『世界地図の楽しみ』

高野 孟さん

講師画像(複写禁止)

日本人に欠けるのは“想像力”

民進党の代表に蓮舫さんが就任しました。実は私、彼女の結婚の仲人なんです。1990年代初めに私が、某民放テレビ情報番組のキャスターを引き受けた時に、まだ大学を出て2~3年目の彼女をアシスタントに採用した。そうしたら、その番組を担当していたうちの事務所スタッフと仲良くなってしまったんです。

そんな縁で蓮舫さんが参院選に出るときも、鳩山元首相から「仲人権限で口説いてよ」と言われて、居酒屋に呼び出して「あなた、向いてるからやれよ」って誘ったら、即「はい!」と。

その時は、まさか野党第1党の党首になるとは思わなかったけど、今はまさに女性の時代かなと思います。ドイツもイギリスも、韓国も、台湾も、ミャンマーも女性指導者だし、米国もまもなくクリントンになるかもしれない。世界の指導者がみんな女性になったら、戦争がなくなるんじゃないか。女性だからタカ派ではないとは限らないけれど、戦争ばかりやってきた20世紀を振り返るとき、世の中を男だけで仕切ってると、どうもろくなことはないとつくづく感じます。

私は1982年に『世界地図の読み方』という本を書きました。その後、新書になったり、全面改訂したりして、数十年に及んで読んでいただくロングセラーとなりましたが、このタイトルが主張しているのは「世界地図は単に“見る”ものではなく、“読む”ものである」ということです。

世界地図というと皆さん思い出すのは大抵、日本が真ん中にあって赤く塗ってある横長の地図でしょう。しかし、欧州の世界地図では日本は右の端っこにあって、だから極東なんですね。米国ではできるだけ米国が真ん中に来るような地図を作りたがる。誰でも自国を中心に眺めたいのです。

地図はどうして“北”が上?

講師画像(複写禁止)

地図の読み方はさまざまです。例えば、どうして「北」が地図の上に来るのか。オーストラリアの空港で売ってる地図は、上下逆さま、「南」が上になっています。古代アラブの地図も、南が上に描かれていました。

私が考案した地図の一つはユーラシア大陸を西を上に90度回転させた地図で、これを見ると世界の文明史の中での日本の位置をイメージすることができます。

地中海、中東、さらにロシア、インド、中国、東南アジア、朝鮮半島などの文明・文化のエッセンスがすべて、いちばん下のパチンコの受け皿のような形をした日本列島に流れ込んできて、集積され、濃縮される。日本には世界の文物のすべてを受け入れてそれを漬け物だるのように発酵させる力がある。私は、これが日本文明の最大の特徴です。

しかしその日本もけっして一色ではなく、歴史軸で見ると、蝦夷(えぞ)、大和、琉球の三本柱からなっています。それを地図で見ると、日本列島3千キロが面白いことにそれぞれ千キロずつに分かれています。われわれが教えられる“日本史”は実は“大和史”でしかない。日本史をこの三本柱で捉えてこそ本当の日本の姿が分かると訴える沖縄の人たちの声に、もっと真摯(しんし)に耳を傾ける必要があろうかと思います。

冷戦下、当時の米ソが核ミサイルを向け合っていた時代、両国は互いに、“北”に向けてミサイルをセットしていました。東と西の方角ではありません。それは北極を中心に描いた地図を見れば明らかです。

今、北朝鮮が米国を狙っているといわれます。仮に、北朝鮮がミサイルを発射するとした場合、日本がそれを黙って見過ごしてよいのかという議論があります。

ミサイル、北極上空から見たら

講師画像(複写禁止)

しかし、これも北極の上空から俯瞰(ふかん)したらどうでしょう。北朝鮮から見てワシントンはほぼ真北に位置します。それを日本が日本海や太平洋上で打ち落とすなど夢のまた夢、手も足も、出しようがないのです。

今、日本に欠けているのは想像力です。近隣諸国との付き合いがうまくいかないのも、それが最大の理由ではないでしょうか。想像力は、放っておいて身に付くものではありません。“地図を読む”ことを通じて、しなやかな想像力を鍛える練習をしてみていただきたいと思います。

JTフォーラム

開催日:9月16日(金)/ 開催地:山形/ 会場:山形グランドホテル/ 主催:山形新聞社/ 後援:(一社)日本ペンクラブ、山形県、山形市、山形県教育委員会、山形県商工会議所連合会

よくあるご質問とお問い合わせ ご質問、ご意見などございましたら、お電話もしくはインターネット(フォーム)で承っております。