ホール利用者のご紹介

Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

ステージで、練習時には生まれなかった感情や音楽のうねりが現れる瞬間はとても幸せ──泉 真由さん (フルート)

公演概要

泉 真由デビューCD発売記念フルートリサイタル~道の記憶“Les SENTIERS”~

公演日 2016年10月26日(水)
プログラム
ゴーベール バラード
タファネル アンダンテパストラルとスケルツェッティーノ
ドンジョン サロン風エチュードより「エレジー」・「風の歌」
上林裕子 『道の記憶』~フルートとピアノのための小品集
サン=サーンス ロマンス
フォーレ ヴァイオリンソナタ イ長調 Op.13(フルート版)
出演 泉 真由(フルート) 松岡 優(ピアノ)

プロフィール

泉 真由(いずみ まゆ)

高知県出身。桐朋学園大学を首席で卒業。同大学卒業演奏会、読売新人演奏会に出演。同大学研究科、桐朋オーケストラアカデミーを修了。第13回日本フルートコンヴェンションコンクールソロ部門第1位、併せて吉田雅夫賞受賞。第21回日本木管コンクール第2位。第19回日本木管コンクール第3位。
小澤征爾音楽塾、サイトウキネンフェスティバル、別府アルゲリッチ音楽祭 等に参加。これまでにフルートを、甲藤卓雄、甲藤さち、峰岸壮一、一戸敦、白尾彰、神田寛明、フィリップ・ベルノルドの各氏に師事。現在は、ソリスト、室内楽奏者としての活動と、国内のプロオーケストラ、吹奏楽団にフルート・ピッコロ奏者として客演。また、関東を拠点に、大阪、高知、沖縄など全国的に指導も行っている。2012年より洗足学園音楽大学非常勤講師。2016年、デビューCD”道の記憶~Les SENTIERS~”を発売。記念リサイタルを各地で開催し、好評を博す。

フランス近現代作品で多様な色彩を再現
桐朋学園大学卒業後、ソロや室内楽、オーケストラへの出演など幅広い演奏活動を行っている、フルーティストの泉真由さん。郷里の高知で毎年リサイタルを開催してきたが、今年はCDリリースに合わせて、4年半ぶりに東京と大阪でもソロリサイタルを行った。

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演目は、フランス近現代作品を中心に、彼女にとって思い入れの深い楽曲を集めたもの。共演は、パリ在住のピアニスト、松岡優さん。冒頭には、20世紀前半のフランスにおいて、パリ・オペラ座管弦楽団で活躍した3人の名フルート奏者による作品が集められた。ゴーベールの「バラード」で、明るく優しい光が満ちるような音とともに演奏会の幕を開けると、ゴーベールの師でもあったタファネル、彼とオーケストラの同僚だったドンジョンの作品へ。色彩豊かなフルート作品が次々に披露され、当時のパリのフルート界の充実ぶりがしのばれる。後半で演奏された、サン=サーンスの「ロマンス」、フォーレのヴァイオリン・ソナタ(フルート版)との対比から、フルーティストが書いた楽曲ならではの魅力も際立った。
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一方、この日最も新鮮な印象を残したのは、前半の終わりに演奏された、フランス在住の作曲家、上林裕子の「『道の記憶』~フルートとピアノのための小品集」。泉さんが先日リリースしたアルバムのタイトルにもなっている作品だ。「雨あがりの道」「川辺にて」「三角と四角の道」「帰り道で」「木漏れ日の道」と題された5つの小品を、泉さんは多様な質感の音で繊細に、丁寧に表現してゆく。小道を歩く中、周囲の光や香りが変化していく様を体験するような、特別な空気が会場を包んだ。
大好きな作品を、多くの人に知ってほしい
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泉さんが、上林裕子さんの「道の記憶」に出会ったのは、10年前のことだ。
「清水信貴さん(フルート)とジャン=ミッシェル・ダマーズさん(ピアノ)が、作品集からの3曲を録音したCDを聴いたのが最初です。すっかり魅了されて、暗譜するほど何度も繰り返し聴きました。自分でも演奏したいと楽譜屋さんに聞いたら、楽譜は出ていないと言われて。あきらめきれず、パリの友人を通して模索した結果、上林さんご本人を紹介してもらえることになったのです。さっそく連絡すると快くご協力くださって、2012年のリサイタルで初めて取り上げることができました。以来、録音や楽譜について多くの問い合わせをいただきました。それもあって、CDをリリースするにあたってはこの大好きな作品をぜひ収録したいと思って。会場で楽譜も販売したところ、取り扱いたいという楽器店も出てきました。好きな作品をとにかく広めたいという気持ちでやっていたので、うれしかったですね。
今回、大阪公演にちょうど一時帰国中だった上林さんがいらしてくれました。演奏後、『私、こんなきれいな曲を書いたかしら』と言ってくださって、本当に光栄でした」
心から愛する作品に挑戦できるのは、自主公演ならではでもある。
「今回のプログラムは『道の記憶』以外も、演奏機会が少ない作品が並びました。そこには、信念を持ち、作品の魅力をフルートで語ることができれば、聴く方にとって知っている曲かどうかは関係ないという考えがあります。実際お客様から、“こんなにいい作品があったのね”とか“自分も演奏しようと楽譜を買った”という感想をいただき、うれしく思いました」
節目となった、東京での自主公演
今回の東京公演は、自身にとって節目となったと振り返る。
「前回の東京公演はいくつかのコンクールで賞を取った後の初めてのソロリサイタルでしたので、注目していただけたようにも感じますが、それから4年半が経ち、今、自分がどんなふうに受け入れられるのだろうかと、背筋の伸びる気持ちで臨みました。たくさんの方が演奏を聴きたいとご来場くださったのを見て、今後はまたソロにも力を入れていきたいと思うようになりました」

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会場を選ぶにあたっては、はじめからJTアートホールアフィニスでと考えていたという。
「2008年、JT主催の『期待の音大生によるアフタヌーンコンサート』に出演させていただいたとき、とても吹きやすいホールだという印象を持ちました。ちょうど良い席数、立地、そしてすばらしい響きがそろっているので、他に選択肢はありませんでした。実際に本番のステージに立って一番驚いたのは、お客さんが入ったあとでもリハーサル時とほとんど響きが変わらなかったこと。普通、1曲目は響きを確かめながら演奏しますが、ここでは始めから余計なことを考えず集中できました。また客席にいた方からは、前方、後方、どの場所でもきれいに音が飛んできて、ピアノとのバランスも良かったと聞きました。この会場ならではの良さですね」
言った言葉が自分に跳ね返ってくるという自覚
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泉さんがフルートを始めたのは、中高一貫の中学校で吹奏楽部に入ったことがきっかけだという。それも偶然の成り行きだった。
「普通、フルートはあのきれいな音が好きで始める方が多いと思いますが、私の場合は少し違うんです。もともと3歳から中学受験の前まではピアノを習っていました。中学では最初、なんとなくテニス部に入ったものの3、4ヵ月でやめてしまって。そんな中、何をする部活なのかも分からないまま、友人に吹奏楽部へ連れていかれたのです。サックスを吹いてみたら音がすんなり出たので、向いているのかもしれないと、また勢いで入部することに。でも、翌日行ってみたらサックスは余っていないから他の楽器を選ぶように言われたんです。なんだか詐欺みたいですよね(笑)。その後も希望する楽器はことごとく断られ、最終的に手にしたのがフルートでした。しかも、実はこの吹奏楽部がコンクールに入賞するような強い部で、入って1週間後にコンサートがあるからと、高校1年生の先輩のスパルタ指導のもとすぐに音を出して曲を演奏するようになりました。そこからどんどんのめりこんでいきましたね。今思えば、音を出すことに迷いや悩みを感じる暇がなかったのは、逆にラッキーだったのかもしれません。ここで時間がかかりすぎると、後々悩んでしまうこともあるのだと、教える立場からいろいろな生徒さんを見ていて感じるからです」
現在彼女は、東京や高知をはじめ各地に生徒を持ち、また洗足学園音楽大学で非常勤講師として教鞭を執っている。
「教えるようになったことで、演奏活動では得られなかった多くの発見があります。必要なことを分かりやすく言葉で伝えようとする中で、練習よりも音楽について考える時間が増え、演奏においてやりたいことがよりシンプルにはっきり見えてきました。何より、言った言葉が自分に跳ね返ってくるという自覚が、演奏家としての意識に影響しています」
一つのオーケストラに所属せず、フリーの奏者としてさまざまな立場を体験することも、視野を広げているという。
「いろいろな楽団で異なる方と共演することにより、毎回多くを学んでいます。ポジションも、首席をやることもあればセカンドパートやピッコロを吹くこともあるので、その都度求められる立場に切り替える能力が身につきました。多様な時代や国籍の作曲家を演奏し、作品ごとのスタイルや求められる音への理解も深まりました。こうした経験は、ソロや室内楽の演奏にも生きています」
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そんな泉さんが、演奏家として幸せを感じるのはどんな瞬間だろうか。
「終演後のほっとする瞬間、お客様の顔を見て感想を聞くときも幸せですが、やはり一番は演奏中ですね。ステージで、練習時には生まれなかった感情や音楽のうねりが突然現れてきた瞬間は、とても幸せです」
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