将棋日本シリーズ JTプロ公式戦/テーブルマークこども大会

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2018年開幕 山崎隆之JT杯覇者に聞く『将棋日本シリーズ』(1/2)

2017年度「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」において、4回目の出場で優勝を果たした山崎隆之JT杯覇者。
佐藤天彦名人や羽生善治棋聖などの強敵を下し挑んだ決勝戦では、持ち前の粘り強い将棋で勝利しました。
そんな山崎JT杯覇者の本シリーズでの思い出や幼少期のエピソードをたっぷり語っていただきました。

今回の優勝はいまだに鮮烈な印象が残っています。

──前回大会では初優勝、おめでとうございました。本シリーズ4回目の出場での初優勝、現在の心境はいかがですか?

いつもであれば、大会で優勝した後は1週間くらい余韻が残って、また新たな対局が始まると気持ちが切り替わるのですが、今回の優勝はいまだに鮮烈な印象が残っています。
またJT杯覇者になったことでプロ棋士やファンの目も変わりましたし、いろんな方に声をかけていただくようになりました。

──ご家族の様子はいかがでしたか?

一回戦から妻が、二回戦からは両親も観戦に訪れていました。
私自身、年齢的にもやや衰えを感じていましたし、4月の時点で成績が芳しくなかったので、2017年度の「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」は出場できないだろうと思っていました。そういうこともあって、4年ぶりに出場が決定したときには両親や妻に「この大会に出場できるのは、もしかしたら今年度が最後になるかもしれない」と告げていました。
そうしたら、まさかの結果で……。本当に喜んでくれました。

──では、改めて2017年度の大会について振り返っていきたいと思います。まず出場が決定したときの心境はいかがでしたか。

前回の4年前は竜王戦のような大きなタイトル戦にも挑戦していたので出場を確信していましたが、その年以外は出場できるかどうかぎりぎりの順位であることが多かったので、若いころはこの大会に出場することを目標の1つとしていました。
ただ30代を迎えてからは、若手の台頭や自身の勝率が1割ほど落ちたこともあって、出場を目標とする以前に上を目指せるかどうかの瀬戸際になっていました。
ここ数年は結婚や母の病気などで個人的に奮起しなければならない状況が続き、その結果が4年ぶりの出場につながりました。
出場が決定した時は夢のようで、トップ棋士の枠に入ることができたのは本当に恵まれているなと思いました。

──それでは大会についてお伺いしたいと思います。まず早指しはいかがですか?

初出場のときは出場できたことに舞い上がっていたうえに、体感的に時間がまったく掴めずペース配分も分かりませんでした。ただその後、決勝に勝ち上がった2010年度のときには、数多く対局してペース配分も分かっていたので、落ち着いて指すことができました。

──大盤解説はいかがですか? 気になる方もいるかと思いますが……。

いえ、あれはいい目安になりますね(笑)。皆さん、丁寧な発言を心掛けていてますよね。
私自身、対局中の前半は「簡単な方針を説明しているな」と思いながら聞いています。ただ、封じ手前には気にならなくなります。最も調子がいいときは秒読みの音しか聞こえません。もし解説の声が聞こえていたら全然集中できていないということなので、そこは自分の中で1つの目安になっています。

──公開対局はいかがですか?

最初の舞台あいさつでは観客席を見ますし、知り合いやいつも応援してくださっている方が来てるなと思ったりしますが、対局に入ると気になりません。
先ほども述べましたが、自分の中で今回が最後の公開対局になるかもしれず、余計なことを考えないで一所懸命指して終わりたいという気持ちが大きかったので、いつも以上に集中できていたのかもしれないですね。

連覇を狙っていきたいと思っています。

──次に今回の対局を振り返りたいと思います。印象に残っている対局についてお願いします。

全対局印象に残っていますが、そのなかでも「メンタル的」には準決勝、「将棋的」には決勝が一番印象に残っていますね。
準決勝の相手は羽生先生(羽生善治棋聖)でしたが、2009年から勝っていなかったうえに、そのときは「大和証券杯ネット将棋・最強戦」というネット対局でしたので、実際に目の前で対局して勝ったのは13年前の24歳のときが最後でした。
そういうわけでプロ生活でもワースト2くらい対戦成績が悪いので、対局前は「ここで羽生先生来たか」と(笑)。ただ家族も来ていましたし、たとえ負けるにしても、熱戦にして負けてやろうといういつもとは違った気持ちで挑んだので、印象に残っています。

──それでは「将棋的」に印象に残っている決勝はいかがでしたか?

決勝までとっておきの作戦を温存していましたが、やはり豊島先生(豊島将之2016年度JT杯覇者)の対策がしっかりしていました(笑)。
勝負手を放って互角までは持ち直すのですが、再び押し戻されて、相手が一手一手読み勝ってきていたので、「これだけ気合いを入れても届かないのか」と思っていました。
途中、豊島先生が「ふー」と息を吐いたときがあって一瞬油断したのかなと思いましたが、期待すると気づかれてしまうし、絶対最善の手を指してくるからと心を引き締めました。
その後も形勢不利な状況が続いていましたが、負けるにしてももう一回勝負手を放ちたいと思い、祈るような気持ちで、考えられる限り一番勝ち目がありそうな勝負手を放ちました。結果的に最後の勝負手としていつもより一歩先に放つことができたので、勝利に結びつくことができたと思います。
実力自体は届かないとずっと思っていたので、この勝利は本当に不思議でしたね。

豊島将之JT杯覇者との「決勝戦 東京大会」では終盤まで豊島JT杯覇者の優勢で対局が進んだが、見事逆転勝利。対局後「本当に最後まで負けだと思っていたのですが、それでも諦めずにチャンスを狙っていったのが、良い結果につながったのだと思います」と感想を述べた。

──その決勝を迎える前は9月末の王位戦予選から棋戦6連勝中と好調でしたが、そのあたりは関係ありましたか?

6連勝が始まる前の順位戦で、勝てると思っていた相手に油断して負けてしまったんですよね。そこで「またクラスが落ちるかもしれない。こんなことをしてはだめだ」と危機感を持つようになりました。それに6連勝時の相手が羽生先生や佐藤先生(佐藤天彦名人)、菅井先生(菅井竜也王位)といった分が悪いというか正直全敗の可能性すらあるメンバーだったので、ちょっとでも気を緩めたらいけないなと思っていました。6月にも同じレベルのメンバーと当たって3連敗していましたし。そういった意味では緊張感をもって勝ち続けられたのは、よかったですし、めぐり合わせなのかなって思います。ただあの時は正直きつ過ぎて、目まいを起こしそうでした(笑)。

──今年度はディフェンディングチャンピオンとして出場されますが、意気込みをお願いします。

賞金ランキングを見ても分かるように、連覇できなければ2019年度は出場できないポジションにいますのでいよいよ最後の出場になるかもしれませんが……。また今大会は格上の棋士たちに加えて、今の将棋界を象徴するような若い棋士たちが出場するということで、彼らが持っている勢いや得意のスピーディーな展開に苦労するかもしれません。ただ、「考えながら戦う」自分の持ち味を生かして戦いたいです。そして連覇を狙っていきたいと思っています。

──1998年にプロデビューされてから、20年が経ちました。先ほどお話にも出ましたが、今の将棋界を象徴するような若い顔ぶれが台頭している中で、ご自身が変わったと思われること、今後の展望をお聞かせください。

10代のころは寝ていても強くなって、20代前半のころは将棋を指せば指すだけ強くなる、弱くなることなんてないと思っていましたが(笑)、今はそうではありません。
ただ年齢を重ねても、強くなるわけではありません。そこが将棋の面白いところです。
今は頭の回転力や記憶力が落ちてきていることははっきりと感じていますが、決して成績が下がっているわけではないので、経験による「勝負の感覚」が大きいなと思います。また、同時にそのあたりがプロとして戦っていく中で成績に左右するのだなとも思い始めています。
あとは「読みの深さ」です。若いころは勝っても負けてもいい、行き当たりばったりで指そうとするある種の勢いがありました。今ではそれもうらやましいですが、その代わりに一手一手を大切に指そうとする気持ちが出てきましたね。

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