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「2017/18V・プレミアリーグ」準優勝。経験を財産に、来シーズンこそ目指すは日本一

2018/03/23COLUMN

何がなんでも、日本一になる!
そう掲げて臨んだ、2017/18V・プレミアリーグで、ようやくたどり着いた、ファイナルの舞台。
頂上決戦――。
その場に立たなければわからないこと。日本一になるのがどれほど難しいのかということ。いつも通りを当たり前にするのがどれだけ困難であるかということ。
悔しさと、もどかしさ。だがそれはすべて、この舞台にたどり着かなければわからなかったこと。次のシーズン、同じ舞台に立った時、きっと思うはずだ。
この経験ができてよかった、と。

ファイナル6は全勝でファイナル進出

レギュラーラウンドを2位で終え、ファイナル6へ。順位によってポイントが加算されるとはいえ、1位と2位、2位と3位の差はわずか1ポイントしかなく、1つの勝敗で順位も大きく変わる。6チーム総当たりとはいえ、一発勝負に近い短期決戦でもあるファイナル6の戦いは、いかに早く勢いに乗ることができるかというのも大きなポイントになる。
特にレギュラーラウンドの終盤は連敗が続き、主将の奥村麻依が「今シーズンは好不調の波があったけれど、3Legの最後はかなり状態が悪く、本当にファイナル6で立て直せるのか不安もあった」と言うように、少なからぬ不安があったことも事実だ。
だが、苦しい時だからこそ何かできるのではないか。選手同士でもミーティングを重ね、まず着手したのが「練習の空気を変えること」だった、と奥村は言う。
「負けが続くとどうしても練習中の空気も悪くなって、ピリピリして、たとえばお互いに指摘をする時も口調が強くなってしまったりするんです。でもそんな雰囲気でやっていてもプラスにはならないので、せっかくここまで来たんだから最後まで楽しくできるようにやろう、という意識になったんです。すごく練習中の雰囲気が良くなったし、私自身もファイナルラウンドに入ってからのほうが『楽しい』と思うことが増えました」

ファイナル6の初戦は東レアローズの勢いに押される場面もありながら、サーブから攻め、ブロックとレシーブで切り返してブレークを重ねる展開に持ち込み、3-1で勝利。続くトヨタ車体クインシーズ戦はフルセットまでもつれる大接戦となったが、要所でブランキツァ・ミハイロヴィッチが軟打を織り交ぜた多彩な攻撃を展開、粘る相手を退け、勝利を重ねた。

レギュラーラウンドの序盤はケガ人が相次ぎ、少ないメンバーで戦うことも余儀なくされたが、ケガから復帰した選手たちや、日体大在学中で内定選手の目黒優佳など若い力も加わった。試合を重ねるごとにチームの厚みが増し、進化を重ねる。それこそが大きな財産だ、とミハイロヴィッチが言った。

「若手選手も一生懸命練習しているので、コートでどんどん結果を出しています。選手同士、スタッフともどんどんコミュニケーションを取っていくことで、バレーボール選手としても、人間としても成長できる。私も、チームもまだまだ伸びることができるはずです」

まさにその言葉を体現するかのごとく、チームにとってベストゲームと言っても過言ではない試合がファイナル6の最終戦だ。共に4戦全勝で迎えた久光製薬スプリングスとの対戦。勝利すればファイナル進出が決まるこの一戦を前に、吉原知子監督が「ファイナル6で1位になってファイナルに行こう、というのがチームにとっても目標だった」と言うように、頂上対決の前哨戦とも言うべきこの試合に向け、万全の準備をして、その成果を発揮する。相手にリードされてもサーブで攻め、一度チャンスをつかんだら一気に畳みかける。ミハイロヴィッチだけでなく、ミドルブロッカーの奥村、芥川愛加も攻守で存在感を発揮、ここまでリーグでは負けなしの久光製薬をストレートで下し、ファイナル進出を決めた。
理想的な形でファイナル6を終え、いよいよ日本一をかけて戦うファイナルへ。ずっと目指してきた場所で、今シーズン最高のバレーボールを展開しよう。誰もが、そう思っていた。

経験の差を痛感したファイナル

暗転した体育館の中を、1人ずつ、スポットライトを浴びながらコートに立つ。これぞ決勝戦というべき特別な演出で、場内の雰囲気を高める。吉原監督が「緊張して当たり前」と話していたように、ここまで7シーズン連続で決勝進出を果たしてきた久光製薬に対し、JTマーヴェラスの選手で決勝を経験したことがあるのは井上琴絵と芥川のわずか2人。普段通りにできないことも、余分なプレッシャーを背負ってしまうことも、すべて想定内ではあったが、遥かに想像を上回る緊張感がのしかかり、試合開始から連続失点を喫し、なかなか思い通りの展開に持ち込むことができない。吉原監督も「何とか早く地に足がついてほしい、と思っていた」と言うように、早々にタイムアウトを取り切るが離れた点差はなかなか埋まらず、1点、また1点と開くたびに表情はこわばり、足が止まる。

異様な空気を何とか払拭したい。そう思いながらも変えられない。芥川がこう言った。
「出だしはみんなガチガチすぎて、声を出したり足を動かそうと意識しながらやっていたんですけど、久光さんに行った流れを取り返すのが難しかった。2セット目からはプレーも少しずつ落ち着いて、大きく乱されたわけではなかったんですけど、自分たちがリードしても(大差で失った)最初のセットを引きずっている感じがありました。勝っているのに負けているような雰囲気だったので、そこは修正しないと勝てない。経験することの大切さを思い知りました」
経験の差が大きく露呈したファイナル初戦。ストレート負けで「何もできなかった」と多くの選手が反省の弁を述べたように、悔しい敗戦であるのは間違いない。だが、できなかったことや悪かったことばかりではなく、次戦につながる光明もある。チーム内で最も多くのレセプションを担った目黒が「緊張もあったけれど、周りから『頑張れ』と声をかけてもらえて力になった」と言うように、安定感のあるプレーを見せ、さらにこの試合がデビュー戦となった金蘭会高校在学中で内定選手の林琴奈も躍動感のあるプレーを展開。「入ったからには1本でも多く拾いたかった」と言うように、久光製薬の強打をレシーブする場面も見られるなど、大きな武器となる新戦力が加わったのは貴重な財産であるのは間違いない。

泣いても笑っても、これが最後。名古屋から東京へと舞台を移し、迎えたグランドファイナル。目黒、林といった若い選手がスタートからコートに立ち、1戦目では出せなかった攻めのサーブや、相手の強打を拾うリベロ、小幡真子のレシーブ。厳しい状況に追い込まれているとはいえ、まだ終わったわけではない。少しでも、ここまで積み上げて来たJTマーヴェラスのバレーボールを発揮したい。一人ひとりの力を出し切りたい。点差を離されても諦めず、最後までボールに食らいついたが、経験で勝る久光製薬はそれでも崩れない。
善戦及ばず、ストレートで敗れ準優勝。初めての決勝を戦い切ったことに清々しい表情を浮かべる選手もいる中、歓喜に沸く久光製薬の姿を見ながら涙し、タオルで顔を覆う選手もいた。
その1人であり、経験が求められるセッターというポジション。人一倍、敗れた悔しさと責任を噛みしめながら田中美咲はこう言った。
「初めての舞台で、思った通りにできたプレーもあったし、精度が悪くてまだまだだと感じる部分もありました。プレッシャーがかかった場面でも試合をあやつれるようなセッターを目指して、この経験を生かしていきたいです」

そして、誰よりも悔しさを抱えていたのがケガで最終戦の舞台に立つことができなかった田中瑞稀だ。試合後も溢れる涙を拭いながら、振り絞るように言った。
「出たい気持ちもあるけれど、自分のコンディションのせいで他のみんなに迷惑をかけるのも嫌だった。出られない悔しさはありますが、試合に出る林に少しでも声をかけてあげよう、と切り替えていたし、林が頑張ってくれてすごく頼もしかった。自分自身はすごく悔しいですけど、だからこそ、また来年、頑張るしかない、って思います」

勝った喜び。敗れる悔しさ。そのすべてが得難い経験であり、この場所に来たからこそ、わかることばかり。いい経験だった、その一言で終わらせず、この経験を糧として来シーズンにつなげるために。吉原監督が言った。
「この経験を来年しっかり生かしたいと思いますし、経験は何ものにも変えられない。悔しいですけど、悪かったことばかりではないし、何よりいい経験を積ませてもらったので、何がなんでも来年につなげて、優勝を取りに行きたいです」
ここからがまた、一歩ずつ。日本一に向けた挑戦が、新たに始まる――。

JTマーヴェラス