将棋日本シリーズ JTプロ公式戦/テーブルマークこども大会

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2019年開幕 渡辺明JT杯覇者に聞く『将棋日本シリーズ』JTプロ公式戦編

2018年度「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」において、4年ぶり2回目の優勝を果たした渡辺明JT杯覇者にインタビューを敢行。
優勝に至るまでの全4局の振り返りや将棋を始めたきっかけ、「テーブルマークこども大会」についてなど、さまざまなことを語っていただきました。
また、将棋ファンの皆さまと、「テーブルマークこども大会」に参加するこどもたちに向けてメッセージ動画もいただきました。ぜひご覧ください。

JTプロ公式戦編 連覇を目指して、自信を持って指したい

今までとは違う気持ちで挑みました

4年ぶり2回目の優勝となりましたが、2018年度大会を振り返っての感想はいかがですか?

「JTプロ公式戦」には10回以上出場しているんですが、シードになる竜王のタイトルを長い期間持っていたので、一回戦から出るのは2018年度大会が初めてでした。単純に優勝までに1局多いので、今までとは違う気持ちで挑みました。
シードならベスト8からなので優勝までが近く感じるんですが、一回戦からだと優勝まで4勝しないといけないので遠いなと……。
ですから、2018年度大会ではあまり上を目指そうという気持ちはなかったんです(笑)。でも決勝に行ったら、このチャンスをものにしたいという気持ちが強くなりました。久しぶりに勝ててうれしかったですね。それと同時に、優勝できてちょっと不思議な感覚もありました。

一回戦から決勝まで各対局を振り返っていただきたいのですが、一回戦が稲葉陽八段、その後、二回戦は山崎隆之「JTプロ公式戦」覇者、準決勝は羽生善治竜王が相手でしたね。

一回戦は、対局的には勢いに任せたような内容になりましたが、多少無理でも攻めの姿勢でいったのが上手くいった一局ですね。
二回戦の山崎さんは近年早指しの棋戦で好成績を収めていて、「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」のディフェンディングチャンピオンでもあったので、大変な相手だと思って臨みました。この将棋は序盤から作戦勝ちの状況になって、中盤以降は丁寧にリードを保とうという意識で指した将棋でしたね。
準決勝の羽生さんとは「JTプロ公式戦」でも何度か対局しているんですが、今回の対局はプロ棋士の中でも一番流行っている角換わりになりました。この将棋は中盤がなくていきなり終盤がくる将棋だったので、そこで形勢が二転三転したんですよね。お互い一手ずつ指す間に形勢が動いて、その中での駆け引きで自分が負けている変化もあったりと、目まぐるしく状況が変化した点が持ち時間が短い将棋ならではというか、どっちに転んでもおかしくない将棋だったと思います。
将棋のつくりとしては、羽生さんの方が勝ちをつかみにくい局面でしたけど、自分のどこが良かったというよりは、多少有利な先手番でもあったので、もともと持っている有利さが少し出たかなという将棋でした。自分のこの手が勝因になったというような将棋ではなかったですね。

そして、決勝の相手は菅井竜也七段。

決勝は序盤で失敗してしまって……。封じ手が開けて駒がぶつかったあたりまではちょっと不利な将棋になってしまったので、後は開き直って勝負、勝負といきました。
将棋は優勢な側が手堅く勝とうとするゲームなので、不利な側は無理を通そうとしていけば、割と通ることもあるというか、優勢な側が手堅くいこうとする面を突いて勝負した結果、逆転できたという内容でしたね。この将棋も最後の最終盤までどうなるか分からない将棋でした。

終盤は勢いよく指されていたのが印象的でした。それは、形勢が良かったわけではなく、悪かったからこそ攻めていっていたということでしょうか。

そうですね。形勢が不利だったので勝負手的にいったというか、優勢な側はリードを守ろうとするので、相手の無理気味な手も、とがめないであえてスルーすることも結構あるんですよね。ですから、途中不利になってからはそのあたりを意識して戦っていましたね。

過去に何度も「JTプロ公式戦」には出場されていますが、「JTプロ公式戦」で一番印象に残っているご自身の対局はどの対局ですか?

やっぱり初優勝の時(2014年度大会)ですかね。決勝の相手は羽生さんだったんですが、その時は矢倉の戦法で、新手を出して勝った将棋でした。その将棋は会心の内容で初優勝を決めたので印象に残っていますね。

2014年度大会 決勝戦の棋譜はこちら

「JTプロ公式戦」は公開対局に隣で大盤解説、さらに早指しと独特のルールの中で行われますが、プロ棋士の方にとって、やりづらさなどはありますか?

普段の対局とあまり変わらないですね。時間も短いですし、朝から夜までやっていたら気になると思いますけど、対局時間は1時間半ぐらいと短いので、周りを気にしている暇がないという感じですね。
大盤解説は影響を受けますね。実は参考にすることもあります(笑)。自分の指した手に対するリアクションは聞いてないのですが、次の手をどう指すかとか、相手の手に対する反応は聞いていますね。
早指しは、得意かどうかは分からないですけど、相手の手がすぐ返ってくるので待たなくていいという意味では嫌いではないですね。

初めて優勝した時は、やっとという思いでした

プロ棋士の方にとって「JTプロ公式戦」ってどういった位置づけの大会になるのでしょうか?

「JTプロ公式戦」はトッププロしか出場できないので、「この大会に出ている棋士はトッププロである」と言えると思うんです。よく僕らはトッププロとかトップ棋士という言葉を使うんですが、それって定義があいまいで、よくアマチュアの方に「トッププロって誰までを含むの?」と聞かれるんですが、そういう時に「『JTプロ公式戦』に出場している棋士がトッププロだよ」という答えは出来るのかなと。この大会はそういう位置づけだと思います。
自分の場合はプロ入り後5年目くらいでタイトルを獲って出られたので、たぶん早い方だと思います。でも初出場の時は感慨深いものがありましたね。
初めて優勝した時は「やっと」という思いでした。初出場から7、8年以上経っていたと思います。それまでは「JTプロ公式戦」の成績があまり良くなくて、シードという立場で出場しているのにこれだけ優勝できないのは問題があると思っていたので、ホッとしたのは覚えています。

2回目の優勝となりましたが、大会を勝ち抜くポイントなどはあるのでしょうか?

持ち時間の短さと封じ手で一回間が入るというところで、ほかに似た棋戦がないですからね。かなり独自色が高い棋戦なので、何回か出場回数を重ねて、自分なりのコツをつかむ必要があると思います。
自分はこの大会での戦い方のコツをなかなかつかめなくて、初出場からしばらくの間、一度も勝つことができませんでした。コツをつかむのが大変な棋戦かなとは思います。全棋戦の中でも持ち時間が一番短いですし、封じ手も入りますからね。
回数を重ねることが自分としては重要になるかなと思うんですが、初出場や2回目で優勝する棋士の方もいますからね。そういう方はあまり持ち時間設定とかを気にしないのかもしれません。なので人それぞれかもしれないですね。

大会からは話が逸れますが、どんどん若手棋士が台頭してきている現在の将棋界についてはどう思われますか?

自分にとっては「羽生世代」がずっと上にいました。初めてタイトル戦に出たのが19歳の時で、それ以来タイトル戦というのは上の世代と戦うものだったんです。でも、今は自分がタイトル保持者の中で最年長になりました。そういう状況は初めてなんです。
2、3年前はタイトル保持者の中で一番若かったんですが、それがあっという間にタイトル保持者の中で最年長になったのは、やっぱり入れ替わりが激しいんだなと思いますね。初めてタイトルを獲る人が最近は多くて、でもその人たちがずっとタイトルを持ち続けるかというとそうではなく、その点でも移り変わりが激しいんだなというのは思いますね。その中で生き残っていくというのが課題です。本当に大変な時代になってきたなと思います。

タイトルを獲るだけではなく、防衛することもこれからはより大変になってくるということですか?

挑戦者は立場としては気楽ですし、負けてもマイナスがないですからね。タイトルを持っている側はそういったプレッシャーとも戦わないといけないので。だから将棋界には昔から「タイトルは奪って守って一人前」という言葉があるんじゃないかと思います。

ディフェンディングチャンピオンとして連覇に挑む今大会への想いは?

前回大会は初めて一回戦から登場して優勝することができました。この優勝でJTプロ公式戦での戦い方がようやく分かってきたような気がします。今大会ではその戦い方を継続して、連覇を目指して自信を持って指したいと思います。

2019年の抱負をお聞かせください。

上位のグループも力が拮抗して大変な状況にはなってきているので、そこで今いるポジションから落ちないようにするのが目標ですね。もちろんタイトル戦には絡める位置にはいたいなと思います。

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渡辺明JT杯覇者より、将棋ファンの皆さまへメッセージをいただきました。
ぜひ、ご覧ください。

  • 本記事は2019年3月時点のインタビューに基づいたものです。
  • インタビュー記事内でのタイトル・段位は対局当時のものです。
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