ホール利用者のご紹介

Appassionato ─ 響きにこだわり、奏でる音楽家たち

常に妥協せず、感覚を研ぎ澄まして、充実した音楽人生を送りたい──津田真理さん (ピアノ)

公演概要

津田真理ピアノリサイタル~ショパンの真髄~

公演日 2016年11月18日(金)
プログラム
ショパン バラード 第1番 ト短調 Op.23
ショパン バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
ショパン バラード 第3番 変イ長調 Op.47
ショパン バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
ショパン 練習曲集 Op.10
出演 津田真理(ピアノ)

プロフィール

津田真理(つだ まり)

東京都生まれ。桐朋女子高校・桐朋学園大学で学ぶ。その間、全日本学生音楽コンクール第1位。ザルツブルグのモーツァルテウム音楽院に留学。1983年、ヴィオッティ国際コンクール第1位および特賞。1986年ボルドー音楽祭で金メダル受賞。その後、パリのエコール・ノルマル音楽院にて学ぶ。1989年帰国以来、リサイタルや、国内外のオーケストラと多数共演。近年は、聴衆との対話を大切にしたコンサートにも力を入れており、解説を交えたレクチャーコンサートを数多く行っている。CD録音でも幅広く活躍、レコード芸術誌にて準特選盤に選ばれるなど、音楽各誌で注目された。

ショパンの心情に迫るプログラム
ピアニストの津田真理さんは、中学校2年のときに全日本学生音楽コンクールで優勝。その後桐朋学園を経て、ザルツブルクとパリで学び、21歳でのイタリアのヴィオッティ国際音楽コンクール優勝を契機に国内外で演奏活動を行ってきた。そして50代を迎えた今、気持ちを新たに、2015年からひとりの作曲家に焦点を当てるリサイタルシリーズを行っている。

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今回取り上げたのは、ショパンのバラード全4曲とエチュード作品10。音楽的にも技術的にも容易でないこのプログラムを通し、津田さんはショパンの心情に迫っていった。
演奏会は、バラードからスタート。第1番の冒頭からボリュームたっぷりの芳醇な音がホールに響く。ショパンが愛国心と詩情を託した4つの“物語詩”を、自由に、伸びやかに紡いでいった。後半のエチュード作品10では、急速で技巧的な作品は細かなニュアンスを丁寧に聴かせ、ゆったりとした作品は歌心たっぷりに、12の小品それぞれが持つ世界観を鮮明に描き出していった。
本編を弾ききった津田さんは客席に感謝の気持ちを伝えると、アンコールとしてエチュード作品25-1「エオリアンハープ」、ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」を演奏。ショパンらしい華やかな空気を会場に満たして、演奏会を閉じた。
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リサイタルに向けて、津田さんはショパンをより理解するため、書簡集を読み、楽譜の細かな指示を改めて研究し直したという。
「手紙につづられた悩みなどを読んでいると、今の私たちと何も変わらなくて、その人間的な部分に少しずつ共感が増していきました。同時にショパンが音楽で言おうとしていたことも理解できるようになったのです。今回のプログラムは、まるで“メインディッシュ2つ”といえるような内容で、大きな挑戦でしたが、自分がこれまで人生の中で得たもの、学んできたことを作品に込めて、一気に表現できたらいいなと。実際に演奏を終えて充実感を得ることができ、今年は良い1年だったと感じています」
“音楽的”なホール
津田さんが、JTアートホールアフィニスでリサイタルを行うのは、今回が2度目。ラヴェル生誕140周年だった2015年、「ラヴェルの肖像」と題したリサイタルを行ったのが最初だった。会場選びをしていた際、当時設けられていた“作曲家割引”(2015年で終了)の情報を見かけたことが、ホール見学に訪れたきっかけだったという。

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「丁寧に案内していただき、会場をこちらに決めました。そして実際にステージに立ってみたらラヴェルがとても弾きやすくて、満足のいく演奏会ができました。それで、今回のショパン・リサイタルも、迷うことなくこちらを選んだのです。キャパもアクセスも良く、ロビーも広々としていて気に入っています。なにより、木目の美しいホールは響きが柔らかく、自然で無理のない音が客席に届きます。お客様からも、立派ですてきなホールだという感想をいただきました」
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津田さんが弾きやすいと感じるのは、どんなホールなのだろうか。
「フォルティシモの豊かな響きとピアニシモのささやくような響きが、自分で幅広く聴き分けやすいこと。そして、客席が埋まったあとも、リハーサルのときと響きが大きく変わらないことも重要です。JTアートホールアフィニスは、その意味でもとても満足のいく会場です。シンプルな形状なのに、素晴らしいですね。ほんの数十センチ、ピアノの位置をずらしただけでも響きが変わるので驚きましたが、調律師さんがおっしゃるには、響きがいい場所だけに、そうした変化が敏感に反映されるのだろうと。とても“音楽的”なホールですね。また、照明も熱かったりまぶしかったりすることがなく、舞台に立っていて全くストレスを感じませんでした。普段練習しているときと変わりない感覚で集中でき、うれしかったです」
50歳で生まれ変わり、新たなスタートを切った
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津田さんにとって、2015年のリサイタルは、久しぶりのソロリサイタルという大舞台だった。
「7年前に大病をして、肉体的にも精神的にもどん底まで落ち込み、しばらくピアノが弾けませんでした。少しずつ回復してきたあとも、自宅で教えたり、室内楽やアウトリーチのコンサートなどで弾いていましたが、一から企画するソロリサイタルは高い壁でした。ですが、周囲の励ましもあり、時間をかけてようやくここまで這い上がってきたのです」
学生のうちにコンクールでタイトルをとり、順調にピアニストとしてのキャリアを進めていった津田さん。ザルツブルクではハンス・ライグラフ氏からドイツものを、パリではジェルメーヌ・ムニエ氏からショパンなどを学んだのち帰国した。時代はバブルの真っただ中。とにかく景気が良かったので、新しいホールも次々と建てられており、オーケストラと全国をまわる演奏会の仕事などにも事欠かなかった。
「運も良く、そこまで速いスピードで登っていくことができたけれど、中身がついてきていなかったのだと、今となっては思います。その後、バブルも崩壊し、ピアニストとしてこれから先どうしたらよいだろうかと悩み始めた矢先、病に倒れてしまったのです。病院の天井を見つめながら、これでピアノを弾かなくてすむ、なんて自暴自棄な気持ちになった時期もありました。5年前には父を亡くし、さらに落ち込みました。ですがそれをきっかけに、人はいつか死ぬ、自分はピアノを失ったまま死んでいいのだろうかと思い直すようになったのです」
そこから一念発起。たまりにたまっていた楽譜を整理したら、自分はこれだけの作品を弾いてきたのだと実感し、同時に心がすっきりとした。
「古いものを引きずっていては、だめなんですよね。今では、練習部屋は常にきれいに、生徒さんが来る前のレッスン室はすみずみまで掃除し、ピアノも鏡もしっかり磨いておくようにしています。同じように、心の掃除も大切です。悩みはたくさんあるけれど、なるべく前を向いて進んでいく。人生、いつ何があるか本当に分かりませんから、一瞬一瞬を大切にしなくてはいけません。音楽も同じですね」
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50歳で生まれ変わり、新しいスタートを切ったと、津田さんは晴れやかな表情で語る。
「苦しんだ時期があったからこそ、今こうして自分らしい人生が送れるようになりました。未来を見る力、人のつらさを理解する気持ち、感謝する心を取り戻したのです。私の演奏を楽しみにしてくださる皆さんを大切しようという想いも、より深くなりました。
そろそろ、人生を総括してゆく時期に入ったのかなとも思っています。自分が何を大切に生きてきたかは、すべて音楽に表れますよね。今、ようやく音楽が面白くなってきました。ピアノという楽器の可能性にもますます惹き込まれています。これからも妥協せず、感覚を研ぎ澄まして、充実した60代に向かっていきたいと思います」
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