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Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

「自由に空を飛び、美しく歌う"鳥"のようになりたい」──河西麻希さん (サクソフォーン)

公演概要

河西麻希サクソフォーンリサイタル pássaro de música vol.3

公演日 2016年1月31日(日)
プログラム
リボル・ドゥジェヴィコフスキー  スイティチュカ(小組曲)
エルヴィン・シュルホフ ホットソナタ
カレル・フサ 哀歌とロンド
エドゥアルド・ドウシャ サクソナティナ
ヴラティスラフ・ゾッフル MUSIC FOR MAKI
インドジッフ・フェルド ソナタ
出演 河西麻希(サクソフォーン) 荒尾岳児(ピアノ)

プロフィール

河西麻希(かさい まき)

神奈川県出身。横浜隼人高等学校卒業。昭和音楽大学器楽学科演奏家コースを卒業。同時に特別賞受賞。昭和音楽大学音楽専攻科修了。同時に学長賞受賞。在学中、同大学オーケストラと共演。第12回日本クラシック音楽コンクール第1位。その他受賞歴多数。2004年、初のソロアルバム「風の旋律」リリース。2007年2月にラトビアで行われた第5回国際サクソフォーンフェスティバル「サクソフォニア」に日本人として初めて招聘される。オープニングコンサートではソリストとして演奏。また、ラトビアの各地でリサイタルを開催し、好評を得る。同年、「アンサンブル・ロカ」と金井勇氏の新作サクソフォーン協奏曲を初演。2008年、ラトビアで行われた国際宗教音楽祭に出演。同年、自身のユニット「Laluna(ラルナ)」オリジナルのミニアルバム「Naturalious」をリリース。2010年、作曲家・船橋登美子氏との新曲アルバム「猫・ねこ・ネコ」をリリース。同年、河西麻希全曲初演リサイタルを開催。2011年、「Laluna」セカンドアルバム「Widen World」リリース。2013年、第2回河西麻希サクソフォーンリサイタル「ラトビアの祈り」を開催。2015年、プラハ音楽院(チェコ)に短期留学し、パヴェル・フィードラー氏に師事。サクソフォーンを渡辺美輪子、岡崎美絵子、宗貞啓二、福本信太郎、田中靖人、パヴェル・フィードラーの各氏に師事。室内楽を彦坂眞一郎、武藤賢一郎の各氏に師事。

"音楽の鳥"をコンセプトとしたリサイタル
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サクソフォーン奏者の河西麻希さんによる、「pássaro de música(パッサーロ デ ムジカ)」="音楽の鳥"と題したリサイタルシリーズ。"風の音色に乗って、はばたき、舞い、歌う─鳥のように"。そんな想いを込めたこのシリーズで、彼女は次々と新たな挑戦を続けている。

2010年は日本人作曲家委嘱作品による全曲初演リサイタル、2013年はラトビアの音楽によるリサイタル。そして3回目となる今回は、彼女が2015年に短期留学したチェコの音楽がテーマだ。同国の作曲家によるサクソフォーンの知られざる名作や、委嘱作品の初演に取り組むなど、意欲的なリサイタルを行った。

冒頭は、日本初演となるリボル・ドゥジェヴィコフスキー(Libor Dřevikovský, 1969-)の「スイティチュカ(小組曲)」で、シリーズのタイトル通り、鳥が軽やかに空を飛ぶような音楽とともに幕を開けた。続くエルヴィン・シュルホフ(Erwin Schulhoff, 1894-1942)の「ホットソナタ」では、表情の異なる各楽章を、巧みに、細やかに描きわける。カレル・フサ(Karel Husa, 1921-)の「哀歌とロンド」では、深く力強い音に客席から思わずどよめきが起こった。
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エドゥアルド・ドウシャ(Eduard Douša, 1951-)の「サクソナティナ」は、河西さんがプラハ音楽院で師事したパヴェル・フィードラー教授のために書かれた作品で、これも日本初演。
そして続く「MUSIC FOR MAKI」は、その名の通り河西さんのために書かれた楽曲。短期留学中、知人のつてで知り合ったヴラティスラフ・ゾッフル(Vratislav Zochr, 1985-)に、この演奏会のための作品を委嘱したのだという。彼女の繊細な表現力が存分に生かされる、歌にあふれた作品だ。「ステージで演奏してみて、本当に自分のために書かれたのだと思ったら感動した。一生大切にしたい」と河西さんは語る。

そして、この日のプログラムのなかでは数少ない、有名なサクソフォーン・レパートリーと言える、インドジッフ・フェルド(Jindřich Feld, 1925-2007)の「ソナタ」。複雑なリズムを刻みながらピアノとサクソフォーンが絶妙に絡み合い、客席を魅了した。

アンコールは、河西さんがもっとも好きな曲の一つだという、ドヴォルザーク(1841-1904)のオペラ「ルサルカ」から「月に寄せる歌」。水の精のはかなげな歌を美しく歌い上げ、演奏会の幕を閉じた。
新作を演奏するおもしろさに魅せられて
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すでに日本で多くの演奏活動を行っている河西さんが、チェコへの短期留学を決意したのには、理由がある。

10年ほど前、日本でラトビア音楽をテーマとした演奏会に出演した縁で、2007年にラトビアの音楽祭に出演。それをきっかけに現地で演奏活動をする中、同国の音楽の理解は自然と深まっていった。その経験から、作品が生まれた地で過ごすことで得られる"音楽の説得力"を実感したのだという。

それもあって、プラハ音楽院への短期留学と同時に、次の自主公演のプログラムをチェコの作品で構成する考えが固まっていった。約5週間の滞在中、チェコの作曲家によるレパートリーを探し回ったという。

「プラハの楽譜屋さんでサクソフォーン作品を探し、お店にないものは取り寄せてもらって、できる限り集めました。そのうち実際に吹いてみて気に入った作品で、今回のプログラムを組みました。……実際、アルト・サクソフォーンとピアノという編成で演奏できるものは、これでほとんど全部といって良いくらいなんですが(笑)。サクソフォーンの歴史はまだ浅いですし、どちらかというと弦楽器の盛んなチェコでは曲があまり書かれていません。でも、そういう場所でみんなが知らない曲を探すことの方に魅力を感じるのです」
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共演の荒尾岳児さんとともに。

新作の初演や知られざる作品の発掘に興味を持つようになったのは、学生時代の師の影響も大きい。

「師事していた福本信太郎先生は、ご自身でもよく新作を手掛けていたのですが、生徒にも海外で入手した珍しい曲の楽譜を課題に与えたりしていて。私自身は当時、比較的"王道"のレパートリーばかり勉強していたのですが、実はそういう作品を弾くように言われている友人がうらやましかったんです(笑)。その後、実際に自分でも取り組むようになると、他の演奏家の録音も何もないところで、楽譜を見て一から音楽を組み立てていくことが本当に楽しくて。冒険みたいなんですよね」

今回、ピアニストとして共演した作曲家の荒尾岳児さんとも、6年前、シリーズ1回目の演奏会で新作を委嘱したことをきっかけに知り合った。

「ピアノパートをご自身で弾いてくださったのですが、そのときの音がすごくさえていて、とても好きになってしまって。実を言うと、荒尾先生の作品は出来上がってきたのが本番ギリギリで、当日もかなり怖かったのですが(笑)、一緒に演奏してみたらとても楽しめたんです。それで、シリーズ2回目以降では全曲のピアノ演奏をお願いするようになりました。
荒尾先生と合わせをしていると、作曲家の視点での意見を聞くことができます。一般的な解釈に左右されず、楽譜から読み取った独自の提案をしてくださって、その一つ一つに説得力がある。そうやって一緒に音楽を創っていくことが楽しいです」
音といい形といい、パーフェクトな楽器!
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ホールの響きは演奏家の心理状態に大きく影響すると、河西さんは言う。

「会場がいつも理想的な音響とは限りませんから、そういう時は演奏しながら、内心でそれにどう対処するかをずっと考えています。お客さんが入ると響きがデッドになるホールがほとんどですが、その場合、サクソフォーンは使うリードによって雑音が目立ってしまうことがあります。チューニングの音を吹いた瞬間に"ああ、あっちのリードにしておけばよかった……"なんて思うことも。
でも、今回のJTアートホール アフィニスでは、まったくそういうことがありませんでした。客席に人が入っても大きな変化がなく、どちらかというと、より吹きやすくなっていました。お客さまからも、ホールの音が本当に良かったという声をいただきました。こんなことは初めてです。小さな音も後ろまでしっかり届いている感覚があったので、小さな音はより小さく、大きな音も存分に出すことができ、安心して演奏に集中できました。ホールにすごく助けられました」
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もともと河西さんがサクソフォーンを選んだのは、その音に魅了されたのが理由だった。

「父がよくジャズを聴いていた影響で私もジャズが好きになったのですが、中でもサクソフォーンの音が特に好きで。それに加えて、あの格好いい形。……パーフェクトな楽器ですよね!それで中学生のとき吹奏楽部に入って、なんとかサクソフォーンの担当を勝ち取ったら、もう毎日練習が楽しくて(笑)。それがそのまま、今まで続いている感じです」


さまざまな新作の初演や、憧れている北欧の国フィンランドの音楽の探求など、これからサクソフォーンとともに挑戦したいことはたくさんある。

自由に空を飛び、美しく歌う"鳥"のようになりたいという河西さんの冒険は、これからも続く。
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