スペシャル
SPECIAL

「黒鷲旗」連覇!
JTサンダーズが4回目の優勝を飾る

2017/05/12COLUMN

2017年5月2日(火)から7日(日)まで6日間にわたり熱戦を繰り広げた「第66回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会」(以下:黒鷲旗)にて、JTサンダーズが連覇を達成した。V・チャレンジマッチで2部落ちの危機を経験したチームに、この2カ月間で何か起きたのか。

「今大会一番のチームだと証明できた」(ヴェセリン・ヴコヴィッチ監督)

ドラジェン・ルブリッチのスパイクが相手ブロックを大きくはじいた瞬間、セッターの深津旭弘に越川優が勢いよく駆け寄った。中島健太が、井上航が、山本将平が、そしてアップゾーンにいた選手たちがその周囲を取り囲み、抱き合い、喜びの輪が広がっていく。5月7日、黒鷲旗の男子決勝戦は、JTサンダーズがフルセットの末、パナソニックパンサーズ(以下:パナソニック)を破り2年連続4回目の優勝を飾った。
「3対1で勝てるチャンスは大いにありましたが、パナソニックはやはり一筋縄ではいかない相手でした。しかし、最終セットを取ることができて、自分たちが今大会一番のチームだと証明できました。V・チャレンジマッチで、2部落ちの危機を迎えていたチームが、2カ月で優勝という結果を手にすることができたのは称賛に値する成長です」(ヴコヴィッチ監督)

壮絶な試合だった。第1セット、第2セットを連取したJTサンダーズに対し、パナソニックも引き下がらない。サーブで越川をねらい、得意のバックアタックを封じて第3セットを奪い返す。
「3セット目、流れを失う展開になりましたが、2-0とリードした時点で、選手の心の中に“3-0で終わらせたい”という思いが生まれてしまったのでしょう。浮き足立った様子が見られました。ただし、あの3セット目を除けば、選手たちは1試合を通じて常に落ち着いて戦えていたと思います」(ヴコヴィッチ監督)

再び徹底した「サーブで攻めよう」という方針

3月中旬、V・チャレンジマッチで1部残留を決めたあと、もう一度、自分たちの戦い方を見つめなおした。
準決勝で25.5%、決勝でも17.3%という高いサーブ効果率を残した山本は語る。
「V・チャレンジマッチのあと、選手同士で話をしている中で、“サーブ、弱いよね”“もっとサーブの効果率を上げないと厳しいよね”という結論になりました」
各自が個人練習でサーブの精度を高めた。同時に、サーブ戦略の中で思い切って勝負する選手、確実に相手のコートに入れて次のプレーにつなぐ選手など、役割をより明確にした。
「5セット合計の得点数は114対114。ポイントだけ見ればイーブンです。パナソニックには福澤達哉選手、永野健選手、ミハウ・クビアク選手というレセプションのうまい選手がそろっているので、わたしたちはサーブでリスクを冒すことを選択しました。サーブで攻めることができた上で、なおかつ、わたしたちのレセプション返球率も彼らを上回ることができた。それがこの試合の勝因です」(ヴコヴィッチ監督)
そのレセプションの中心ともなったリベロの井上(航)は若鷲賞(最優秀新人賞)とベストリベロ賞を獲得。大会の2週間前に行われた練習試合の結果を見て、今大会のレギュラーに大抜擢された。
「急展開過ぎてびっくりしています。まさか自分がスタメンで出られるなんて…。試合に出て、しかも優勝できるなんて思ってもいなかったですから。とにかく自分には技術がないので、騒いで、盛り上げて、ムードをよくすることを心掛けていました」
決勝戦でも好レシーブを連発した。
「ディフェンスのときのチームの約束事が基準としてある上で、ブロッカーと話はしました。(2人のブロッカーが間を)閉めているときには“このポジションにいます”とか、逆に“間をあけてください”と言ったこともありました」(井上航)
攻守に渡る活躍を見せた山本も振り返る。
「僕はV・プレミアリーグには出場していないので、リーグが終わって黒鷲旗が始まるまでの1カ月近くの間で、とにかくチームのみんなとしっかりコミュニケーションをとるよう心掛けてきました。戦略面での約束事は、大会前の練習の段階で詰めていて、大会の中で気づいたことをまた話して、修正していった部分も多いです」

「入れ替え戦に行った事実は忘れてはいけない」(深津)

決勝戦で安定した戦いを実現できた要因としてヴコヴィッチ監督は選手の精神的な成長を挙げた。
「いい練習をすることができれば自信がつきます。自信があれば、難しい展開でも落ち着いてアイデアを出すことができます。黒鷲旗は、“自分が今、何をしなければいけないか”というビジョンがはっきりして、目的を持って戦うことができました」
ラリー中でも準備を怠らず、力強いクイックを決めた中島や、相手ブロックを見て、冷静にスパイクを打ち込んだ吉岡光大。ピンチサーバーで登場し、ノータッチエースを奪った安井勇誠など、すべての選手が自分のやるべきことを遂行して手にした勝利だった。
「越川さんが抜けて、ドラジェン(ルブリッチ)もチームを去りますが、この大会で“チームがひとつになれば勝てる”と改めて分かりました。若い選手たちも手応えをつかむことができたんじゃないでしょうか」(深津)
今大会を最後にJTサンダーズを退団し、ビーチバレーボールに転向する越川は言った。
「V・プレミアリーグ、天皇杯となかなか結果が出ない中で、この黒鷲旗でチームとして優勝できたことは素直にうれしいです。個人的にはインドア最後の大会で、優勝することができて幸せな競技人生でした。チームのみんなには感謝の気持ちしかありません。山本と井上という新しい戦力が入ってきて、こうして優勝という結果をもたらしたのは、JTサンダーズにとって来季につながる収穫です。何の悔いもなくチームを去ることができます」

主将として1年間、チームを率いた深津の目はすでに来季を見据えている。
「黒鷲旗では優勝しましたが、入れ替え戦に行ったという事実は絶対に忘れてはいけない。今日、勝ったことを素直に喜んでいいのか、まだ自分の中には葛藤があります。だからこそ来シーズン、もう一度、このチームでV・プレミアリーグを戦って、僕らが本当に強いことを証明したい。そのために、また練習を積んでいきたいです」
JTサンダーズの2016/17年シーズンは、黒鷲旗優勝という最高の形で幕を閉じた。今大会で息吹いた希望の芽を来季へつなぐため、また新しい闘いが始まろうとしている。

JTサンダーズ