特別展Exhibition


50万キロ・地球を走る旅    一 片平 孝 一


 1967年、23才の春。写真を志しながら勤めるべきか、フリーで写真をつづけるべきか迷ったあげく一年半の外国旅行に出た。ちょうど東京オリンピックを契機に、望めば誰でもパスポートが持てるようになって間もないころだった。横浜港からフランスのマルセーユまで45日の船旅に1000ccの車を積んだ。外貨の持ち出し制限が500ドルの時代、旅費を節約するために車を宿と足がわりにするためだ。

 ヨーロッパから北アフリカ、中近東、インドまでのこの旅は若さを武器に自分にチャレンジできる絶好の機会だった。憧れのアルプスを越え、サハラ砂漠の砂と戦い、文明の発祥地・ナイルとユーフラテスで初めて手に触れた古代遺跡の数々、それらの全てが強烈な印象となって心を揺さぶった。そしてインダスとガンジスの大河を渡り、生と死の人間曼陀羅の国インドで牛車にぶつかり旅が終わった。これが「地球を走る旅」の始まりである。

片平氏  何度目かのアフリカの旅は嫁さんを連れた新婚貧困旅行。二人で皿を洗って稼いだ金でポンコツの車を買い、西アフリカを往復する旅である。車の屋根に鶏を飼って絞めながらサハラ砂漠を越えた。車は毎日故障した。ハンドルのアームが折れて、その部品を砂漠にひっくり返っていた車から頂戴したり、放電したバッテリーを乾電池で充電した。普段考えてもみないことを実行し、うまくできることがすごい驚きだった。そんな中で厳しいサハラは、時々素晴しい景観を見せてくれた。黄金色に輝く大砂丘、ロマンをかき立てるキャラバンの一群、不思議な塩の大地、見上げれば満天の星空。この感動する景色を見るためにここまで旅してきたのだと思った。

 32年前に始まった車の旅は、行きたいところにたどり着く旅であった。それは知らない土地を、時には道なき大地を走り抜けて、ハラハラ・ドキドキの末、感動する景色に出会う旅である。その出会いを求めて、さらに南・北アメリカ、オーストラリア・東・南アジアを走り続けた。そして今、2周目のヨーロッパと中近東に来て写心発見の「地球を走る旅」をつづけている。そろそろ50万キロになるかなァ。

 


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