深津旭弘選手のインタビュー

JTサンダーズのセッター、深津旭弘選手のインタビューです。

負けているときほど真価が問われるのがセッターなんだと思います

家にいる間何をしてたかって、同じ試合ばかり繰り返し見てました

バレーボールは小学校5年生の終わりごろから始めました。最初はスパイカーです。週2回の練習で、特に怒られたりすることもなく、楽しくといった感じでやっていました。当時は、ここまで続けることになるとは思っていなかったですね。どちらかといえば、家にいてゴロゴロしているようなタイプだったので。

でも、バレーボールにはハマりました。ちょうど小学校高学年だった1999年のワールドカップのとき――平野さん(平野信孝さん/元JTサンダーズ)が代表で出ていたときなんですけど、それをもうめちゃめちゃ見ていて。家にいる間何をしてたかって、同じ試合ばかり繰り返し見てましたね。そのあたりからバレーボールにどんどんのめり込んでいきました。

スパイカーに未練は一切なかったですね

中学校でもスパイカーでした。でもだんだん「キツイな」と思うようになったんです。僕、中学校では身長が170cmくらいあって、もっと伸びるかと思ってたんですけど、ぴたっと成長が止まっちゃったんですよ。一度、日の丸をつけて韓国と試合をしたときに、もうスパイカーとしてやっていくのは無理がある、と思いました。ケガも多かったし、肉体的にもしんどくて。世界レベルの試合とか見てると、みんな身長があるじゃないですか。世界だと2m近く、日本でも190cm台とか……。

当時は「自分も同じ舞台に上がりたい」というよりは、単純に見ていて「すごいな」という感じでしたけど。でも上まで――Vリーグを目指すんであれば、ポジションを変えるしかないと思いました。それで高校は、セッターをやらせてくれることを条件に選んだんです。スパイカーに未練は一切なかったですね。バレーボールを続けていくことが一番大事でしたから。思えば中学校のころから強い思いはあったんでしょうね。それこそ“将来の夢”に「バレーボール選手」って書くくらいの勢いで。まあ、本当になれるとは思っていませんでしたけど。

当時の自分は、セッターとしては本当に下手くそだったと思います

それで、高校(星城高校/愛知県豊明市)からセッターもやるようになったんです。高校の先生はセッター出身で、周りにも上手い人がたくさんいたので、そこから教わりながら。まあ、でもツーセッターみたいな形で半分は打ってたんですけどね。後衛ではセッター、前衛ではアタッカーとしてやっていたので、当時もまるっとセッターのマインドではなかったと思います。技術も多分、普通のセッターの半分くらい。一応、選抜にもセッターとして招集されはしましたけど……きつかったですね。普段、1試合を通してゲームメークを考えることがなかったので、試合の流れも分かっていなかったですし、トスの技術自体もまだまだだったし。

当時の自分は、セッターとしては本当に下手くそだったと思います。でも、セッターとして招集してもらえたからこそ、関東の大学から声をかけてもらえたんじゃないかな。多分、アタッカーのままだったら駄目だったと思いますね。

ちゃんと挑戦してみようかな、と思ったんです

進学にあたっていくつかの大学から声はかけていただいたんですが、自分としては関東の強い大学へ行きたかったんですね。そこはもう最初から決めていて。で、春高バレーが終わったくらいに東海大学の先生から声をかけていただいたんです。でも、めっちゃ悩みましたね。選んだ決め手は……血迷ったから(笑)。だって、普通の高校生が東海大学の試合や練習見たら、引きますよ。1つ上の塚さん(塚崎祐平選手)が当時1年生で、自分の中では“すごい選手”って感じだったのに、その塚さんがスタメンどころかベンチにも入れていない。それどころかスタンドの前列で頭に血が上るくらい声出して応援してるんですよ? それを見て「あ、これはヤバい」と(笑)。

まあ血迷ったというのは冗談ですが――ちゃんと挑戦してみようかな、と思ったんです。すごい選手たちと一緒にやってみたい、と。だってみんな、Vリーグに入ってますもん。僕が1年生のときに4年生のレギュラーが5人いて、みんなVリーガーになりました。金子さん(金子隆行選手/サントリーサンバーズ)とか富松さん(富松崇彰選手/東レアローズ)とか、後藤さん(後藤幸樹さん/元JTサンダーズ)もそう。僕が1年生のときの東海大学は、本当に強かったです。

常に自分の中で課題感は抱えていましたね

そして入学したわけですが、いやーきつかったですよ。大学2年生の途中までが一番きつかった。バレーボールはやめたくないんだけど、練習は嫌だったですね、本当に。もう、4限の授業が終わるにつれてどんどん憂鬱になるくらい(笑)。僕、なぜか入学当初にいきなりレギュラーだったんですよ。でも緊張しまくってすぐに駄目になっちゃって。そこから1年間はずっと控えでした。レギュラーに復帰したのは2年生からです。

レギュラーに復帰した年は、リーグ戦とかも全部2位。当時は1つ上に清水さん(清水邦広選手/パナソニックパンサーズ)という大エースがいて、塚さんがいて、下には八子(八子大輔選手)もいたし、ほかにもいい選手がいっぱいいたんです。でも、3年生のインカレでも勝てなくて。あれだけいい選手がいて負けるのって、なんていうか……セッターである自分が選手を生かしきれてないのかな、とか思っちゃうじゃないですか。周りにもそういう目で見られるし。「マジで俺、下手すぎる」ってずっと思ってました。常に自分の中で課題感は抱えていましたね。

もう毎日が勝負ですよ

だから、とにかく一生懸命です。手を抜くことだけはしないようにしよう、と。清水さんのように学生のころから全日本に入ってるような、“大学生なのに日本トップレベル”のすごいスパイカーが周りにいたので、もう毎日が勝負ですよ。向こうもこっちにいろいろ――速いトスとか要求してくれたし、練習でも試合と同じ緊張感が自分の中にありました。それで技術的にも精神的にも少しは成長できたんじゃないかな。

思えば、大学2年生から3年生にかけては「勝たなくちゃ」って、自分を勝手に追い込んでいたんでしょう。多分それって、スポーツとしてはマイナスの考え方なんですよ。「ここで負けたらヤバいな」ってすごい考えてましたね。あのときにちょっと考え方を変えていれば、もう少し楽だったのかもしれない。やっと自信がついたのは大学最後の年ですね。わりとセンター線を使えるようになったりして、初めて「少しはできる位置まで来れたのかな」と思えた気がします。今は――、もちろん考えないわけじゃないけど、過剰には考えないようにしていますね。いい意味で、自分で背負いすぎることはなくなりました。

「すごく声出してるよね」って言われるけど、あれは普通なんです

正直なところ、JTサンダーズから声をかけていただいたときは結構悩みました。チームとしても低迷していた時期だったし。でも先生に「お前がJTサンダーズを変えろ。強くしてこい」って言われて。そこでやる気のスイッチがぽちっと押されちゃった(笑)。それに、ポジション争いが――これまではアタッカーとは常に勝負していましたけど、ほかにライバルがいてポジションを争うことって実はあまりなかったんですよね。簡単に出場できる状況を周りが作ってくれて、自分は生かされてここまできたんです。だからってわけじゃないけど、なんか今が一番面白いですね。今までと違う何かが得られるんじゃないかという風には思います。

僕がチームに求められているもの――。セッターだから、サーブでもブロックでもなく、トスは当たり前に一番手にくるはずなんですよ。でも、それプラスαの部分だと思います。セッターがちゃんとトスを上げたり、ゲームメークするのは当然で、それ以上の精神的な気持ちの強さっていうところが多分必要なんだと思う。そこを先輩にも負けないように、声をかけるとか自分の気持ちを見せるとかっていうのをもっともっとやっていきたいです。

やっぱり、そろそろ何でもいいから結果を残したいですね。スタメンで出場し続けるというのでも何でもいい。まだチームに貢献できていないし、そういう立場にも立てていないので。とにかく試合に出て……もちろん優勝を狙っていく中で、いい働きができるといいな、と思います。そのための準備は常にやっているつもりなので――大丈夫です。

でも、よく「すごく声出してるよね」って言われるけど、あれは普通なんですよ。いつもああいう感じ。八子とかに聞いてみてください。「あの人、超うるさいですよ」って言いますから(笑)。そんなんだから、声を出さないだけで「やる気ないの?」って思われちゃう。だから、今さらできませんとも言えない(笑)。やっぱりそこはクールにはできないですよね。

結局セッターって、何がいいトスか分からないんですよ

僕ねえ、いや、正直トスの技術はあまりないと思うんですよ。いつも思ってますもん、「菅さん(菅直哉コーチ)と井上さん(井上俊輔選手)の方がきれいなトスを上げるな」って。基本的に“ああいう風にはなれない”と考えるタイプなので、目指すセッター像もまったくないですね。結局セッターって、何がいいトスか分からないんですよ。正解もないし。たとえブロックが3枚ついても、決められるトスは自分の中でもいいトスだと思いますし。逆に、ノーマークにしても決まらなければ、それはいいトスじゃないでしょ。それに悪いトスでもスパイカーが決めてくれればいいトスかもしれない。そこが分からないですよね。

でも、やっぱり1試合、1セットで1点を取るためにすごく考えるし、そういうところがセッターの醍醐味なんでしょうね。確かにすごく大変だけど、そこを面白いと思えるようにならないと。あと、スパイカーは目立つ働きをしたら「自分の活躍で勝てた!」みたいに思えるでしょう? でも、裏で「いやいや、実は俺のトスでしょ」ってひそかに思えるところがね(笑)、楽しいっす。僕、思うんですけど、正直言って結局のところはセッターですよ。もちろん全部が全部そうとは言わないけど、流れが悪かったら2本目にボールを触る人が流れを変えればいいし、変えることができると思うんです。だから、チームが負けているときほど真価が問われるのが、セッターなんだと思います。

※本記事は2011年9月時点のインタビューに基づいたものです。

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