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3シーズンぶりのV・プレミアリーグ、チーム力で4位と躍進

2017/05/26COLUMN

3シーズンぶりのV・プレミアリーグ、チーム力で4位と躍進

3シーズンぶりのV・プレミアリーグ、なかなか勝てない悪循環を抜け出すためにチーム一丸となってこだわった「1点をもぎ取る」「絶対に勝利を手にする」姿勢。一人ひとりが強い覚悟をもって挑んだはじめてのファイナル6。自分たちのバレーをみつけたJTマーヴェラスの次の戦いはすでに始まっている。

第1Legを5勝2敗の好スタート

再びたどり着いた、頂点を目指す場所。
3シーズンぶりに悲願の昇格を果たしたJTマーヴェラスのV・プレミアリーグでの戦い。
決して容易なものではない。だが、吉原知子監督がチームに掲げた目標はいつもブレなかった。

「やるからにはトップを目指す。やっとその挑戦権を得られたのだから、どのチームよりも厳しい練習をやってきたことを自信に戦ってほしい。監督として望むのはそれだけです」
いよいよ迎えたV・プレミアリーグ開幕日。10月30日、トヨタ車体クインシーズとの開幕戦で見せたパフォーマンスは、まさにその言葉通り、どのチームよりも動き回り、全員が拾って、全員がつないで、全員で攻める。まさにハードワークのたまものともいうべき圧巻のプレーでストレート勝ち。幸先いいスタートを切った。
開幕のみならず、JTマーヴェラスの快進撃は続く。NECレッドロケッツ、久光製薬スプリングスに敗れはしたものの5勝2敗と勝ち星を先行させ第1Legが終了。それでも選手たちは浮かれることなく、勝利の後も「自分たちはチャレンジャー」と口をそろえ、また次の戦いへと挑む。
得られた勝利を自信にし、勝ちパターンも少しずつ構築され始めたように見えたが、第2LegではV・プレミアリーグの洗礼が待っていた。

苦しい連敗脱出でつかんだ自信

些細な癖もデータとして明確になり、第1Legでは面白いように決まったスパイクも第2Legになると決まらない。なかなか得点できない焦りから勝負所でのミスも目立つようになり、接戦が取りきれず、負けの数が増える。悪循環ばかりが続き、連敗が続く中、最も苦しんでいたのは攻撃の司令塔となるセッターの田中美咲だった。
「私たちのチームは大砲がいるわけではないので、全員が攻撃に入らなければ厳しい。だからこそセッターの自分がスパイカーを活かさなければならないのに、打点や長所が活かせるようなトスが上げられない。アタッカーにすごく申し訳なくて、なんとかしなきゃ、と焦ってトスが早くなったり短くなったり。自分自身もなかなか悪い状況から抜け出すことができませんでした」
壁に当たっていたのはセッターだけでなく、エースとして戦う3年目の田中瑞稀も同様だった。
サイドアウトからの攻撃だけでなく、勝負所では二段トスも上がってくるポジションで、170cmという身長は決して有利になるものではない。だが相手の指先を狙ってワンタッチを取るスパイクや、手のひらに思い切って当ててパワーで弾き飛ばすスパイクで何度もチームを勝利に導いてきた。しかし、第1Legの戦いを終えた後、第2Legでは助走の入り方やスパイクコースもデータとして収集され、分析されているため、田中瑞稀の攻撃参加を遅らせようとサーブで狙われる回数も増え、スパイクコースにはブロッカーが立ち並ぶ。
苦しい状況を打破すべく、試合前の練習時も吉原監督やセッターの田中美咲と助走の入り方やトスの高さを確認する場面が幾度も見られた。

「自分にとってもV・プレミアリーグの戦いは初めて。大変な戦いになると予想はしていましたが、相手の対応力の高さは想像以上。それでも自分は決めなきゃいけないポジションなんだと思えば思うほどうまくいかなくて、周りに迷惑をかけてしまいました」(田中瑞稀)
コートでプレーする選手はもちろん、ベンチの選手も、ベンチ外の選手もそれぞれの立場でV・プレミアリーグの壁の高さや厚さに直面し模索する。苦しむ姿を見ながらも、吉原監督は「ここで踏ん張れるかどうか。乗り越えられればもっと強いチームになれる」と言い続け、選手たちを信じてコートに送り出す。
ようやく光が差したのは、12月11日のPFUブルーキャッツ戦だ。
V・チャレンジリーグで戦っていた頃から争ってきた相手との対戦。好調時には「普通にやればできる」ことが、なかなか勝てずにいるときは、その「普通」が難しい。2セットを先取される苦しい展開となったが、諦めず全員が必死でボールをつなぐ。“とにかく1点をもぎ取るんだ。絶対にこの勝利を手にするんだ”という強い気持ちはプレーの随所に表れ、2セットを失った状況から大逆転の末にフルセット勝利を収めると、選手たちの目には涙が浮かんだ。
チームの中で数少ないV・プレミアリーグの戦いを経験してきた、コートキャプテンの奥村麻依が言った。
「本当に苦しかったけれど、それでも諦めずにやっと勝つことができた。この1勝は、ただ『勝った』という結果以上に私たちにとって本当に大きな意味のある勝利でした」

「自分たちのバレーができたら勝てた」

長いリーグ戦の最中に開催されるトーナメント形式の「天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会」を終え、新たな年の幕開けとともにV・プレミアリーグが再開。第1Legを5勝2敗、第2Legは2勝5敗。勝率5割で突入した第3Legだったが、苦しい連敗を乗り越えた自信はチームに新たな力を与え、6勝1敗と大きく勝ち越し13勝8敗、僅差の4位でV・ファイナルステージ(ファイナル6)へ突入した。
レギュラーラウンドの上位6チームによる総当たりの戦い。これまでも何度も1勝や1セットの重みを痛感してきたが、全選手にとって初の経験となるプレーオフ、ファイナル6はまさに1点の重さを実感する戦いとなった。
ファイナル6初戦は東レアローズにフルセットで惜敗。上位3チームに食い込むために何としても多くのポイントを獲得したい短期決戦で、初戦に敗れたダメージは決して小さなものではない。
だが、下ばかり向いてもいられない。一戦必勝を誓い、熾烈な戦いに臨むチームにとって起爆剤ともいうべき活躍を見せたのが2年目のウイングスパイカー橘井友香だ。

レギュラーラウンドではセッター対角のライトへ入ることが多かったが、ファイナル6ではレフトに入り攻撃だけでなくレセプションも担う。重圧を伴うポジションではあったが、吉原監督が「ミスが少ない安定した選手なので、守備に関してはほとんど心配していなかった」というように、プレーオフという独特の緊張が伴う状況であることを感じさせないプレーを見せ、攻撃面でもうまく相手ブロックを利用した攻撃や、コートの空いたポジションを狙う巧みなフェイントで存在感を発揮。レギュラーラウンドでは1勝2敗と負け越した久光製薬に対しても、橘井がまさに攻守の軸というべき活躍を見せ、ファイナル6では3-1と快勝。試合後は「もう出し尽くして立つこともできないです」と笑いながら勝利の喜びを噛みしめた。
「コートに立つ先輩はもちろん、位田(愛)さんや井上(琴絵)さん、先輩たちがベンチからいつも『大丈夫だよ』と声をかけてくれたので、私は思い切りプレーすることができました」(橘井友香)
まさにチームが1つとなって挑んだ総力戦。たとえ1%でも可能性が残っている限りは諦めずに戦い抜く。全員がそう誓って臨んだファイナル6だったが、わずか2ポイントの差に泣き、ファイナル3進出はならず。
それでも日立リヴァーレをフルセットで下し、最終戦は勝利で飾ったのだが、選手たちの目には連敗を止めた時とはまた違う涙が浮かんだ。
田中美咲が全員の思いを代弁した。
「悔しかったです。自分たちのバレーができれば勝てた。絶対もっと上に行けた。そう思える手応えがあったからこそ、悔しくて、悔しくて、泣けてきました」
長い戦いを通して見えた課題や収穫。そして勝利の喜びや、負ける悔しさ。頂点を目指して戦った3シーズンぶりのV・プレミアリーグを終え、5月の「第66回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会」は準々決勝で敗れ、JTマーヴェラスの長いシーズンが終わった。
黒鷲旗を最後に5名の選手がチームを去り、また新たなJTマーヴェラスとして次の戦いへと挑む。変革の時でもある。
この経験を、ただの出来事として終わらせないために――。吉原監督は言った。
「シーズンが終わったからこれで終わりじゃない。もう次の戦いは始まっています」
もっと強くなるために。そして次こそ頂点に立つために。新しい戦いはまたすぐに幕を開ける。

JTマーヴェラス