特別展Exhibition

展示内容タイトル

 たばこの葉を微粉末状にして鼻から吸い込む「嗅ぎたばこ(Snuff-taking)」は、日本ではあまりなじみがありませんが、歴史的には「喫煙」に次いで人気のあるたばこの楽しみ方です。
 嗅ぎたばこは喫煙と同様、もともとは新大陸の先住民たちの間で行われていた風習で、コロンブスの新大陸到達(1492)以降、ヨーロッパ人が知ることとなりました。
 はじめは病気の予防や頭痛・歯痛止めに効くとされ、薬用に使われましたが、やがて嗜好品として人びとの間に定着し、17世紀初めころには、嗅ぎたばこをかぐことがヨーロッパ各国で流行しはじめました。最も流行したのは18〜19世紀で、フランスとオーストリアでは18世紀末に、たばこの売り上げの約80%を嗅ぎたばこが占めており、その盛行ぶりがうかがえます。
 さらに、この風習はヨーロッパの宣教師を通じて中国の明代末期に伝えられたともいわれ、清代になって大流行します。

鼻煙壺
清の宮廷窯で作られた磁器製鼻煙壺(清代中〜末期)


 ヨーロッパでも中国でも嗅ぎたばこは、まず宮廷社会を中心に広まりました。そのため、ファッション的な要素が強調され、嗅ぎたばこを入れる容器(嗅ぎたばこ入れ)にも貴金属や水晶、瑪瑙(めのう)、象牙、鼈甲(べっこう)などさまざまな素材が用いられ、そのときどきの流行の形が生み出されています。
 嗅ぎたばこ入れは、ヨーロッパでは箱型(スナッフボックス)が、中国では「鼻煙壺」と呼ばれる壺形(スナッフボトル)のものが作られています。王侯貴族など上流社会の人たちが用いたものの中には、宝石をちりばめたり、絵や彫刻を施したりした、実用品というより美術工芸品といえる贅を凝らしたものがあり、嗅ぎたばこを愛した多くの人びとの“愛着”や“こだわり”を感じさせます。
 今回の展示では、これら知られざる美術工芸品としての嗅ぎたばこ入れを、関連資料を含めて約500点展覧しながら、その華麗な歴史と文化を紹介いたします。

スナッフボックス
ヨーロッパの箱型の嗅ぎたばこ入れ

 


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