外食の“おいしい”をもっと豊かに。業務用調味料が支える味作りのヒミツ

業務用調味料の販売・開発を手がける富士食品工業。外食店への味の提案はもちろん、調味料を通じて店舗運営の課題解決にも取り組んでいます。既存商品に限らず、お店独自の調味料を共同開発することもあるのだとか。外食店の味作りのヒミツや家庭用調味料との違い、商品開発に込めたこだわりをひもときます。

読了目安時間約7分

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外食店の味は、どのように作られているのだろう?

 

毎日夕食を作っていると、どうしてもメニューや味付けがワンパターンになりがち。だからこそ、たくさんのメニューを気軽に楽しめる外食は、私にとって心強い存在です。気分転換したい時や忙しくて手が回らない日は、つい外食店に頼ってしまうことも少なくありません。そんな時にふと、「どうして外食店では、おいしくて多彩な味を提供できるのだろう?」という疑問が頭をよぎりました。

考えを巡らせているうちに思い出したのが、JTグループの調味料事業を担う「富士食品工業株式会社」。外食産業をはじめとする、プロの現場で使われる業務用調味料を手がけている企業です。業務用調味料を扱う富士食品工業なら、外食店の味のヒミツを知っているのでは? そもそも、家の調味料とはどのように違うのだろう? 気になることが次々と浮かんできました。

 
 
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外食産業を支える、調味料の力とは

 

ホームページを見ると、富士食品工業の創業当時は、オイスターソースや即席麺用のスープを手がけていたのだそう。横浜中華街から近い立地であることも関係しているのかしら? その後、和食や洋食にも分野を広げているようです。現在ではラーメンスープをはじめとする中華調味料を中心に、幅広い調味料の販売・開発を行っています。

また、既存商品だけではなく、自社の強みを生かして、お客様のご要望を元に商品を開発することも多いのだとか。富士食品工業の調味料の強みって? お店独自の調味料は、どのように開発されているのだろう? さらに疑問が湧いてきて、富士食品工業の百田えみり(ももた えみり)さんに話を聞くことにしました。

 
 
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こだわりの味作りで、厨房の悩みに寄り添いたい

 
ともこ: まずは、百田さんが担当されているお仕事を教えてください。
 
百田さん: 町の個人店から全国チェーン店まで、幅広い外食店に向けて営業を担当しています。扱っているのは、中華調味料を中心に、多岐にわたる業務用調味料。プロの料理人の皆さんに向けてご提案をしています。
 
 
ともこ: 富士食品工業の商品には、どのような特徴があるのですか?
 
百田さん: 手間をかけて作っている商品が多いことですね。例えば、プロの厨房によくある「香味油」。料理の風味付けに使う油で、ネギやニンニクをじっくり炒めて、香味野菜の風味を油に移すことで出来上がるものです。作るのにとても手間がかかる調味料なのですが、私たちはプロの工程を徹底的に研究して、自社工場で再現。本場の中華料理店の厨房のように、丁寧に作っています。お客様から、「おいしい!」「味に深みが出る」とご好評いただくことも多いんですよ。

また、私たちの調味料で提供しているのは“味”だけではありません。香味油でいうと、本来はネギやニンニクを用意して、切って、時間をかけて炒めて……と多くの作業工程とスペースを必要とします。これらの工程を私たちが代わりに再現し、商品として提供することで、調理時間を短縮できます。さらに、お店では香味油を作るための材料や器具を置く必要がなく、仕込み場のスペースを広く使えるようになります。限られた厨房スペースを有効活用できるため、動線がスムーズになり、作業効率の向上にもつながるんです。人手不足で悩むお店では、このような効率化が負担の軽減に直結します。味を改善するだけではなく、店舗運営上のお悩みもサポートできることこそ、私たちの強みだと思います。
 
 
ともこ: 調味料でそんなことも解決できるとは知りませんでした! 百田さんは調味料のみならず、料理全般についても詳しいのでしょうか?
 
百田さん: 仕事柄、一般の方よりは多少詳しいかもしれません。ただ、お客様であるプロの料理人の方に教わることも本当に多いんです。例えば、中華用の調味料を洋食に使うなど、こちらが想定していない使い方を教えていただくこともあり、その工夫にはいつも学ばせてもらっています。料理や食材の知識ではもちろんプロにはかないませんが、富士食品工業の商品については誰よりもプロであろう、という心構えで日々取り組んでいます。
 
ともこ: プロを相手にして仕事をするからこその心構えですね。そんな百田さんが、仕事で大切にしていることを教えてください。
 
百田さん: お客様に寄り添ったご提案をすることです。味以外にもお店の悩みを幅広く伺い、私たちの商品でどのように解決できるだろう? と思いを巡らせながらお客様と向き合います。既存の商品だけでの解決が難しい場合は、お客様と共同で商品を開発することもあるんですよ。
 
 
ともこ: 共同開発の商品は、どのように作られていくのでしょうか?
 
百田さん: まずお悩みを伺い、そのお店で提供している料理も踏まえて、「どんな商品が料理に合いそうか」「どのようにお悩みを解決できるか」のイメージを膨らませます。その後、お客様とすり合わせをして、イメージと近い商品があれば教えていただきます。その段階から、開発担当者と味の方向性を決めていきます。社内のキッチンで料理をして、試作した調味料を使い、味の変化を検証。時には同僚にも食べてもらい意見を聞きつつ、お客様にお持ちする試作品を固めていきます。

社内での味の調整が済んだら、ようやく試作品をお持ちします。一緒に試食をしてからフィードバックをいただき、それを元に調整。この「試食→フィードバック→調整」のサイクルを何度も繰り返し、月に2回ほどお客様の元へ伺って味の調整を重ねます。お客様が提供する料理の味に直結するので、一回の試作で完成することはまずなく、納得いただけるまで何度でもこの作業を繰り返します。
 
 
ともこ: 細やかな工程ですね。味の調整とは、どのように行うのでしょうか?
 
百田さん: 味には「先味(さきあじ)・中味(なかあじ)・後味(あとあじ)」があります。先味は口に入れた時の香りやインパクト、中味は口の中に広がる風味、後味は余韻を担うものです。お客様が提供する料理やニーズに合わせて、それぞれを目立たせたり、補強したりして、理想の味に近づけていきます。先味を立たせると後味が弱くなったり、後味を強くするとしつこい味になったり……と、まさに一進一退。微調整を重ねるため、開発までに2年近くかかることもあります。
 
ともこ: なるほど、味に段階があることに驚きました! 家庭での料理ではあまり意識しないような調整があるからこそ、外食店の“こだわりの味”が生まれているのですね。開発にそれほど時間がかかるのも納得です。大変な作業ですね……。
 
百田さん: 大変ではありますが、苦労の中にもやりがいを感じます。お客様に向き合い、お店や料理の課題に沿った特別な商品作りをすることで、お悩みをダイレクトに解決できますから。「導入して味が良くなったよ」「厨房の負担が減って助かった」と言っていただけると、お店の困り事を一緒に解きほぐせたようで、大きな励みになります。

共同開発した商品は、お店でのテストを経て導入が決まります。その際には、必ず現場に足を運ぶようにしています。おいしそうに食べている一般の方の姿を見ると、「自分たちの仕事が誰かの“おいしい”を支えているんだ」と実感しますね。
 
 
ともこ: お客様に寄り添う、誠実な姿勢があるからこそ、そんなやりがいが生まれているのだと思います。……ところで、それだけ味に関する知識があれば、お家でも応用できそうです。私でもできる味作りのコツ、ぜひ教えてください!
 
百田さん: もちろんです! どの社員もちょっとした料理のコツは知っているかもしれません(笑)。 “コクが足りなければ砂糖を加える” は鉄板のコツですね。また、香りを重ねていくと、うま味が増幅するんです。これを応用して、例えば中華料理には鶏油(チーユ)という鶏の風味の油を最後に回し入れると、一気にお店の味に。洋風の味付けでは、ローリエやハーブを加えると良いですよ。
 
 
ともこ: 私もやってみます! 最後に、今後の展望を教えてください。
 
百田さん: これからも調味料を通して、取引先のお客様と、さらにその先にいるエンドユーザーの方々が笑顔でいられる関係を作っていきたいと思っています。お店の悩みを解消することで、そこで食事をする方の時間も豊かになる――そんな循環の一つとなることが理想です。

実は、仕事でさまざまなお店を訪ねるうちに、「ここ、子どもの頃に家族で来たことがあるな」と、ふと記憶がよみがえる瞬間が何度もあって。そこで初めて、食事はただお腹を満たすだけではなく、人の記憶や思い出も作るものなのだと、改めて気がついたんです。だからこそ、私たちの調味料が、お店の課題解決に役立つだけでなく、誰かの楽しい食卓や、心に残るひとときを支える存在でありたいと考えています。そんな想いで、お客様一人一人に向き合っていきたいですね。
 
 
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“おいしく豊かな時間”を支える存在

 

取材前は、調味料と聞くと単に「味を整えるためのもの」というイメージしか持っていませんでした。ですが、お話を伺う中で、業務用調味料は、外食産業を味以外の点でも支える“縁の下の力持ち”のような存在なのだと気がつきました。お店の課題に寄り添い、料理人の技を再現し、時にはその店ならではの味を一緒に作り上げていく。そして、その一皿が、誰かの楽しい思い出につながっているのですね。

私自身の外食をした時間を思い返すと、食事が心を軽くしてくれたり、大切な人との記憶になっていたりしたことを思い出します。富士食品工業の調味料は、そんな“豊かな時間”をつむぐために、そっと力を貸してくれていたのかもしれません。

 
profile

担当社員の
ひとことプロフィール

百田えみりさん。富士食品工業 営業企画部。最近、心の豊かさを感じた瞬間は、仕事仲間や友人から聞いたおすすめの店を巡った時。横浜駅近くの町中華で食べた豚角煮丼が絶品で、外食の楽しさを再発見したそう。

※プロフィール掲載内容は2026年2月の取材当時のものです

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