JTマーヴェラス
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ファイナル3はゴールデンセットの末に惜敗
リベンジを誓ったJTマーヴェラスの戦いは3位で閉幕

2019/04/05COLUMN

V・ファイナルステージにたどり着いた誇らしさと自信。でもその大舞台で、積み上げて来たものを出すことができずに敗れた悔しさ。思い起こせば、昨シーズン、優勝を懸けて臨んだ決勝戦で久光製薬スプリングスに敗れた瞬間から、今シーズンの挑戦は始まっていた。
絶対にあの悔しさを晴らそう――。
そのために、長いV・レギュラーラウンドを戦い抜き、Western Conference2位で臨んだファイナル8。ここまで以上に1戦1戦、1点1点の重みがのしかかる重圧の中、負けられない戦いが始まった。

負けられないファイナル8で流れを引き寄せた最強の“仕事人”

福岡で迎えたファイナル8の初戦、対するは埼玉上尾メディックス。V・レギュラーラウンドでも敗れており、今シーズン初タイトルを狙った昨年末の平成30年度皇后杯準々決勝でも敗れた、いわば因縁の相手でもある。
勝利のために抜け出したい。だが1点1点を慎重に。両チームにとって独特の緊張感が伴うファイナル8の初戦。そんな第1セット、12-14と拮抗した状況で流れを引き寄せたのが、リリーフサーバーとして登場した橘井友香だ。

落ち着いた表情でコートに立ち、狙いを定め、サーブを打つ。低い軌道でスッと落ちるサーブがエースとなり、13-14。続けて橘井のサーブで埼玉上尾のディフェンスを崩し、攻撃の選択肢を絞らせ、切り返したラリーを林琴奈のスパイクで制し14-14、そして相手のスパイクミスを誘い15-14。完璧な仕事を果たした“仕事人”をアップゾーンの選手たちは、一撃必殺の侍を連想させるような、刀を抜く仕草で称え、笑顔で橘井を迎え入れる。
橘井自身は「これまでと同じようにチームのサーブ練習に励むだけで、特別なことをしているわけではない」と言うが、V・レギュラーラウンド終盤から橘井のサーブでブレークを重ねる場面は何度もあり、その流れで一気に勝利を引き寄せた試合は数えきれない。吉原知子監督も「日々の練習から一切妥協せず、必死に、真剣に取り組んでいる姿をいつも見て来たし、橘井自身が『これだけ打って来た』と自信を持って打っているのがわかる」と称える。

たとえ限られた時間でも自分の役割を果たすだけ。そう謙遜しながらも橘井は言う。
「拮抗している時やなかなか抜け出せない時、相手に先に行かれている時は自分の出番だと思っているし、そこで一気に抜け出せるように、自分のサーブで決める、というよりも、チームにいい流れを持ってくるんだ、ということを意識しています。今のチームにとって、この戦い方が確立されていると思うので、そのいい流れを崩さないように。スタメンだけでなく、途中出場の選手も必ずやることはあると思うので、コートに立つ6人、7人だけではなく全員で戦う意識は常に持っています」
橘井のサーブを機に流れをつかんだJTマーヴェラスが3-0で勝利。まさに全員でつかんだ快勝にミドルブロッカーの芥川愛加は「試合に出ている選手も出ていない選手も一緒になって、埼玉上尾に勝ててよかった」と笑みを浮かべ、吉原監督も「大事な初戦。お互い2位通過で、4ポイント同士の絶対に落とせない試合だったので勝ってよかった」と安堵しながらも、「でもまだ始まったばかり。大切なのはここからです」と表情を引き締めた。

ファイナル3初戦を大逆転勝利

短期決戦はV・レギュラーラウンドと異なり、一つのきっかけで思わぬ力を手にすることもあれば、一つの小さな歯車がかみ合わず苦境に立たされることもある。
強さと脆さ。どちらが露呈してもおかしくない中、ここまでチームで磨き、築き上げてきたハードワークで勝利を重ね、JTマーヴェラスはファイナル8を3位で終え、ファイナル進出に向けファイナル3に進んだ。
対するはWestern Conference 4位通過の東レアローズ。4ポイントから始まったJTマーヴェラスに対し、東レは0ポイントからのスタート。一つも負けられない状況から勢いに乗り、一気に駆け上がって来た。
もちろん受ける気などない。だが、破竹の勢いに乗る相手を退けるのは容易ではない。ファイナル3初戦、両サイドからの攻撃を軸に展開する東レに苦しめられたJTマーヴェラスは第1セットを失い、第2セットはジュースの末に取り返すも第3セットを東レに取られ、苦境に立たされた。
第4セットも3-6と劣勢に立たされ、相手のスパイクに対するジャッジに対し、吉原監督はチャレンジを要求。映像確認の短い間に、吉原監督はセッターの田中美咲を呼んだ。

「だんだんトスを上げるのが早くなっていて、思うようにコントロールできていないと感じたので声をかけました。どちらのチームもこの試合はお互いソワソワしたままずっと進んでいて、選手たちも点差があろうとなかろうと慌てていた。そこでたまたまチャレンジがあり、少し時間ができた。そこで一瞬みんなが我に返ったのではないかと思います」
やるべきことは何か。勝つことだ。

冷静さを取り戻した選手たちの目に、再び闘志が宿る。林や小幡真子が相手の強打を何本もレシーブでつなぎ、苦しい場面で田中瑞稀やブランキツァ・ミハイロヴィッチが決める。最終セットも12-14とマッチポイントを握られながら、芥川のブロックと田中(瑞)のスパイクで逆転、最後はミハイロヴィッチのスパイクで17-15と崖っぷちからの大逆転勝利で決勝進出に王手をかけた。
すべてを出し尽くす死闘。試合直後にコートに倒れ込んで喜びを分かち合い、勝利に安堵する。だが、これで終わりではない。主将の小幡は全員を集めて言った。
「まだ勝ちじゃないし、ファイナル進出が決まったわけじゃない。ここからが勝負だから、切り替えて明日、またしっかり戦おう」

切り替えの難しさを思い知らされたゴールデンセット

あと1勝。やるべきことは変わらない。だが、その1勝をつかみ取るのは大きなプレッシャーも伴う。第1セットは先取したが、第2セット以降、田中(美)が「ミスをした後に切り替えられず、自分の中で整理できないまま試合が進んでしまった」と言うように、1本目のパス、2本目のトスの精度にわずかな乱れが生じ、その些細なズレがリズムを崩す。隙を逃がさず一気に攻め込む東レに対し、一度傾いた流れを引き寄せることができぬまま1-3で敗れ、15分というわずかな時間を経て、1セットマッチのゴールデンセットへ突入した。
すべてをこの瞬間にぶつけ、勝利するだけ。限られた時間の中、小幡が「シンプルな声がけをして臨んだ」というゴールデンセット。互いに気迫のこもったプレーの応酬で、白熱した展開が続く。
だが、勝ちたい、絶対にこの1点をつかみたい。そのもがきや焦りがプレーに連動し、パスの返球が低くなり、セッターが十分な状態でトスを上げられず、アタッカーも万全な状況からスパイクを打つことができず、中盤に連続失点で東レにリードを許す。意地と意地、気迫と気迫が最後までぶつかり合い、必死で一球を追いかける。

だが、それでも勝利をつかみ取ることはできなかった。
ゴールデンセットのスコアは20-25。つかみかけていた勝利を手にすることはできず、リベンジを誓ったJTマーヴェラスの戦いは3位で閉幕した。
悔しい。
その言葉しか出てこない。だが、それでもこれからのためには前を向かなければならない。自らに喝を入れるかのごとく、小幡が言った。
「自分たちの力を出し切って負けたか、と言えば決してそうではない。だから悔しいです。でもここまで戦えたこと、昨日の勝利、そしてゴールデンセットを経験できたこともプラスであり、誇りに思う。それだけは、よかったと思えます」
同様に、悔しさを噛みしめながら吉原監督が言った。
「今シーズンは3-0できちっと勝つような試合が少ないシーズンでした。その原因として挙げられるのが、好不調の波があったこと。波に乗るといいけれど、良くない時の落差がありすぎる。その波をなくすためにも基本が大事で、改めて、基本を大切に取り組んでいかなければいけないと感じました」
この悔しさも、すべての経験を力にして這い上がる。もっと、強いチームになるために。

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