講演レビュー

01.31(WED)佐賀

立川 談四楼さん

挨拶は楽しい

あいさつで大事なことは笑顔

私たちは、日々、あいさつに囲まれて暮らしています。あいさつの名人はおばさま方。親しくはないけれど顔見知りのおばさま方がすれ違うとき、見事な技術を披露します。相手を見つけた瞬間、満面の笑顔を浮かべて接近。「こんにちは」「いいお天気ですね」「奥様、どちらへ」「ちょっとそこまで」「そうですか。お気を付けて」「さようなら」。10秒足らずの会話の中に要諦がすべてあります。

まず笑顔。私はあなたの敵ではありませんという表明です。「こんにちは」と言われたら「こんにちは」。一歩踏み込んで「奥さんどちらへ」と質問し、あなたに興味があるということを示します。「ちょっとそこまで」と詳しくは語らない。相手も「そうですか」と突っ込んで聞かない。これが長くいい関係を保つこつです。実に巧みで私はこの生きる力にいつも敬服しています。

経験を重ねてうまくなるあいさつ

慶弔事のあいさつは経験を重ねて、その場にふさわしい言葉を並べることができるようになります。

私は披露宴の司会を千組以上やりました。ある結婚披露宴で新婦の父親が酔いも手伝って「ふつつかな娘」を「ふしだらな娘」と言い間違えたことがありますが、失敗しても朗らかに許されるのが結婚披露宴です。朗らかに、大きな声で、わざとらしいくらいに褒め上げるのがちょうどいいですよ。

突然やって来る不幸に言葉を用意するのは難しいですが、通夜や葬儀の参列者にはうまい人がいます。受付や遺族の前で、厳粛な顔でお辞儀しながら「このたびは」のあとに「はちゃはちゃはちゃ」と言葉にならない言葉を発するんですね(笑)。これがお悔やみに聞こえるから不思議です。

落語「芝浜」

うまいと評判の魚の棒手振りの主人。大酒飲みで商いもせずに飲んでばかり。生活費に困った女房から文句を言われ、「明日から行く」と売り言葉に買い言葉。夜中に起こされ、嫌々ながら出かけます。ところが女房が時間を間違えていて、まだ問屋が開いてない。待つことにして芝の浜の波打ち際で顔を洗っていると、財布を見つけます。急いで家に帰って女房と一緒に数えると42両の大金。主人は「仕事なんかくそくらえ。遊んで暮らす」と酒を飲み、酔いつぶれて寝てしまいます。

また、女房に「商いに行ってくれよ」と起こされます。主人は42両を拾ったくだりを説明しますが、「金がほしいと、そんな情けない夢をみるもんかね。42両あるなら、なんでうちに借金があるの」と言われてしまいます。自分が情けなくなった主人は、借金を返すために酒を止め商いに精を出して、3年後に小さな店を構えました。

その年の大晦日、女房は42両が入った財布を差し出します。実は拾った金を使うと主人の首が飛ぶ。おかみに届けて夢だったことにしようと大家と相談して決めたこと。落とし主が現れずにお下げ渡しになったけど、怖くて言い出せなかったこと。赤ちゃんができたことを告白されます。謝る女房に主人は「よく夢にしてくれた」と喜びます。女房は「一緒に飲もうか」と酒を進め、主人はのもうとしますが、「よそう。また、夢になるといけないから」。