下川生産森林組合理事 本間 次男さん

インタビュー

人々の暮らしを
支える森林

下川生産森林組合理事 本間 次男さん

森林と人とのかかわりは地域によってさまざまです。
そこで暮らす人々にとって、身近な森や林は守るべき大切な存在となっています。
山形県の庄内地方は日本海に臨む地域です。地域の畑作を飛砂から守るクロマツの林は、砂防林としてだけではなく、余暇で訪れる市民にも親しまれています。今回は、「JTの森 鶴岡」でクロマツ砂防林を共同所有している下川生産森林組合の本間さんを訪問。砂防林が以前どのような景観だったか、そして人とどんな繋がりがあったかをうかがうとともに、現在、皆で協力して取り組んでいる森林管理への想いと将来の夢を語っていただきました。

生活と密接にかかわってきた砂防林を守り続けたい

身近な場所だった庄内の砂防林

―かつての庄内砂防林はどのような森だったのですか?

クロマツの背は高くなかったね。8メートルぐらいかな。今の砂防林はクロマツの背が高いので、風景が違うんだよね。それに50年ぐらい前はクロマツの林は草が一面に茂っていた。私が子どものときに“ちゃんばら遊び”をして過ごした場所なんだね。子どもにとても身近な場所で、ほんとに庭みたいな存在だったね。

―子どものころの松林とのかかわりは他にもありましたか?

子どものころは親の手伝いをすることが多かったんだけど、松林では、芝とか松かさを集めて薪の材料にしたよ。親と一緒にキノコ採りもしたね。ハツタケとか、ムラサキナギナタケ、アミタケなど、いろいろなキノコが採れたよ。

―砂防林の周囲の農地はどんな状態だったんですか?

庄内地域は日本海からの風が強く、よく砂が舞い上がったね。今でも舞い上がるけれど以前ほどではないかな。昔は露地が主だからスイカやサツマイモ、そば畑が多かったね。今は潅水設備が整い、ビニールハウスも普及したのでメロンや花卉(※)栽培が主かな。

花卉(かき):花の咲く草。草花

生産森林組合について

―もともと地域の入会地だった砂丘が、新たな制度で生産森林組合の共有森林になったそうですが、山林の大きさと生産森林組合のメンバーの数はどのくらいなのでしょう?

下川生産森林組合のメンバー数は全部で161名いるね。山林は40町歩(ha=ヘクタール)あり、そのうち松林は20町歩あるね。海岸沿いの松林は国有林だけど、砂丘農地近くは畑を守るための防風林として東西南北一定間隔が旧西郷村の共有財産でした。けれども昭和30年に町村合併し、その際に失われるのを危惧した先輩たちが法人組織を作って守ったんだよ。

―組合では共同管理制度のような取り決めがあるのですか?

特別な制度は設けていないけど、理事会では、皆で話し合いながら、今までの活動を見直したり、今後の活動について決めているね。

砂防林への想い

―「JTの森」のような協働管理はいかがでしょうか?

生産森林組合だけだと管理が大変。すぐにヤブになってしまう。JTさんや行政、森林組合などが一緒になって管理してもらうのは、とてもありがたいと思います。

―生産森林組合で所有しているこの地の将来をどう考えていますか?

砂防林は共有財産でもあるし、愛着もあるので、この土地は皆でずっと持ち続けたい。たとえ土地を貸すことはあっても売らないと思うね。

―砂防林の理想的な姿はどのようなものですか?


30年くらい前の砂防林に近い景観

昔の松林の姿もいいけど、いろいろな樹木があるような森もいいと思う。松ばかりだと松枯れも多くなってしまうから。砂防林のクロマツは曲がりもあるしヤニも出るので、木材として利用するのはいろいろと難しいのだけれど、思い入れもあるから、管理して出た間伐材は有効に利用したい。ペレットにして燃料なんかに活用していけたら嬉しいね。

本間 次男(ほんま つぎお)

本間 次男さん プロフィール

本間 次男(ほんま つぎお)
下川生産森林組合理事
山形県鶴岡市在住