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Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

広い視野を持ち、古典作品はもちろん現代人の感覚に近い音楽も届けてゆきたい──尾形大介さん(ピアノ)

公演概要

尾形大介ピアノリサイタル クラシック・イン・ブルー

公演日 2014年12月14日(日)
プログラム
ガーシュイン 3つのプレリュード
カプースチン 8つの演奏会用練習曲 Op.40より
1. 前奏曲 2. 夢 3. トッカティーナ
5. 冗談 6. パストラル 8. フィナーレ
アンドラーシュ・ハマリ グロッセ・マシーネ
コープランド 感傷的なメロディー
ジョセフ・ラム ラグタイム・ナイチンゲール
ウィリアム・ボルコム ラストラグ
ガーシュイン ラプソディ・イン・ブルー
出演 尾形大介(ピアノ)

プロフィール

尾形大介(おがた だいすけ)

4歳よりピアノを始める。武蔵野音楽大学、同大学院ピアノ科修了後、リスト音楽大学ピアノ科を経て、同大学院修士課程を満場一致の最優秀で卒業。ヴュルツブルク音楽大学マイスター課程を修了、ドイツ国家演奏家資格取得。ハンガリー政府奨学生、文化庁芸術家海外研修員、伊藤国際教育交流財団奨学生。クレシェンド国際ピアノコンクール優勝、スタインウェイ賞コンクールミュンヘン第2位、クロイツァー賞、第60回山口県芸術文化振興奨励賞、NPO法人芸術文化・若い芽を育てる会助成賞受賞など受賞多数。ドホナーニ交響楽団(パトリック・リンボルグ指揮)、マーヴ交響楽団(イムレ・コラール指揮)、ハンガリーチェンバーブラスなど、さまざまなオーケストラと共演を重ねる。室内楽ではNHK交響楽団コンサートマスターの篠崎史紀氏等とも共演。2012年、東京オペラシティで開いたリサイタルが好評を博し、「月刊ショパン」など各誌で絶賛された。現在、各地で演奏活動を展開している。

20世紀に生まれた、親しみやすく多彩な音楽
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武蔵野音楽大学大学院修了後、ハンガリーとドイツでの10年間にわたる留学生活を経て、現在は日本を拠点に活動する尾形大介さん。その精力的な演奏活動の中で、自身にとって大切な挑戦の場となっているのが、自主企画によるリサイタルだ。今、自分が本当に弾きたいと思う作品だけを集め、趣向を凝らしたプログラムで演奏会を行っている。

今回のリサイタルでは、「クラシック・イン・ブルー」と題し、20世紀に生まれた多岐にわたる作品を取り上げた。

冒頭は、アメリカの作曲家、ガーシュインの「3つのプレリュード」。丁寧に鳴らされる音が、心地よく揺らぐリズムを刻みながらホールに響く。そして、尾形さんがここ数年高い関心を寄せているというロシアの作曲家、カプースチンの作品から、ジャズの語法を用い、緻密な書法で仕上げられた「8つの演奏会用練習曲 Op.40」を演奏。アメリカとロシアという遠く離れた場所で生まれた、クラシックとジャズが融合する20世紀らしい音楽を、続けて聴き比べる興味深いひとときとなった。

後半には、公演タイトルの由来ともなっているガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」をはじめ、ジャズやブルース、ラグなどの要素を含んださまざまな作品を披露。トークを交えながら繰り広げられる伸び伸びとした演奏に、一つひとつの楽曲への愛着が滲み出ている。

中でも強い印象を残したのが、尾形さんの留学時代の師で、ハンガリー出身のピアニスト兼作曲家、アンドラーシュ・ハマリの「グロッセ・マシーネ」。機械仕掛けの力強い動きを思わせる音楽を、しなやかで強靭なタッチが生き生きと再現する。現代音楽の前衛的な要素を持つ作品でありながら、刺激的な響きとストレートな表現が聴衆を惹きつけた。
独自のプログラムに挑戦して、今の想いを伝える
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普段、古典的な作品を多く取り上げている尾形さんが今回このプログラムに挑むことになったのには、ハマリの存在が大きく影響しているという。

「ハンガリーでの約6年間の留学生活ののち、ドイツでさらに勉強することを決めて、ヴュルツブルク音楽大学でハマリ先生に師事するようになりました。先生は優れたピアニストであり、作曲家でもあるので、ピアノという枠を超え、楽器を使って音楽そのものを表現するということを教えてくれました。あるときご自身の作品を見せてくださり、『興味があれば弾いてみたら』と言われたことがきっかけで、現代の作品に関心を持つようになりました。2012年の日本デビューリサイタルでも、先生が作曲したソナタを日本初演しています。その作品のサブタイトルは、なんと“MRI”。これはあの医療機器のMRIのことで、まさに現代に発明されたものをインスピレーションの源としているわけです。新しいものを創造するとはこういうことなのかと感じ、こうした現代作品を日本でも紹介したいと思うようになりました」

そんなハマリの作品を中心に、現代人が親しみやすいジャズなどの要素を持つ楽曲をプログラムに取り入れることにしたという。

「クラシックのコンサートでは19世紀以前の作品が取り上げられることが多いですが、もっと現代人と感覚的に近いものがある音楽を届けてみたいと思いました。自主公演というのは、こうしたプログラムを自由に組み立て、自分の想いをそのまま伝えることができる、本当に貴重な機会です。今後も継続的に取り組んでいきたいですね」
姿かたちではなく、魂から入っていく
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その自主公演の会場として、今回はJTアートホール アフィニスを選んだ。

「会場選びで一番重視するのは、やはり音響のよさ。ホールという楽器を鳴らせているという感覚が持てる場所が理想ですね。JTアートホール アフィニスは、室内楽の演奏にとてもよいと前から聞いていました。ピアノ演奏というのは一人で行う室内楽のようなものですから、とても弾きやすかったです。ほどよい残響があり、客席と舞台での聴こえ方にも大きなずれがありません」

響きに不安を感じずにすむことで、求める音を追求することに集中できたという。

「私が目指しているのは、作曲家が求めている音を鳴らすこと。モーツァルト、ショパン、ハマリ……求められる音はそれぞれに違います。ハマリの場合は実際に弾いてくれるので、それを聴いて耳に残すわけですが、当然他の作曲家ではそうはいきません(笑)。古い時代の作品については、伝統を辿り、優れた演奏を聴いて耳を育てていくことが大切なのではないでしょうか」
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10年間にわたる留学生活では、その意味で多くのことを身に付けることができた。

「日本で勉強しているうち、やはり現地に行かないと得られないものがあると思うようになりました。クラシック音楽は伝統芸能ですから、体得するにはその土地の雰囲気、言語など、すべてを丸ごと吸収するしかありません。文化は切り貼りできないものです。最初に留学したハンガリーでは、リスト音楽院でイエネ・ヤンドー先生に師事しました。あるとき、私の前の生徒さんがレッスンに楽譜を忘れてきて、仕方ないからと楽譜なしでレッスンが始まりました。ヤンドー先生は、偶然生徒が持ってこなかったその作品について、楽譜に記されている指示の内容から位置まで本当に細かく覚えているようで、『先生の頭の中は一体どうなっているのだろう?』と思いましたね。作品が血となり肉となっている。音楽とはこうして身に付けるものなのだと感じる出来事でした」

現地では、音楽教育のアプローチの違いについても気が付くことがあった。

「学んでいく中で、演奏とは、技術よりも魂からアプローチしてゆくものなのだと改めて思いました。例えば仏像づくりで言うなら、姿かたちを彫ることではなく、そこにどんな魂を入れるかが重要ですよね。それと同じことなのだろうと」

今後も、ジャンルの垣根を感じることなく、広い視野を持って演奏活動を続けていきたいという尾形さん。自分が心から惹かれる作品に魂を込め、聴く人に届ける。そんなアイデアと情熱が溢れる演奏活動に、これからも期待ができそうだ。
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