「がん対策推進基本計画(変更案)」に対する意見

厚生労働大臣
小宮山 洋子 殿

日本たばこ産業株式会社(以下、JT)は、「がん対策推進基本計画(変更案)」(以下、「次期計画」といいます。)に対し以下の通り意見を申し述べさせていただきます。

「がんの予防」の項目全般について

がんは、喫煙のみならず、運動不足、飲酒、栄養の偏り、塩分摂取等の要因が複雑に絡み合って発症するものであり、がんの予防のためには、そうしたがん発症の複雑さを踏まえて、特定の要因に偏ることなく、人々の生活全般にわたる総合的な取り組みが必要となります。
しかしながら、次期計画の「がんの予防」においては、例えば、その「個別目標」において、喫煙者率の削減についてのみ具体的な数値目標が掲げられるなどしており、喫煙に著しく偏重した内容となっているものといわざるを得ません。
そもそも、喫煙に関連する疾患の代表例とされる「肺がん」による死亡率と喫煙者率との間には明らかな相関があるとはいえず、わが国では、喫煙者率は1966年をピークに大幅に減少しているにもかかわらず、肺がん死亡率は現在も上昇し続けている事実も踏まえますと、次期計画が喫煙に著しく偏った目標を設定することについては、効果的ながん予防の推進といった観点から疑問があります。

喫煙者率削減の数値目標の算出根拠について

次期計画で設定された数値目標は、いずれも平成22年度の国民健康栄養調査における禁煙を希望する者の割合等から計算されています。しかしながら、当該調査は、過去最大のたばこ増税が実施された直後の調査であることから、禁煙を希望する者の割合が一時的に高くなっている可能性があります。したがって、当該調査における禁煙を希望する者の割合を、喫煙者一般の恒常的な禁煙に関する意志をそのまま表すものと考えることはできず、目標数値の算出根拠として用いるのは妥当ではありません。

飲食店等における受動喫煙の機会減少の数値目標について

次期計画では、職場においては分煙を認めたうえで「受動喫煙のない職場の実現」を目標とされていますが、行政機関および医療機関においては、受動喫煙の機会を有する者の割合0%という数値目標のみが設定されています。これは、行政機関や医療機関においては、適切な分煙が目標達成の手段として認められない、といった誤解を招く恐れがあります。
また、民間施設である飲食店においても、受動喫煙の機会の数値目標が設定されています。
設定された数値は、「喫煙率の低下を前提に、受動喫煙の機会を有する者の割合を半減」させた場合の数字とのことですが、前提となる「喫煙率の低下」に関してはその目標数値に上記したような問題がある上、そもそも目標数値について「半減」とする理由についても明らかではありません。
また、数値目標の設定を理由に、今後、飲食店に対して厳格な分煙措置等を求める規制が導入されることとなれば、その影響は甚大なものとなることが予想されます。例えば、店内で分煙措置を実施するには相当な設備投資が必要となりますが、そうした負担に耐えられず設備投資を諦めてやむを得ず禁煙にしたケースでは、多くの飲食店で売上が減少しており、こうした影響は特に中小の事業者にとって死活問題となります。JTは、飲食店については、お客様のニーズ等を施設の管理者が考慮し、当該施設の利用実態に応じた適切な受動喫煙防止対策を講じることが妥当であると考えます。
JTは、飲食店等における受動喫煙の機会減少について数値目標を設定することに強く反対します。

喫煙者率削減等の数値目標の是非について

たばこは合法な嗜好品であり、喫煙するかしないかは、適切なリスク情報を承知した成人個々人が、自らの健康に与える影響を勘案して判断すべきものです。
こうした性格を有するたばこについて、喫煙者率削減に関する数値目標を新たに設定することは、本来個々人の選択の結果として決まる喫煙者率について、国の介入によって特定の数値に誘導しようとするものであり問題があると考えます。JTは、喫煙者率削減等について、そもそも数値目標を設定すること自体に強く反対します。

JTは、がん等、喫煙と関連があるとされる諸疾病の発生には、住環境(大気汚染等)、食生活、運動量、ストレス等、様々な要因が影響しており、今後更なる研究が必要であるものの、喫煙は特定の疾病のリスクファクターであると考えています。受動喫煙については、特にたばこを吸われない方にとっては迷惑なものとなることがあり、目、鼻、喉への刺激や不快感を生じさせることがあります。しかしながら、例えば、世界保健機関に報告された「受動喫煙と肺がんリスクに関する疫学調査」においても、統計的に有意な結果が一貫性をもって示されておらず、受動喫煙と疾病発生率の上昇との統計的関連性は立証されていません。

たばこについては健康の観点から、様々な議論があることは承知していますが、たばこは大人の嗜好品であると同時に、年間約2兆円の税収を賄う重要な財政物資です。次期計画に喫煙者率削減の数値目標が設定されれば、特に財政状況の厳しい地方自治体への影響は大きいものと思われます。さらに、約28万店のたばこ販売店、約1万戸の葉たばこ農家への影響は必至となります。たばこ販売店は中小零細規模のお店が多く、たばこ販売で生計を立てられているお店も少なくありません。加えて、葉たばこ生産は山間地域を中心に重要な農産品となっており、地域農業の振興に重要な役割を果たしていることから、これらに与える影響についても十分考慮する必要があります。

以上のとおり、「がん対策推進基本計画(変更案)」での喫煙者率削減の数値目標等の設定には大きな問題があり、多方面にわたって甚大な影響を与えるおそれがあることから、JTは、これら数値目標等の設定に強く反対します。


2012年3月9日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 木村 宏