ホール利用者のご紹介

Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

楽器から最大限のものを引き出そうと考える。それにより、バロック・古典派作品への向き合い方が変わります。──崎川晶子さん(チェンバロ、フォルテピアノ奏者)

公演概要

崎川晶子CD「ジャン=フィリップ・ラモーの肖像」リリース記念 BACH&RAMEAU〜ドイツ、フランスバロック 至宝の響宴〜

公演日 2015年7月20日(月・祝)
プログラム
J.S.バッハ ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021
  ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第2番 ニ長調 BWV1028
  フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034
ラモー クラヴサンのためのコンセール 第4番
1. パントマイム 2.おしゃべり 3.ラモー
  クラヴサン曲集より
鳥の鳴き交わし、ファンファリネット、トリオレ、王太子妃
  クラヴサンのためのコンセール 第5番
1.フォルクレ 2.キュピ 3.マレ
出演 崎川晶子(チェンバロ) 荒木優子(ヴァイオリン)
菅 きよみ(バロック・フルート) エマニュエル・ジラール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

プロフィール

崎川晶子(さきかわ あきこ)

桐朋女子高等学校ピアノ科を経て桐朋学園大学ピアノ科卒業。ピアノを故・井口基成、兼松雅子、ジャン・クロード・ヴァンデンエイデン、指揮伴奏を故・斎藤秀雄に師事。ベルギーにてレオンハルトの生演奏に触れ、チェンバロに開眼し、シャルル・ケーニッヒ、渡邊順生に師事。パリの古楽コンセルヴァトワールでチェンバロをノエル・スピース、フォルテピアノをパトリック・コーエンに師事。海外アーティストとも多数共演。室内楽、コンチェルト、ソロ等多方面で活躍している。CD「クラヴサンの魅力」、「モーツァルトの光と影」、上畑正和作品集「夢見る翼」、「アンナ・マク ダレーナ・バッハの為の音楽帳」等をリリース。「モーツァルト・フォルテピアノ デュオ」は2006年度レコードアカデミー賞器楽部門受賞。最新CDはフランスにてオリジナルチェンバロで録音した「J.Ph.ラモーの肖像」。

“ラモーの魅力が存分に味わえるコンサート
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写真左より、菅きよみさん(バロック・フルート)、崎川晶子さん(チェンバロ)、荒木優子さん(ヴァイオリン)、エマニュエル・ジラールさん(ヴィオラ・ダ・ガンバ)。

チェンバロ、フォルテピアノ奏者として、アンサンブルによる演奏会やサロンコンサート、古典や新作の録音など、多彩な活動を行う崎川晶子さん。中でも2009年からは、地雷廃絶のためのチャリティもあわせた自主企画による演奏会を継続している。

今回、JTアートホール アフィニスで開催したのは、同チャリティに加え、昨年発売したCD「ジャン=フィリップ・ラモーの肖像」リリースを記念した演奏会。共演に、荒木優子さん(ヴァイオリン)、菅きよみさん(バロック・フルート)、エマニュエル・ジラールさん(ヴィオラ・ダ・ガンバ)を迎え、前半にJ.S.バッハ(1685-1750)、後半にJ.Ph.ラモー(1683-1764)と、同時代に生きた2人の天才の作品を取り上げた。
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当日、東京はうだるような暑さの真夏日。そんな中、冒頭、崎川さんがチェンバロで一音目の和音を鳴らすと、爽やかな風が吹くように、涼しげな響きがホールにあふれた。「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第2番ニ長調BWV 1028」では、温かいヴィオラ・ダ・ガンバの音と清涼感あるチェンバロの音が、心地よいハーモニーを生み出す。合間に古楽器についての解説を挟みながら、演奏会は進んでいく。

そして後半、ラモーの音楽の世界へ。「クラヴサンのためのコンセール」第4番と第5番では、それぞれの奏者が紡ぎ出す繊細な抑揚が絡み合い、落ち着きのある華やかさで客席を魅了。両作品の間に演奏されたクラヴサン曲集からの作品では、柔らかな輝きを放つチェンバロの音が会場の隅々まで染み渡り、ラモーならではの粋な響きを存分に味わうことができた。
細やかな表現が充分に伝わるホール
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古楽器は大きな音が出しにくく、微細な表現に気を遣って演奏しているため、特に中規模以上の会場は選ぶのが難しいのだという。

「細かいフレージングやアーティキュレーションがはっきり聴こえるようでないといけません。しかし、同時に充分な響きも必要で、これがうまく両立するホールというのはなかなかないのです。JTアートホール アフィニスは今回初めて利用しましたが、リハーサルのとき、細かな音までしっかりと聴き取れるので、共演者が皆驚いていました。弾きやすいということは、演奏自体にも良い影響を与えます。お客さまが入ったあとでも大きく音が変わることなく、気持ちよく演奏できました」

チェンバロは、鍵盤の奥にあるジャックに取り付けられたツメが弦を弾いて音を出す、撥弦楽器。このツメの調整も音色に大きな影響を与えるが、崎川さんはこの日、ツメを最も引っかかりの弱い状態に調整して演奏会に臨んだ。

「ツメを多く出せば簡単により大きな音が出せますが、やはり細やかにタッチを変化させるためにはツメを出しすぎない方がいいのです。その分どうしても音が小さくなりますから心配していたのですが、良く響くホールだったので安心しました」
グスタフ・レオンハルトの演奏に衝撃を受けて
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崎川さんは大学までピアノを勉強していた。桐朋学園大学時代は副科でチェンバロをとっていたが、そのときはあまり関心を持てなかったのだという。それが一転、古楽器の魅力にとりつかれるようになったのは、結婚後、ご主人の転勤のためにベルギーで暮らすようになったことがきっかけだった。

「ベルギー行きが決まったとき、友人に『古楽が盛んな国だからチェンバロを勉強したら』と勧められても、『好きじゃない』と答えたくらいだったんですよ(笑)。それが、現地でチェンバロの巨匠、グスタフ・レオンハルトの演奏を聴いたら、心から感激してしまって。表情が豊かでダイナミック。こんな表現ができるのならやってみたいと、すぐに先生を探しました」

4年間のベルギー滞在の後、再びご主人の転勤でパリに移ることになり、今度はパリの古楽コンセルヴァトワールで研鑽を積む。

「本当についていたと思います。転勤先がアジアやアフリカだったら、古楽器との出会いはなかったわけですから」
究極のこだわりのもと作られたチェンバロ
今回の演奏会で弾いた淡いグリーンの美しいチェンバロも、パリ滞在中の出会いから購入に至ったものだ。

「レオンハルトのチェンバロも手掛けていたアンソニー・サイデイ氏に作っていただきました。モデルとなったのは、1636年にA.ルッカースが製作し、H.エムシュが1763年に拡大改造したチェンバロです。気難しい職人だからなかなか会ってもらえないと聞いていたのですが、チェンバロ奏者の渡邊順生さんがちょうどパリに立ち寄られたタイミングで、一緒に会うことができました。工房にあった楽器が素晴らしく、すぐにお願いしたいと思ったのですが、やはり高価なものですから躊躇していたところ、渡邊さんが、『楽器は何台持っていても良いものでなければ意味がないよ』とおっしゃって。ぜひこの楽器を手に入れようと決心しました。注文してから5年、すでに日本に帰国した後、ようやくこの楽器が届きました。接着剤には昔と同じニカワが使われていますし、色にいたっては『どの色がいいか』と聞かれて見にいったら、微妙に異なる30種類ほどのグリーンが用意されていて驚きました。本当に細部にまでこだわって作ってくださいました」

そんなこだわりのもと作られた楽器に対して、崎川さんがさらに上をゆくこだわりを見せたのが、先述の「ツメ」の素材だ。

「音は変わらないしメンテナンスが楽だからと、プラスチック素材のツメがつけられていたのですが、私はこれをどうしても昔と同じ鳥の羽軸にしたくて、日本で全部取り換えてしまいました。消耗もしやすく、割れることもあるのですが、やはり弾き心地が全く違うのです」

そこまでこだわり抜いて表現する繊細な音。最適な響きの中で聴いてほしいと願うようになるのも、当然だろう。
当時の作曲家が感じた喜びを知ることができる
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バッハやモーツァルトが生きた時代の楽器である、チェンバロやフォルテピアノ。探究すればするほど、バロックや古典派の作品について新しい世界が見えてくると崎川さんは言う。

「例えばモーツァルトの時代のフォルテピアノは、今のピアノよりずっと少ない5オクターヴしか鍵盤がありませんでした。モーツァルトは、その端から端までを使って曲を書いています。フォルテピアノで弾くことで、当時、新しい楽器に出会って大喜びで曲を書いた彼の気持ちを知ることができるのです。“何でもできる”現代のピアノで弾く場合は、モーツァルトらしい音を思い描いてそれに合わせた音を出すことになりますが、フォルテピアノで弾く場合は、純粋に楽器から最大限のものを引き出そうと考えて弾くことになるので、曲への向き合い方が変わるのです」
地雷廃絶チャリティのための演奏会
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崎川さんの関心は、音楽以外にも向かっている。例えば地雷廃絶のチャリティに関わるようになったのは、特定非営利活動法人地雷廃絶日本キャンペーンが主催した、地雷の被害にあった方々の写真展を見たことがきっかけだった。

「この団体は被害者のサポートだけでなく、政府に働きかけて対人地雷やクラスター爆弾廃絶のための活動もしています。私に何かできることがないかと考えたとき、チャリティコンサートを開くことで少しでも協力できればと思いました。また、自宅で定期的に開いているサロンコンサートは東日本大震災のためのチャリティとしています。週末に複数回開くことで、できるだけ寄付ができるように工夫しています。ただ、コンサート自体も面白いものにしたいと思うのが、私の欲張りなところ(笑)。毎回テーマを考えるのは楽しいです。ワインや美味しいオードブルをお出ししたり、お話を交えたりして、くつろいでいただける演奏会を目指しています。やってみたいことはたくさんあります。例えば、俳句や着物など日本の伝統文化と融合させたコンサートはぜひ開いていきたいです」

古楽器に愛情を注ぎながら、さまざまなアプローチで音楽を届ける。

「太古の昔から、音楽は人間にとって身近であり、根源的に必要なものだったと思います。クラシック音楽というと敬遠する方もいると思いますが、私自身、この音楽によって魂を揺さぶられたり、安らぎを与えられたり、さらには生きる意味まで教えてもらったので、そんな音楽の素晴らしさを伝えていけたらと思っています」
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