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Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

互いの個性を尊重しながら、時間をかけて自分たちの音を見つけたい──アトランティス クァルテット(弦楽四重奏団)

公演概要

Atlantis Quartet

公演日 2014年11月7日(金)
プログラム
L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 Op.18-5
L.ヤナーチェク 弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」
J.ブラームス 弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.51-1
出演 千葉清加(1stヴァイオリン) 直江智沙子(2ndヴァイオリン)
大島 亮(ヴィオラ) 辻本 玲(チェロ)

プロフィール

アトランティス クァルテット

東京藝術大学、桐朋学園大学を卒業した同世代の気心知れた4人で弦楽四重奏を追求するため2012年に結成。メンバーは普段それぞれオーケストラ、ソロ、室内楽と音楽に前向きな4人。今回は東京での初リサイタル。

メンバーのプロフィールはこちら

千葉清加(ヴァイオリン) 東京藝術大学付属音楽学校を経て、東京藝術大学卒業。東京藝術大学内にて安宅賞受賞。第72回日本音楽コンクール第3位。第3回仙台国際音楽コンクール第5位。2013年CHANEL Pygmalion Days アーティスト。2014年4月、日本フィルハーモニー交響楽団のアシスタント・コンサートマスターに就任。これまでに、ミッシャ・マイスキー、ユーリー・バシュメット、ヴァレリー・オイストラフなど、国内外の多くの著名な演奏家と共演を重ねており、ラ・フォル・ジュルネ(仏ナント)、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、別府アルゲリッチ音楽祭などの音楽祭にも出演。また、東京交響楽団、香港フィルハーモニーなど、国内外のオーケストラとソリストとして共演。

直江智沙子(ヴァイオリン) 4歳よりヴァイオリンを始める。桐朋女子高等学校を経て桐朋学園大学を卒業。在学中より小澤征爾音楽塾、サイトウキネン若い人のための室内楽勉強会、宮崎国際音楽祭、水戸室内管弦楽団、JTアートホール室内楽シリーズ、東京のオペラの森、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、プロジェクトQ第3、4章などに参加。これまでに徳永二男氏に師事。ロームミュージックファンデーションの奨学金を得てベルリンに留学。シュテファン・ピカール氏に師事。2011年度紀尾井シンフォニエッタシーズンメンバー。2014年4月より神奈川フィルハーモニー管弦楽団第2ヴァイオリン首席奏者。

大島 亮(ヴィオラ) 桐朋学園大学卒、同大学研究科修了。岡田伸夫氏に師事。第11回コンセール・マロニエ21第1位、第7回東京音楽コンクール第1位、第42回マルクノイキルヘン国際コンクールディプロマ賞受賞。ヴィオラスペース、東京・春・音楽祭、水戸室内管弦楽団、宮崎国際音楽祭や木曽音楽祭、サイトウキネンオーケストラなどに出演。室内楽では今井信子、原田禎夫、チョン・ミョンファの各氏等と、ソリストとして東京都交響楽団、九州交響楽団と共演。2012年には東京文化会館にて初のリサイタルを開催し、好評を博した。読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団等に首席奏者として客演するほか、室内楽奏者としても積極的に活動している。

辻本 玲(チェロ) 第72回日本音楽コンクール第2位、併せて「聴衆賞」受賞。2007年度青山音楽賞新人賞受賞。ロームミュージックファンデーションより奨学金を得て、シベリウスアカデミー(フィンランド)、ベルン芸術大学(スイス)に留学し卒業。第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞(日本人最高位)、併せて「日本人作品最優秀演奏賞」を受賞。これまでに、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、関西フィルハ−モニ−管弦楽団、日本センチュリー交響楽団等と共演。メタ・ワッツ、オーランド・コール、川元適益、上村昇、山崎伸子、アルト・ノラス、アントニオ・メネセスの各氏に師事。使用楽器は、NPO法人イエロー・エンジェルより1724年製作のアントニオ・ストラディヴァリウスを貸与されている。

クァルテットの多岐にわたるキャラクターを披露
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写真左より、辻本玲さん(チェロ)、千葉清加さん(ヴァイオリン)、直江智沙子さん(ヴァイオリン)、大島亮さん(ヴィオラ)。

千葉清加さん(ヴァイオリン)、直江智沙子さん(ヴァイオリン)、大島亮さん(ヴィオラ)、辻本玲さん(チェロ)という4人の気鋭若手奏者により結成された、アトランティス クァルテット。

グループ名はリーダーである辻本さんの発案で、太古に存在したと伝えられる幻のアトランティス大陸に由来する。そこには、普段オーケストラやソロ、室内楽と幅広く活躍するメンバーが折を見て集結し、ここでしかできないことに挑戦していきたいという想いが込められているという。

結成以来、クローズドの会場や西日本で共演を重ねてきた彼らが、今回東京で初となる本格的な演奏会を行った。

プログラムは、クァルテットが持つ多面的なキャラクターを示す内容。冒頭に演奏されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲第5番で、みずみずしい音による変幻自在の一体感を見せたかと思うと、続くヤナーチェクの弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」では全員の表情が一変、楽器のあらゆる音を注意深く鳴らしながら、人間の生々しい感情を綴っていく。後半のブラームスの弦楽四重奏曲第1番では、互いの反応をしっかりと受け取りながら、ブラームスならではの分厚い音を響かせていった。そして客席からの盛大な拍手に応え、アンコールにはモーツァルトの弦楽四重奏曲第14番より第4楽章を披露。

個性ある音がぶつかり合い、調和することで、立体的かつ色彩豊かな音楽が生まれる。自由でありながら息の合った演奏に、個々の実力の高さと相性の良さが伝わる演奏会となった。
ゆっくり時間をかけて自分たちの音を育む
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学生時代から、辻本さんと千葉さんは東京藝術大学で、直江さんと大島さんは桐朋学園大学でそれぞれ共演を重ねていた中、「サイトウキネン若い人のための室内楽勉強会」での交流をきっかけに4人でクァルテットを組むことになった。

辻本:「今回の東京公演はみんなで一から作り上げたものでしたから、達成感がありました。たくさんの方に聴いていただくことができてうれしかったです。また、この公演はアフィニス文化財団が行っている『アフィニス・アンサンブル・セレクション』と呼ばれる室内楽公演の助成を受けたものでしたが、成功のうちに終えることができました」

大島:「またここから時間をかけて、クァルテットとして一つの音を作っていきたいです。1日や2日でできることではありませんが、お互いの楽器がさらに寄り添って、もっと楽に演奏できるようになる日が来ると思います」

実力派が揃うだけにそれぞれ忙しく、スケジュールを合わせることも簡単ではないが、自分たちのペースで活動を続けていきたいという。そしていつか、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏したいという構想もある。

直江:「学生時代からクァルテットの活動はしてきましたが、ベートーヴェンは敬遠しているところがありました。でも今は、オーケストラで交響曲を演奏する経験だけではベートーヴェンを細部まで知ることはできない、弦楽四重奏曲を知ることで、ようやく理解できるようになるのではないかと思っています」

千葉:「ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏するというのは、大きな目標です。時間はかかるかもしれませんが、いつかやり遂げたいですね」
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さまざまな演奏活動を行う中、気心の知れた同世代の仲間で演奏するこのクァルテットは、新たな発見や、原点を見直すきっかけを与えてくれる活動でもあるようだ。

直江:「学生時代と違い、プロとして室内楽に参加するようになると、当然、限られた時間で作品を仕上げることが多くなります。そんな中で、もう少し腰を据えて室内楽に取り組める場が欲しいと思っていました。このクァルテットでは、時間をかけて音楽を育んでいきたいですね」

千葉:「みんなで曲の解釈をめぐり意見を交わすうちに行き詰まるようなこともあります。しかし、幸いトゲのある言い方をするメンバーがいないので、穏やかに提案し合い、それぞれの解釈を検討し合いながら、曲への理解を深めることで音楽をつくっています」

大島:「内声を弾くヴィオラは外声に支配される部分が圧倒的に多いので、引き出しを多く持って、共演者のさまざまなクセやタイプに対応します。メロディのパートがどのように弾きたいのかを理解し、それを美しく聴かせられるように、バランスや流れを作ります。この3人はリハーサル中は比較的おとなしいので、どうしたいのかはっきり聞くようにしています(笑)」

辻本:「音楽的なキャラクター、意見や感性がそれぞれ違うので、お互いの個性を尊重しながら、補い合っていけたらいいですね」
小さな音はどれだけ絞っても勝負できるホール
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JTアートホール アフィニスは、室内楽に適したホールとして弦楽器奏者の間ではよく知られているという。4人もこれまで、多くの演奏会でこの舞台に立ってきた。

辻本:「最近チェロ・クァルテットでも演奏したばかりです。室内楽の細やかな表現を客席のすみずみまで届けることができる、素晴らしい響きのホールだと思います」

直江:「私は、弦楽四重奏を初めて演奏したのがこのホールでした。師事していた徳永二男先生は以前、このホールで主催されていた『JTアートホール室内楽シリーズ』の音楽監督だったこともあり、ホールの響きを熟知されていて、これまで多くのアドバイスをくださいました。常々おっしゃっていたのは、『小さな音はどれだけ絞っても勝負できるホールだから、自信を持って強弱をつけてよい』ということです」

千葉:「イメージしたp(ピアノ)がそのまま客席に届くホールですよね。会場に来てからダイナミクスの幅を調整する必要もほとんどありません。今回演奏していて、楽器とホールが共鳴するような感覚がありました。普段から、演奏者とお客さま、そしてホールが一つの船のようになる状態を意識しているのですが、その状態を体得する手掛かりとなる経験ができました」

大島:「舞台上でも、リハーサル時と同じような距離感でお互いの音を聴くことができるので、ストレスがありません。弦楽四重奏としては、響きの面でもキャパシティの面でも客席数256席というのがちょうどよく、一番弾きたいと思うホールです」
理想とする響きを求めて
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普段、異なる場所で活動をしている彼らには、それぞれ理想とする音や響きがある。目指しているのはどんな音なのだろうか。

直江:「ひと言でいうなら、“温かい音”ですね。ただ楽器が美しく鳴っているというのではなく、人間らしさを感じる音が好きです。たとえ緊張で震えていたとしても、それはその音に何かを込めたいという想いがあるからこそ。そんな震えもあわせて、心に入ってくる音の方が好きです」

辻本:「作品のキャラクターが持つ響き、和声の持つ響き、そして楽器そのものが持つ響き。響きといってもいろいろな種類がありますが、僕は、その全てがどれも欠けることなく響き合うことを求めています」

千葉:「音楽は、伝えることの一つの手段だと私は思っています。例えば、曲のフレーズや音楽が作曲家の魂と共鳴し、その音の響きや想いがお客さまの心に届けられたときに感動を与えられるのではないかと思います。とても抽象的ですが、そのような聴く人の琴線に触れる音が理想です。一生模索していきたいです」

大島:「僕は、一音聴いて“これは大島の音だ”と思ってもらえるような、自分の音を持つことを目指しています。音とは、人格やその日の精神状態などが全部出てしまうもの。人としてちゃんとしていなくてはと思いますね」

それぞれの理想を胸に突き進む4人が集い、アイデアをぶつけ合うことで、誰も聴いたことのない、新鮮な音楽が生み出される。彼らが“アトランティス”として奏でる音楽は、これから長い時間をかけてどんな姿を形づくっていくのだろうか。
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