ホール利用者のご紹介

Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

時間をかけて音楽を創り上げることができる自主公演は、とても贅沢で大切な経験です──髙橋洋太さん(コントラバス奏者)

公演概要

Die Forelle シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 “鱒”

公演日 2015年6月24日(水)
プログラム
モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
ロッシーニ チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調
  弦楽のためのソナタ 第2番 イ長調
シューベルト ピアノ五重奏曲 イ長調 「鱒」
出演 田代裕貴(ヴァイオリン) 大島 亮(ヴィオラ) マルモ・ササキ(チェロ)
髙橋洋太(コントラバス) 高田有莉子(ピアノ)

プロフィール

髙橋洋太(たかはし ようた)

1982年青森市生まれ。青森山田高校卒業。桐朋学園大学、同研究科修了と同時に2006年東京都交響楽団に入団。コントラバスを池松宏、山本修、中田延亮、D・マクティア、E・ヴァイセンシュタイナー、J・リノヴィツキの各氏に師事。オーケストラ、室内楽を西田直文、加藤知子に師事。2005年青森市民文化顕彰受賞。2007年東京・青森にてデビューリサイタルを開催し絶賛を博したのち、毎年各地でリサイタルを開催。2009年からは作曲、ピアニスト、指揮者の青島広志氏が主宰するブルーアイランド楽団にて楽団長を務め、全国各地で演奏している。これまでにサイトウ・キネン・オーケストラ、霧島国際音楽祭、東京・春・音楽祭、アフィニス夏の音楽祭、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト等に出演。現在、東京都交響楽団コントラバス奏者として活動する他、バンドネオン奏者三浦一馬氏率いるキンテートで演奏するなど幅広くジャンルを超えて活動している。桐朋学園大学特別招聘講師。

“もう終わってしまう”と寂しく感じるほど、充実した演奏会
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写真左より、髙橋洋太さん(コントラバス)、高田有莉子さん(ピアノ)、マルモ・ササキさん(チェロ)、田代裕貴さん(ヴァイオリン)、大島亮さん(ヴィオラ)。

桐朋学園大学研究科修了後の2006年から、東京都交響楽団のコントラバス奏者として活躍する髙橋洋太さん。ソロや室内楽をはじめ、さまざまな活動に力を入れているが、そうした経験一つひとつが、演奏家として、また所属オーケストラの団員としての視野を広げているという。

中でも時間をかけて音楽を練り上げることができる自主公演は、多くの発見をもたらす大切な機会だ。今回は、妻でピアニストの高田有莉子さん、学生時代からの友人である大島亮さん(ヴィオラ)、そして、現在海外を拠点に活動する田代裕貴さん(ヴァイオリン)、マルモ・ササキさん(チェロ)というメンバーで、シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」をメインとした演奏会を行った。

「じっくり時間をかけて合わせをしてから本番に臨んだので、充実した演奏会となりました。海外在住のメンバーもいたので、リハーサルの間隔が2カ月ほど開くときもあったのですが、その間、それぞれが課題を持ち帰って考えることで、次のリハーサルでは新しいアイデアが生まれました。これだけ入れ込んで練習していると、やりたいことがたくさん出てくるので、本番で逆にすごく緊張しましたね(笑)。そして後半が始まるときには“ああ、もう終わってしまうんだ”という寂しささえ感じました。終演後の達成感は、とても大きかったです」
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前半は、モーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲」で幕を開けた。続けて髙橋さんが好きな作曲家だというロッシーニから、「チェロとコントラバスのための二重奏曲」。大学時代仲の良かったチェリストと毎日のように練習した思い出の作品だ。共演したマルモ・ササキさんとは、彼女が都響にエキストラ出演したことをきっかけに知り合った。「チェロの最後列に座っていながらオーケストラ全員の注目を集めてしまうような演奏をする」彼女と、いつか共演したいと思っていたのだという。温かい音を持つ2つの楽器が、絶妙な掛け合いを繰り広げた。

そして、後半はシューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」。5人が互いの表現に気を配り、音楽を合わせることで、立体感のある音楽が紡ぎだされる。美しい旋律が、さまざまな声で歌われるかのよう。明るいエネルギーに満ちた音楽で、聴衆を魅了した。
床がよく鳴るホールが理想
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一般的なピアノ五重奏と異なり、コントラバスを含む編成で書かれている「鱒」は、コントラバス奏者にとって重要なレパートリーだ。髙橋さんも、コントラバスを始めた当初からいつか弾いてみたいと憧れていたという。

「大学時代、思ったより早くその機会が巡ってきました。あの感動は、今も舞台で『鱒』を演奏していると蘇ります。とても幸せでしたが、まだ若かった僕にとって、音楽的に演奏することの難しさを思い知らされた瞬間でもありました。今では年に何回かこの作品を演奏する機会がありますが、そのたびに多くの発見があります。今回は全員のやりたいことを試しながら、少しずつアイデアを合わせていきました。普段、リハーサルの時間が限られている仕事では、それぞれがやりたいことを本当の意味で実現しながら音楽を創るのは、正直いって難しい。ですから、今回は本当に贅沢でしたね。面白い音楽ができたと思います」
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会場としてJTアートホール アフィニスを選んだ理由の一つは、室内楽にとって最適な響きがするホールだということ。

「室内楽というのは、もとは貴族などが邸宅の広間で、聴衆と演奏家の距離が近く息づかいまで聴こえるような環境の中で楽しんでいたものです。JTアートホール アフィニスは広さもちょうど良く、また、響きすぎず、程良い音響の中で、演奏家と聴衆が一体となれます」

アンサンブルを底辺で支えるコントラバスにとって演奏しやすいのは「床が鳴るホール」だと髙橋さんは言う。

「コントラバスは、エンドピンをさしたところからステージの床がよく鳴ってくれないと、音が豊かに響きません。ホールも楽器の一部です。リハーサル時には、立つ場所を注意深く選びます。土台の音が豊かでないと、アンサンブルはまとまりません」

響き以外の要素としては、来場者にとってのアクセスの良さ、そして、学生時代に抱いてきた会場のイメージも大きかったそうだ。

「僕が大学生だったころに行われていた『JTアートホール室内楽シリーズ』には、錚々たる顔ぶれの先生方が登場していました。『いつか自分もああいう場所で演奏してみたい』という憧れを感じていたホールです」
小学校の吹奏楽部でコントラバスと出会う
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髙橋さんは、青森市生まれ。小学3年生から勉強したのはヴァイオリンだった。そんな中、小学4年生で入った吹奏楽部で「同じ弦楽器だから」とコントラバスを割り当てられる。

「手は届かないし、『なんでこんな大きな楽器を弾かなきゃいけないんだろう』と思っていました(笑)」

その後、高校に入学してほどなく、進路希望調査の際にヴァイオリンで桐朋学園大学を目指したいというと、師から「今のあなたでは難しいから、部活でやってきたコントラバスにしてはどうか」と提案されたという。

「改めてコントラバスという楽器を見つめ直しました。そしてオーケストラも合奏も、コントラバスも好きだったのでやってみようと。そこからは、紹介していただいた池松宏先生のレッスンを受けるため月1回、東京に通うようになりました。当時はまだ新幹線が盛岡までしかありませんでしたから、寝台列車も使って通いました。大学入試のときは、寝台の上で、寝返りも打てない状態でコントラバスと添い寝して上京したことを思い出します。大きな楽器ですから移動は本当に大変です。大学に入って先生に最初に言われたのは『レッスンはいいから、まず車の免許をとりなさい』。移動手段を持たないコントラバス奏者は、みんなが気を遣って仕事を頼まなくなってしまうからと(笑)」
故郷・青森に何かを還元したい
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恩師である池松宏さん、山本修さんとは、現在東京都交響楽団で共に演奏する仲間となった。

「いつも目の前に二人の背中があるので、学生時代のレッスンがそのまま続いているような感覚があります。“同僚”という立場となった今も、言葉を選びながらいろいろなアドバイスをくださいます。学生時代以上に、一つひとつの言葉がよく理解できるし、とても重く感じますね」

コントラバスをやっていてよかったと思うのは、「オーケストラがうまくベースにのって、理想的な響きのバランスで流れているとき」。他の奏者がしっかりとベースの音を聴いているときこそ、アンサンブルはうまくまとまる。そうなるような音を自分自身が出すことを、常に目指しているという。

髙橋さんは現在、故郷である青森でも精力的に演奏活動を行っている。

「両親が音楽好きだったので、子どものころは東京に旅行すると夜は演奏会に連れていってくれました。でも、青森でオーケストラの演奏会を聴いた記憶はほとんどありません。今でもプロのオーケストラの演奏会は少なくて、数年に一度、東京のオーケストラが来るくらいでしょうか。そんな環境の中で、僕自身も演奏会を開いたり、市民オーケストラの『第九』公演に参加したりして、少しでも地元に何かを還元したいと思っています。最近やっと青森出身の演奏家たちと知り合うようになって、何か一緒にやろうと話しているんです」

来年は、自身が東京都交響楽団に入って10周年を迎える。節目の年、来場者にとって興味深く、同時に自らにとって挑戦となるようなリサイタルを計画中だ。音楽家としてさらなる高みを目指す、次の10年が始まる。
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