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Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

世界を広げ、自己を深めてくれる。歌と共にある人生は、とても豊かなものです──宮部小牧さん(ソプラノ)

公演概要

宮部小牧ソプラノリサイタル ~ばらのリボン~

公演日 2015年3月24日(火)
プログラム
F.シューベルト ばらのリボン
  春の神
  ガニュメデス
F.メンデルスゾーン 春の歌
  最初のすみれ
  もう一つの五月の歌(魔女の歌)
E.グリーグ 6つの歌曲 Op.48
    1.挨拶  2.いつかは、わが思いよ  3.世のならい
    4.秘密を語らぬナイチンゲール  5.薔薇の時季に  6.夢
山田耕筰 野薔薇
 
  薔薇の花に心をこめて
R.シュトラウス ばらのリボン
H.プフィッツナー だから春の空はそんなに青いの?
G.マーラー 私はほのかな香りを吸い込んだ
J.マルクス 花盛りの五月
H.ヴォルフ ガニュメデス
  四季すべて春
  お似合い同士
  もう春だ
出演 宮部小牧(ソプラノ) 竹尾真紀子(ピアノ) 武田竹美(朗読)

プロフィール

宮部小牧(みやべ こまき)

東京藝術大学卒業。同大学院修士課程修了。安宅賞受賞。文部省派遣交換留学生として渡墺、明治安田生命文化財団助成にてウィーン国立音楽大学修了。友愛ドイツ歌曲コンクール優勝、セルトゲンボス国際声楽コンクール、日本音楽コンクール等入賞。ラインスベルク国際音楽祭、札幌PMF音楽祭に出演。「フィガロの結婚」「魔笛」「愛の妙薬」「リゴレット」「ホフマン物語」「ラ・ボエーム」 「ナクソス島のアリアドネ」「電話」などのオペラに主要な役で出演。 「インテルメッツォ」「美しい水車小屋の娘」で東京室内歌劇場公演に出演。バッハ「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」、ヘンデル「メサイア」、モーツァルト「ハ短調ミサ」「レクイエム」、ハイドン「四季」、ベートーヴェン「荘厳ミサ」「第九」等オラトリオ出演も数多い。ドイツ歌曲を中心としたリサイタルを継続して行っている。二期会、日本声楽アカデミー会員。聖徳大学及びフェリス女学院大学講師。

春の訪れを実感するひととき
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写真左より、武田竹美さん(朗読)、竹尾真紀子さん(ピアノ)、宮部小牧さん(ソプラノ)。

ソプラノの宮部小牧さんは、現在オペラや演奏会のステージで活躍する傍ら、大学で教鞭を執り、さらに3歳のお子さんの母として多忙な毎日を送る。そんな中でも継続して行っているのが、自主企画によるリサイタルシリーズだ。

「今回で9回目になります。今、自分が取り組みたいと感じる歌曲作品を中心にプログラムを組み、1つの世界を創り上げるのは、とても楽しいですね。いつも応援してくれている皆さんへのお礼の気持ちも込めて、充分に楽しんでいただける内容にしたいと考えています」

今年は、春をテーマとしたドイツ・リート作品を集めた。演奏会のタイトルは、「ばらのリボン」。大好きな作品だというR.シュトラウスの歌曲からとったものだ。
冒頭に歌われたのは、同じ詩にシューベルトが音楽をつけた「ばらのリボン」。そして「春の神」、「ガニュメデス」と、春の訪れを慈しむような音楽を紡いでゆく。

グリーグの「6つの歌曲」からは、武田竹美さんの詩の朗読を交えて演奏会が進められていった。宮部さんの手による日本語訳で歌詞が読み上げられ、聴衆はよりいっそう歌の持つ感情の起伏を体感できる。
後半は日本語の歌から、山田耕筰の「野薔薇」「唄」「薔薇の花に心をこめて」でスタート。そして再びドイツ・リートの世界に戻り、R.シュトラウスの「ばらのリボン」をはじめ、プフィッツナー、マーラー、マルクス、ヴォルフの作品から、春の幸福感があふれるような歌曲を、明るく華やぎのある声で歌い上げる。

アンコールの最後には、山田耕筰の「からたちの花」が歌われた。心にしみるような優しく伸びやかな歌声の余韻とともに、春の訪れを実感する演奏会となった。
詩の世界を歌にのせて
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演奏会では、リクエストの多い日本語の歌も取り入れるようにしているという。

「実際、言葉が分かる日本語の歌を聴いていただくことで、その他のドイツ・リートを聴いたときにも、詩の世界がどのように歌われているのかイメージがしやすくなるのではないかと思います。日本語の歌は、西洋クラシックの発声からすると歌い方が難しいところもあります。それでも、聴いて言葉が分かり、さらに良い歌声を保つということを両立できるよう心がけています」

ドイツ語を日本語に訳した詩の朗読を取り入れることも、ドイツ・リートを存分に楽しんでほしいという想いがあって始めたのだという。

「せっかくこだわって選んだ作品ばかりなので、詩の意味を理解し、充分に感じていただけたらと考えました。朗読を担当してくださった武田さんは、舞台女優や脚本家としても活躍されている方です」

今回、JTアートホール アフィニスを会場に選んだのは、リートを歌って言葉がしっかりと届くちょうど良いサイズと、豊かな響き、そして、来場者にとってのアクセスの良さが決め手だった。

「天井が高いので、お客さまが入った後でもよく響きますし、縦長というホールの形状も声楽にとっては好ましいです。もともとリートは室内楽のためのものですから、大きさもちょうど良いです。客席がフラットなので、まっすぐに語りかけるような感覚で歌いました」
学ぶ意欲に溢れていたウィーン留学時代
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宮部さんがオペラ作品と同時にドイツ・リートを本格的に勉強するようになったのには、東京藝術大学時代の恩師でドイツ・リートの大家である、原田茂生氏の影響が大きい。

「あるとき、イタリア・オペラの曲を見ていただくときと、ドイツ・リートを見ていただくときとで、原田先生のレッスンの熱量が全く違うことに気が付いて、これはドイツ・リートをたくさん見ていただかないと損だなと(笑)。先生の指導を受けるうち、譜面に書かれた詩と音をいかに歌として立ち上げ、作り込んでいくかに魅力を感じるようになりました。ドイツ・リートは1曲ずつが小さなオペラのようだとよく言われます。短い曲の中に1つの完結した世界があって、歌うには、とてもエネルギーを使います」

宮部さんはその後、リートの本場でもあるウィーンに留学し、引き続き、オペラ、そしてリートとオラトリオを勉強することになる。

「ウィーンは、音楽はもちろん、さまざまな分野の素晴らしい芸術がある街です。美術館に通い、毎晩のようにオペラを立ち見で鑑賞し、日中は語学学校やレッスンに出ていると、毎日があっという間に過ぎていきました。同時に、外国人としての自分や、外から見た日本を意識することもありました。例えば喜劇であるオペレッタを観に行って、歌い手がぽんぽんとアドリブを入れ、聴衆が笑っている様子を見ると、オペレッタは彼ら現地の声楽家のものなのだと実感せざるを得ませんでした。それでもやはり、日々勉強したいという意欲に溢れていましたね。現地で師事したエディット・マティス先生からは、生き生きとした表現の方法、美しく響く声の出し方、多岐にわたるレパートリーを学びました。先生の気高いお声は忘れられません」
恩師・原田茂生氏の言葉
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帰国後、オペラ、リートなど幅広い分野で演奏活動を続けてきた宮部さん。最近では大学での教育活動にも忙しい。

「今の学生さんはとても堅実なところがあって、卒業後の計画を立てながら歌の勉強をしている方も多いですね。それも良いことだと思いますが、若いころにする経験に無駄なものは1つもありませんから、思い切って何にでも挑戦し、見聞を広げてほしいとも思います。世界を広げ、自己を深めてくれる歌とともにある人生は、とても豊かなものだと思います」

宮部さん自身、これからも機会があれば何にでも挑戦してみたいという。ソロだけではなくアンサンブルにも取り組み、また子どものためのコンサートや、書家であるお母さまとのコラボレーションによる演奏会など、思い描いている計画はたくさんある。

「声楽家は、一生自分の体をメンテナンスし続ける必要があります。そして誰にでも、最も張りのある声が出せる脂ののった時期というのはあると思いますが、たとえ歳を重ねた後でも、そのときに歌うべき曲というのがあります。特にドイツ・リートは一生もののレパートリーとなるものが多いので、大切にしていきたいですね」

宮部さんには、恩師・原田氏からの言葉で、今でも忘れられないものがあるという。

「“音楽とは、芸術の神様との対話だ”という言葉です。歌うという行為は、芸術的な高みを目指すという信念を持って地道に声と表現を磨き、心と体を通して音楽を伝えるということ。それを忘れてはいけないと、今になってますます実感しています」

天国の作曲家たちが笑顔で聴いていてくれたらと願いつつ、これからも歌い続けたい。そう語る宮部さんの今後の活動は、さらなる充実を見せることだろう。
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