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Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

「ベートーヴェンの交響曲に取り組んだからこそ感じる音楽の魅力。ピアノならではの表現がとても愛おしい」後藤 泉さん (ピアノ)

公演概要

後藤泉ピアノリサイタル ~歓喜に寄す・・・「第九」~

公演日 2015年12月13日(日)
プログラム
シューベルト 4つの即興曲 Op.90
ベートーヴェン(リスト編) 交響曲 第9番 ニ短調 Op.125
出演 後藤 泉(ピアノ)

プロフィール

後藤 泉(ごとう いづみ)

桐朋女子高校音楽科を経て桐朋学園大学音楽学部ピアノ科卒業。同大学アンサンブル・ディプロマコース修了。田沢恵巳子、ゴールドベルク山根美代子、三浦みどり、P.ポンティエの各氏に師事。2001年よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団チェロ首席奏者 故・フリッツ・ドレシャル、02年より同楽団元コンサートマスター、ウェルナー・ヒンクと定期的に共演を重ねる。以後、ウィーン・フィルの首席奏者と数多く共演。また、ゲヴァントハウス管弦楽団元コンサートマスター、カール・ズスケ、ベルリンシュターツカペレのマティアス・グランダー(クラリネット首席)など海外のトップ奏者と数多く共演。小林研一郎指揮日本フィル、井上道義指揮新日本フィル、ローマン・コフマン指揮ベートーヴェンオーケストラ・ボン、ローマン・コフマン指揮キエフ室内管弦楽団などと協演。ベートーヴェン/リスト編曲(ピアノ版)交響曲第3番「英雄」&第1番、第9番、第6番「田園」&第4番のCDをリリースしているほか、交響曲全曲のチクルスも度々成功させている。またお話付きのコンサートや、NHK文化センター青山教室、横浜教室でのレクチャーコンサート、飛鳥Ⅱ船上でのコンサート、他分野とのコラボレーションなども好評を博し、各地で定期的な公演も数多く行われている。

もしも《第九》がない世界に生を受けたとしたら
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リスト編曲によるベートーヴェンの交響曲作品に取り組んで、10年。これまで、全9曲のチクルス演奏会をすでに4周行っている、ピアニストの後藤泉さん。
もしもベートーヴェンの《第九》がない世界に生を受けたとしたら……。そんな考えとともに、2015年12月、「多くの人の人生を照らしてきた」この偉大なる作品に向き合う演奏会を開催した。
「《第九》のような作品の前に、何を演奏したらよいのかとても迷った」という彼女が、前半の演目に選んだのは、ベートーヴェン(1770-1827)と同時代のウィーンに生きたシューベルト(1797-1828)による「4つの即興曲 Op.90」。ベートーヴェンが《第九》を作曲したわずか数年後に作られた、シューベルト若き晩年の傑作だ。後藤さんは想いを込めながら、やさしくやわらかい音でシューベルトの4つの"歌"を紡いでいく。
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そして後半。「宇宙が始まり、エネルギーが爆発していく第1楽章、命そのものの動きを示すような第2楽章、ベートーヴェンの全作品の中で最も美しい第3楽章、そして第4楽章ではこれまでの3つの楽章を打ち消し、よりすばらしいものを求めようという言葉とともに《歓喜の歌》に入っていく。演奏を通して、ベートーヴェンの精神をお伝えできれば」。そんな言葉とともに、《第九》の演奏へ。後藤さんはピアノ1台から多様な音を引き出し、同時に静寂の中でも音楽を表現しながら、《第九》の壮大な世界を描き出した。
大きな拍手を贈る聴衆に向けて、「今日は《第九》の余韻を持ち帰ってほしいのでアンコールはありません」と後藤さん。聴衆は、ベートーヴェンの音楽が発する膨大なエネルギーを全身で受けたまま、帰路につくことになった。
オーケストラ作品をピアノで表現するおもしろさ
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後藤さんがベートーヴェンの交響曲ピアノ編曲版に取り組むようになったのは、ファンの方からの《田園》交響曲を弾いてほしいというリクエストがきっかけだった。
「ピアノのレパートリーが無数に存在する中、私がベートーヴェンの交響曲に取り組む意味について、最初は考えました。でも実際に演奏してみたら、オーケストラをピアノに置き換えて表現するという作業がすごく楽しかったんです。オーケストラパートの伴奏の経験などはそれまでにもありましたが、自分の責任で全てのパートを弾くというのは、まったく違った経験です。テンポも抑揚も自分で判断しながら、オーケストラの音楽のストーリーを体験できることが、とにかくおもしろいと感じました」
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そこから3年をかけて9曲の交響曲すべてを演奏。以降、自主公演で主要作品を定期的に取り上げながら、ベートーヴェンの世界に向き合い続けてきた。
「技術的にも音楽的にも、10年かけてようやくここまで来たという感じです。オーケストラの音のイメージを念頭に置くと同時に、ピアノで演奏するからこその魅力も存分に表現したい。もちろん、お客様に楽しんでいただくことを考えてはいますが、こうした自分への挑戦も大切にできるのは、自主公演ならではです」
なかでも今回演奏した《第九》は、やはり特別な作品だ。
「《第九》のリスト編曲作品がもしもこの世に存在しなかったら、私のピアニスト人生はどうなっていただろうと思います。演奏していると、ベートーヴェンの壮大な世界に巻き込まれながら、旅をしているような気持ちになります。演奏上の運動量も大きいですが、音楽の濃度もとても濃く、弾き終えた後には何とも言えない充実感があります」
作品ひとつひとつが永遠の生命体のよう
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これまで幾度もJTアートホール アフィニスの舞台に立ってきた後藤さん。自主公演の会場としてこのホールを選ぶのは、今回が2度目だ。
「まず響きが良いこと、さらに楽器が良いことが第一前提。そのうえで重視したのは、東京の真ん中に位置するというアクセスの良さ。どのエリアにお住まいの方にとっても来場しやすいのが良いですね。ロビーに外光が入る、明るい雰囲気も気に入っています。実は私、自分が立つステージの環境については、音響さえ問題がなければあまりこだわりがないんです。その時の条件に合わせて、それならこうすれば良いとすぐに思えるほうなので」
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一方で、強いこだわりをもっているのが、プログラムだ。
「今、何が弾きたいのかを自分に問う作業は、簡単ではありません。弾きたい作品はたくさんありますが、あえて今それに取り組む意味を考えていくと、難しくなるのです。もともと好きなドイツ、オーストリアものはもちろん、ショパン、ドビュッシーなど、凝り固まることなくさまざまな作曲家に取り組んでいきたいと思っています。そんな中でもやはり、シューベルトとベートーヴェンは特に気になります。シューベルトはいつもスッと傍にいてくれるような存在。音楽が心に沁みてきます。一方のベートーヴェンについては、彼が人間だったということが信じられませんね……。作品ひとつひとつが永遠の生命体のようで、こんなものを人間が創り出せるのかと思わずにはいられません。天才とは、そういうものなのかもしれませんが」
ベートーヴェンの交響曲に長らく取り組んできた今、32曲のピアノソナタに改めて取り組みたいという考えもあるそうだ。
「やはり、ピアノならではの世界がとても愛おしいと感じます。弾けば弾くほど、あらためてピアノの音が好きだと実感するんです。交響曲を弾いたからこそ見えてくるものもあるでしょう。ピアノをやってきてよかったと、つくづく思いますね」
自分の枠が取り払われる、巨匠との共演
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ソロの活動に加え、室内楽にも積極的に取り組む後藤さん。これまで、ウィーン・フィルの元チェロ首席奏者である故・フリッツ・ドレシャル氏をはじめ、ウェルナー・ヒンク氏(ウィーン・フィル元コンサートマスター)、カール・ズスケ氏(ゲヴァントハウス管弦楽団元コンサートマスター)など、数々の名奏者と共演を重ねてきた。こうした経験から得るものは大きい。
「一緒にステージに立つことで、想像を超えた音楽がどんどん私の中に入って来ます。一人で弾いている限り、いくら突き詰めてみても自分の枠を外すことは難しいですが、それをいとも簡単に取り払ってくれるのです。室内楽はソロの演奏より約束事が多いものですが、彼らとの共演では、本番になるとすべてのことが許されます。共演者、そして作品に対しての大きな信頼がそこにあるのです。生きた人間が、生きた音楽を創っている。そして、心から音楽を楽しんでいる。客席で聴いているのではわからなかった、舞台から沸き出すものを感じます。アンサンブルって、聴いているお客さまよりも、演奏している本人たちが誰より楽しんでいるのではないかと思いますね(笑)」

多岐にわたる演奏活動の中で後藤さんがずっと大切にしてきたこと。それは、舞台でしか生まれない感覚を大切にし、聴衆に届けることだ。
「練習を重ね、音楽を組み立てていく時間はとても楽しいものです。でも、ステージへは考えてきたことを置いて出て、その場で感じるものを届けなくてはいけません。私自身がその作品、その時間を生き、借り物ではない自分の音楽を届けたいですね」
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