JTマーヴェラス

9シーズンぶりの日本一!
全員攻撃、全員バレーの「結束力」で令和初の女王に

2020/02/07COLUMN

全員攻撃、全員バレーの「結束力」で令和初の女王に

歓喜の瞬間が、ついに訪れた。岡山シーガルズとの決勝戦。フルセットの末、最後はリリーフサーバー柴田真果の連続サービスエースで15-7。まさに、劇的な幕切れ。コートの中央に選手たちが走り寄り、抱き合い、涙する。1年前に流したあの悔し涙から、ようやくたどり着いた嬉し涙。吉原知子監督が、三度、胴上げで宙を舞う。
「昨年、そして一昨年、今までの経験が生かされて、本当に心強い選手たちになりました」

決して簡単な道のりではなかった。何度も泣いて、苦しんで、心折れそうになりながらようやく登りつめた頂点。JTマーヴェラスが9シーズンぶり、そして令和初のV.LEAGUE女王になった。

「もう二度とあんな悔しさを味わいたくない」

V・レギュラーラウンドを1位通過。吉原監督が「試合を重ねるごとに成長した」と言うように、シーズンを通して掲げてきた「4枚攻撃」が機能すれば勝てる。少なからぬ自信は選手たちの中に芽生えていた。

だが、いくらV・レギュラーラウンドで勝ち続けてきたからといって、それが盤石ではない怖さも知っている。忘れたくても忘れられない、と選手たちだけでなく吉原監督もそう口を揃える、昨シーズンのファイナル3。あと1勝、あと1セットが取れず、ファイナル進出への道が絶たれ、味わった悔しさは、どれほどの時間が経っても消えることはない。

絶対にあの悔しさを晴らす。チームの先頭に立ち、そして試合時はコート後方から仲間たちを鼓舞し続けてきた主将の小幡真子は事あるごとに、こう言い続けた。
「1点、1本、その重みを嫌というほど思い知らされました。コートの中に若い選手が増えても、同じようにその1点、1本の重みを伝えて、全員でその1本を取りきる。強い覚悟を持たなければ勝てないと全員が理解しなければいけない。もう二度と、あんな悔しさを味わいたくありません」
チャレンジャー精神のもと、結束して戦う。短期決戦のファイナル8、ルーキーセッターの籾井あきは「V・レギュラーラウンドとは違う緊張感があり、チームにも迷惑をかけてしまった」と振り返ったが、トヨタ車体クインシーズに敗れた翌日の岡山戦で勝利を収め、セミファイナル進出。一人ひとりがそれぞれの役割を果たす。強い「チーム」としての結束力が高まりを見せているとこれ以上ない形で感じさせたのが、セミファイナル前日に行われた記者会見で、吉原監督が発した、力強い一言だった。

「期待してください!」どれほど快勝と呼べるような勝利を収めても、これまでは「まだ課題がある」「高められることがある」と常に満足することなく、より高いレベルを求め続けてきた。その指揮官が「期待して」ときっぱり言い切る。そしてその自信は願望ではなく、確信だと示したのが、セミファイナル、ファイナルの2戦だった。

「全員の同じ想い」を体現したリリーフサーバー目黒のバックアタック

V・レギュラーラウンドではフルセットで敗れた埼玉上尾メディックスとのセミファイナル。「この試合を決勝と思って臨んだ」という小幡主将のもと、快勝を収める。ただ勝った、という結果だけではない。シーズンを通して積み上げてきたJTマーヴェラスのバレーボールが存分に発揮された試合だからだ。

象徴的なシーンは2セット目の終盤だ。19-11と8点をリードした場面で、吉原監督はリリーフサーバーの目黒優佳を投入する。期待に応え、目黒のサーブで埼玉上尾の攻撃を絞り、レシーブから切り返したJTマーヴェラスがアンドレア・ドルーズのスパイク得点でブレイク。それでも十分、リリーフサーバーとしての仕事は果たしているのだが、見せ場はそれだけにとどまらない。

サーブを放った後もレシーバーとして後衛に目黒が入り、守備を固める。きっとJTマーヴェラス以外のチームならば仕事は守備に限られるだろう。だが、このチームは違う。たとえリリーフサーバーだろうと、高さで勝るような選手でなかろうとも、打てるなら誰でも攻撃に入る。そして、迷いのない思いきりのいい助走でバックアタックに入り続けた目黒に、セッターの籾井も迷わずトスを上げ、目黒のバックアタックが決まり、23-15。大きな盛り上がりを見せたコートの中央で目黒と抱き合った小幡は「いつも思いきり攻撃に入ってくれるので、隣で見ていても頼もしい」と称え、籾井も「思い切り踏み込む音、トスを呼んでいる声も聞こえたので、“決めてほしい”という気持ちでトスを上げた」と言う。そして、目黒自身も「どんな状況でも全員攻撃を忘れず攻めようと思っていた」と振り返る。

「4人攻撃、全員攻撃のバレーをやりたいとずっと思いながら、できずにいました。背が低い分、運動量も多くなるし、運動量が増えれば精度が落ちるかもしれないけれど、それを乗り切るための体力面も練習で磨いてきたし、とにかく妥協しないこと。昨年、一昨年の悔しさをみんなが1日も忘れることなくやってきたので、全員が同じ想いを持って、自分たちのやりたいバレーボールで戦えている実感があります」

背負い続けた悔しさ「バレーボールを終わりにしないでよかった」

そして迎えたファイナル。勝っても負けても、これが今リーグ最後の一戦。この日のために、どれだけのことを犠牲にして、どれだけの思いや時間を費やしてきたか。それぞれが高まる思いを胸に、コートに立つ。そしてベンチの外からは、ユニフォームは着られずとも、同じ想いで声援を送る選手、スタッフ、仲間がいる。

決勝は、これまでの戦いを象徴するかのごとく、まさに総力戦となった。第1セットはJTマーヴェラスが先取するも、堅守の岡山が2、3セットを連取。初優勝へ向けて勢いづく相手に対し、崖っぷちまで追い込まれる中、チームを救った仕事人がいた。アウトサイドヒッターの橘井友香だ。

V・レギュラーラウンドでは柴田と共に2枚替えで投入され、スピードを生かした攻撃で得点を挙げ、打てば必ず連続得点につなげると言っても過言ではない強力なサーブで幾度となく存在感を発揮してきた。ファイナルでもこれまでと同様に最初は2枚替えでコートに立ったが、第4セットからはヒックマン・ジャスティスに代わって橘井が入った。

V・レギュラーラウンドからファイナル8までは田中瑞稀がその役割を担ってきたが、不慮のアクシデントでファイナル出場が叶わず。「絶対に勝ちたい」と何度も言葉にし、誰よりも強く意気込んできた田中(瑞)の想いを引き継ぐべく、スタート時に田中(瑞)と抱擁してからコートへ向かったヒックマンも奮闘した。しかし岡山のサーブとレシーブにプレッシャーをかけられ、緊張と疲労で身体が悲鳴を上げた。そのヒックマンに代わって送り出されたのが橘井。そして、その期待に応える、いやその期待すらも遥かに上回る活躍を見せた。

切れ味鋭いスパイクに加え、コースやターゲットを的確に狙ったサーブ。「コートでは笑えない」と言う仕事人が、涼しい顔で表情を変えず淡々と自らの責務を果たす。再び攻撃面で本来のリズムを取り戻したJTマーヴェラスが林琴奈のバックアタックで25-14、大差をつけ第4セットを奪取。運命のフルセットを迎えた。

タイムアウトのたび、アップゾーンの選手たちはコートに立つ選手を笑顔で迎え、そして相手ブロックの特徴や、レシーブの空いている位置を端的に伝え、背中を叩き送り出す。コートの外では山内亮S&Cコーチを中心に、応援席を促し、緑色に染まったスタンドから拍手が送られ、右へ、左へ、ウェーブで後押しする。
割れんばかりの声援に背を押され、コートの選手たちは力を振り絞る。絶対に落とさない。絶対に決める。私たちは、絶対に負けない。気迫をそのままボールに重ね、スパイク、サーブ、レシーブ、ブロック、すべてのプレーで岡山を圧倒。
そして、2時間を超える死闘に決着をつけたのが柴田の連続サービスエース。

ようやくたどり着いた日本一。それぞれの想いが溢れ、言葉を失い、互いに抱き合いながら号泣する選手たちの中で、ルーキーセッターを労いながら、大粒の涙を流していたのがセッターの田中美咲だ。
昨シーズンはレギュラーセッターとしてほぼすべての試合でコートに立ち続けた。籾井を軸にした今シーズン、「技術面では何も貢献できなかった」と笑うが、試合前には籾井や柴田と共にセッターミーティングを行い、1人で戦うのではなく全員で戦うのだとルーキーが背負うプレッシャーを皆で分け合ってきた。その献身的な姿に籾井は「支えられた」と言い、吉原監督も「陰の功労者だった」と称え、労う。

1年前、あのファイナル3で、誰より悔しさを味わい、苦しみを抱え、敗れた責任を背負ってきたのが田中(美)だった。
「もうバレーボールはできない、あの試合が終わった時にはそう思っていました。でもこれで納得して終われるのかといったら、やっぱり終われなかった。コートでのプレータイムはほとんどなかったけれど、チームのために、と考えてやってきたということだけは、自信を持って言えます。トモさんが来て1、2年目は本当にきつくて、でもその1、2年目を一緒にやってきたメンバーの頑張りが今の土台になっていると自分は思っているので、そのメンバーも一緒に、JTマーヴェラスの優勝を喜んでくれたら嬉しい。トモさんの胴上げが見られて、あの時終わりにしなくてよかったです」

負け犬から脱却。「愛溢れるチームへ変化した」

9年ぶり。言葉にすれば、短いその年月。振り返れば優勝争いもできず、下位に沈んだ時もあり、V・チャレンジリーグも経験した。5年前の就任時を振り返り、吉原監督が言う。

「最初は負け犬状態、『V.LEAGUEで一番になるよ!』と焚きつけても、『どうせ私たちは』とか『一番になったことがないからわからない』とか、私が言うことに対してもブーブー言っていたんです(笑)。でも少しずつ「やれる」という意識に変わっていった。自然に選手たちから『私たちはやれる』とか『日本一を獲りに行く』という言葉を発するようになりました。一番になりたい、と思っているうちは獲れませんが、今年は本気で狙いに行った。昨年のファイナル3のこれ以上ない悔しさを忘れず、毎日そのことを思い出しながら今日を迎えた。ここぞ、という1本を取ることも含め、成長を感じたシーズンでした」

そして選手として10シーズン目、最も長くJTマーヴェラスに在籍する芥川愛加にとっても、降格やケガ、相次ぐ苦難を乗り越えて味わう日本一の喜びは格別だった。

「入部して10年、最初はスター選手が多くて、キム・ヨンギョンさんがいたり竹下さん(竹下佳江)がいたり、そういう中に入部して、結果が出せずV・チャレンジリーグに落ちて、しかも上がれず。そんな時吉原監督に来ていただいて、最初はこれまでにない練習量や厳しさで毎日がしんどかった。トモさんが言っていることを理解するのにこの年月がかかってしまいましたが、徐々に、年を追うごとに求められていることを理解して、バレーボールだけでなく仲間への思いやりも含めて、愛溢れるチームに変化したのを、この10年で感じています。私もその一員として変化を見て、自分も変化して、吉原監督に出会えて優勝させてもらえたことに感謝しています。そして、トモさんともっといい景色を一緒に見たいと思います」

まさに全員でつかんだ日本一。苦しんで、乗り越えて来た果てにたどり着いた場所。9年ぶりの頂点から見る景色は、最高だった。

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