があります。

「農家をやるって決めた時に、自分の趣味とか夢を諦める人は少なくないと思うんです。逆に、夢を追うために農家を継がないというケースもあるかもしれない。でも、JTもバックアップしてくれて、それらが両立できるんだと思えれば、事業承継ももっと進むんじゃないかと期待しているんです」

試作したユニフォームは腕の部分にJTのロゴが、背中には「Aomori Tabaco cultivation union」=青森県たばこ耕作組合の文字が刻印されています。JTとともに、地元のたばこ産業を背負っていく。そこには、農家の豊かなライフスタイルを紡ぐ、森さんの強い想いが現れていました。

今回のサステナブルなポイント「ワークライフバランス」

1.

農家だからこそ時間の上手な使い方が可能

2.

趣味と仕事がクオリティ・オブ・ライフを高める

3.

夢を追える仕事として農業を捉え直す

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