ホール利用者のご紹介

Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

真の音楽家として、より多くの人にクラシック音楽を届けていきたい──岡本知也さん(ピアノ) & 森岡有裕子さん(フルート)

公演概要

岡本知也 & 森岡有裕子 デュオコンサート

公演日 2015年11月6日(金)
プログラム
フンメル ソナタ 二長調 Op.50
北爪道夫 ペアワーク
プーランク ソナタ
イヴ・アンリ 秋の小組曲「きのこと栗」
サン=サーンス ロマンス Op.37
フォーレ ソナタ イ長調 Op.13
出演 岡本知也(ピアノ) 森岡有裕子(フルート)

プロフィール

岡本知也(おかもと ともや)

国立音楽大学附属高等学校を経て同大学を卒業、同大学院修士課程を修了。パリ地方音楽院にてディプロムを取得し卒業。第14回ブレストピアノ国際コンクール2009(フランス)では審査員満場一致の一等メダルを獲得する。第34回霧島国際音楽祭賞を受賞。第21回友愛ドイツ歌曲(リート)コンクールにおいて優秀共演者賞、第3回秋吉台音楽コンクール室内楽部門(二重奏)第3位入賞。現在、ソロはもとよりアンサンブルピアニストとしても活動。

森岡有裕子(もりおか あゆこ)

国立音楽大学附属中学校を経て同高等学校卒業。パリ地方国立音楽院を卒業。パリ国立高等音楽院フルート科と室内楽科を審査員全員一致の最高賞を得て首席で卒業。第13回びわ湖国際フルートコンクール一般部門第1位など数々の賞を受賞。2008-2011年ローム・ミュージックファンデーション奨学生。フランス、ヴィルクローズアカデミーよりクリスチャン・ラルデ賞を授与。現在、ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。一般財団法人地域創造、公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト。

“歌心あふれるアンサンブル
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それぞれにフランス留学を経て、現在は日本を拠点に活動する、ピアニストの岡本知也さんと、フルーティストの森岡有裕子さん。共演を重ねる度にお互いの音楽に魅力を感じるようになったという二人が、フランスものを中心としたプログラムでデュオコンサートを行った。

冒頭はフンメルの「ソナタ」。軽快な掛け合いとともに1曲目が終わると、会場の明かりが落とされる。真っ暗なステージに登場した二人は、その後灯されたスポットライトの中、現代日本を代表する作曲家、北爪道夫の「ペアワーク」を演奏。フルートとピアノが追いかけあい、調和するアンサンブルから発するエネルギーが、光の源に向かって上昇していくようだ。続くプーランクの「ソナタ」では、輝くピアノの音に支えられながら、フルートが楽章ごとに多様な表情を見せた。

後半は、ピアニスト・作曲家のイヴ・アンリの作品から、秋の小組曲「きのこと栗」に始まり、サン=サーンス「ロマンス」、そして、フォーレのヴァイオリン「ソナタ」をフルート版とした作品を演奏。歌心と色彩感にあふれる、のびやかなアンサンブルを聴かせた。
フランスものと現代音楽で魅了する一夜
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今回のプログラムがフランスもの中心となったのは、はじめから意図していたわけではないのだという。

岡本:「やりたいと思う曲を選んでいったら、自然とフランスものが中心になりました。僕がまず提案したのはフォーレのソナタだったのですが、最初はすごく嫌がられて(笑)」

森岡:「原曲がヴァイオリンの作品は、ヴァイオリンで聴く方がいいという考えがあって、学生時代からレッスンに持ってくるように言われても、頑なに拒否してきたんです(笑)。でも今回弾いてみたら、フルートで自分の音楽として演奏できそうだと感じて。実際に本番で演奏してみて、本当によかったと感じています」

加えてプログラムの中で目立ったのは、現代の作曲家による作品。北爪道夫作品ではステージの照明にも工夫を加え、強い印象を残した。

岡本:「フランスの現代音楽の演奏会だと、日本ではあまり見かけないような、照明や立ち位置にこだわったものがよくあります。そういう演奏会を多く見てきたことの影響は、あるかもしれません」
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森岡:「彼らは、舞台と同じような感覚で演出を考えているのだと思います。現代音楽を取り上げたのは、こうした作品でしか出せないフルートの良さというものがあるから。私がフランスで師事していた先生は、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(ブーレーズが創設した現代音楽を中心とする室内楽オーケストラ)のフルーティストで、頭の中が現代音楽でいっぱいの方でした。技術的なことはもちろん、現代音楽の世界の作り方をたくさん教えて下さいました」

また、「きのこと栗」の作曲者イヴ・アンリは、岡本さんのフランス留学時代の師でもある。

岡本:「子どものフルーティストのために作曲されたこの作品は、やさしい曲でありながら、ラヴェルやドビュッシーのスタイルが感じられます。子どもでもスタイル感を理解して音楽に向き合ってほしいという、フランスの音楽教育ならではの想いが込められていると思います。僕自身、先生のレッスンでは、作品を正しいスタイルで演奏することについて多くのことを学びました」
フルートに全力でぶつかるピアノ
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二人は知り合って15年経つというが、最初の共演は3年前。演奏家仲間が企画した「プーランク祭」でのことだった。

岡本:「管楽器の共演者を自分で選んでいいといわれて、真っ先に彼女に連絡しました。以前演奏を聴いて、すばらしいフルーティストだと感じていたので」

そして、実はこの初共演を経て森岡さんが岡本さんに抱いたのは、「もっといろいろやりたい人なのだろうに、もったいない!」という感想だったという。

森岡:「私は、共演のピアニストには、いろいろ仕掛けてくるくらい前に出てきてほしいと考えているほうです。当時の彼はだいぶ控えめにしているように感じて。でも演奏を聴いているととてもうまいピアニストだから、本当はもっといろいろなことがやりたいのだろうなと……」

岡本:「僕自身、“伴奏”だから抑えて弾くという考えが嫌いだったのですが、当時、お仕事として伴奏の機会が増えていくうちに、自然と抑える習慣がついてしまっていたようで……。彼女に指摘されて、はじめてそれに気が付いたんです」

そこから、改めて共演者に全力でぶつかるピアノを弾くようになったことで、ソリストと共演する演奏会の仕事が増えていったと岡本さんは言う。あのとき森岡さんに声をかけたことがひとつの転機になったと、しみじみと振り返っていた。
繊細な表現が伝わっているとわかると、燃える!
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今回会場にJTアートホール アフィニスを選んだのは、「繊細な響きがそのまま伝わるホール」だからだという。

岡本:「学生時代、のちに師事する練木繁夫先生の演奏会を聴きに来ていたので、憧れのステージでした。昨年リサイタルで使ってみて、音にベールをかけて綺麗にしてくれるのではなく、潔い響きがするとても良いホールだと感じました。繊細な表現にこだわる森岡さんのフルートの良さを伝えるには、こういう会場でなくてはと」

森岡:「音色の変化、音の発音やフレーズの終わり方などの表現が後ろの席まで届いているとわかると、燃えるんですよね(笑)。このホールでは自分に返ってくる音を聴いていると、細かな表現がやっただけ伝わっていることがわかります。あと、私は客席の反応を見ながら演奏したいタイプなので、このホールの横幅と奥行きは見渡すのにちょうどよく、お客さんと対話している感覚が持てました」

岡本:「最初に決めた立ち位置でまったくストレスなくお互いの音を聴くこともできて、本番でも安心して演奏に集中することができましたね」
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今回は、フルートとのアンサンブルを意識して、ベヒシュタインのピアノが持ち込まれた。

岡本:「昨年リサイタルをしたときは、ホールのスタインウェイを使用しました。ボリュームがあってゴージャスなホールのスタインウェイに対して、今回使用したベヒシュタインは透明度の高い音がする楽器です。演奏するのは難しいですが、フルートに合わせるには、こういう楽器で目いっぱい演奏するほうが良い結果になるのではないかと思って」

森岡:「おしゃれな音がするピアノでしたね。ホールの中で混ざり合った音がキラキラしていて、気持ちが良かったです」
演奏技術はあくまでも手段
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互いにパリ留学を経験しているふたり。現地で学んだことは、それぞれの音楽家としての考えに大きな影響を与えている。

森岡:「私は演奏家の両親がフランスで暮らしているときにフランスで生まれました。両親の交友関係もあってフランスは遠い存在ではありませんでしたが、実際に留学してみると、全く別の発見がありました。師事していた先生をはじめ、私のまわりの演奏家は、技術はあくまでも手段で、ゴールは作品の真意をいかに届け、人間性を表すかだと考えているようでした。そこが、“楽器奏者”であるか、“音楽家”であるのかの違いなのだと思います」

岡本:「彼女が留学中に同じようなことを感じていたというのを今知りましたが……(笑)。僕も、イヴ・アンリ先生のレッスンを受けるうちに、ピアニスティックな問題を離れて音楽を考えるようになっていきました。そして、日本に帰国した直後のレッスンで、練木先生からその大切さに改めて気づかされる言葉をかけられたのです。“技術的な意味では何の問題もないし、うまく弾けている。だけど、そこから何を表現するか。それこそが、君がピアノ弾きになるか、音楽家になるかの分かれ道だ”と」

二人にはそれぞれのやり方で、クラシック音楽についてのより正しい理解を広げていきたいという願いがある。

岡本:「ピアノをやっていておもしろいのは、どんな楽器とでも一緒にアンサンブルができること。そんな中、アンサンブルにおけるピアノの地位への認識が向上するような活動を続けていきたいです。ソリストに合わせるだけの“伴奏”だと思われるのは、本当に残念です。その状況を変えていくべく、これからもアンサンブルに熱を注いでいきたいです」

森岡:「よく、クラシックは高尚な音楽だといわれますが、私自身はそれでいいと思っています。変に敷居を下げることなく、より多くの方に本物のクラシック音楽を届ける活動を続けたいです。今回も、クラシックの演奏会を聴いたことがないという方がたくさん来て下さり、知っている曲がないのにこんなにも集中して最後まで聴けた、という声をいただきました」

真剣に向き合えば、必ず伝わる。その想いで演奏を続けていきたいと、今後の活動への意気込みを語ってくれた。
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