「神奈川県公共的施設禁煙条例(仮称)」についてのJTの考えとご提案

神奈川県知事 松沢 成文 殿

たばこの煙は、たばこを吸われない方にとってしばしば不快なものとなります。たばこを吸われる方は、たばこを吸われない方の迷惑とならないよう、十分配慮すべきです。 JTは従来から、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会が望ましいと考え、様々な取り組みをしてまいりました。「神奈川県公共的施設禁煙条例(仮称)」につきましても、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会が実現されるよう、当社の考えを述べさせていただきます。

1.県民の意向に沿い、バランスの取れた条例であること

神奈川県は「受動喫煙に関する県民意識調査」と「受動喫煙に関する施設調査」を実施されました。
県民意識調査の「受動喫煙防止を効果的に進めるために行政が取り組むことが望ましいと思う対策」では、最も多い要望が「駅前などの公共の場所での喫煙所の整備」、2番目が「喫煙者へのマナー向上啓発」、3番目が「施設の管理者等が受動喫煙防止に取り組むよう指導・勧告」、との結果となっています。同様に、施設調査でもこれらの要望は上位を占めております。
JTは、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会の実現を目指し、長年にわたって駅前など公共場所での喫煙所の協働設置、喫煙マナー向上キャンペーンの実施、希望される施設への分煙コンサルティングなどを行ってまいりました。
神奈川県が検討されている「神奈川県公共的施設禁煙条例(仮称)」につきましても、県民意識調査の結果を踏まえ、JTは、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会を目指した条例とされるよう、要望いたします。
また、どのような規制とするかの検討では、県民の意向を具体的に確認の上、その趣旨に沿うこと、さらに既存政策との整合性、合理性が担保されることも必要であると考えます。

2.影響を受ける方に対し、適切に配慮した条例であること

「神奈川県公共的施設禁煙条例(仮称)」は不特定多数が集まる屋内施設を対象としたものと認識しておりますが、その中には官公庁、病院、診療所など、利用者が自分の意思で選ぶことが困難な公共性の高い施設から、飲食店、娯楽施設、宿泊施設など、利用者が多数の同業施設から選ぶことが容易な施設まで含まれます。
これら全ての施設に一律の規制を適用するのは現実的でないことから、JTは施設の状況に応じた柔軟な対応が必要であると考えます。さらに、規制の影響を受ける方に適切に対応するための検討も不可欠であると考えます。
喫煙場所規制が導入された国では、飲食店の売上減少、それに伴う従業員解雇、屋外喫煙場所確保のための設備投資競争と、その競争に敗れた小規模施設の廃業、さらには酒類の売上減少など、規制導入に伴う様々な影響を伝える多数の報道があります。神奈川県の施設調査でも、受動喫煙防止対策を既に済ませた飲食店、娯楽施設などでは、売上が減少したとする施設が、増加したとする施設を大幅に上回っています。さらに、対策の予定がないなどと回答した施設は、スペースや費用がないこと、売上減少の懸念を理由としてあげています。

JTは、たばこの煙を不快と感じる方々が意に反してたばこの煙に曝されることは防止すべきだと考えます。
そのため、「神奈川県公共的施設禁煙条例(仮称)」について、以下の提案をいたします。

1)公共性が高く代替性の低い施設

官公庁、病院、診療所など公共性が高い施設には、利用者が代わりの施設を選ぶことが困難なものがあります。 これらの施設には、利用者が意に反してたばこの煙に曝されないよう、排気設備や分煙器等を備えるよう推奨すべきです。これらの施設の中で適切な喫煙スペースの確保ができない施設については、県が禁煙を推奨するなどの方法を検討すべきと考えます。

2)それ以外の施設

飲食店、宿泊施設、娯楽施設などは、利用者が多数の同業施設から選ぶことができます。これらの施設での喫煙に関する具体的な対応にあたっては、施設管理者(店主)の判断が尊重されるべきです。施設管理者にとって、自己の施設の利用者の要望、スペース、売上への影響などを考慮し、喫煙スペースの設置、時間分煙、喫煙可能、全面禁煙など、様々な対応を選択できることは重要です。
多くの施設では既に取り組みが進んでおりますが、利用者が意に反してたばこの煙に曝される状況を極力防止するために、例えばそれぞれの施設が喫煙可か、分煙か、禁煙かを入口に掲示するよう、県が奨励することは可能であるとJTは考えます。それにより、掲示を見た利用者が、自分に適した施設を選ぶことのできる環境が整うと考えます。

3)JTの協力

JTはこれまで、駅前など公共場所での喫煙所の協働整備、喫煙マナー向上キャンペーン、分煙コンサルティングなど、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会の実現を目指す取り組みを行ってまいりました。
これらの取り組みは、県民意識調査の結果でも県民の強い要望であると確認されたことから、JTは関係団体と協力しながら、今後一層の努力をしてまいります。
さらに、県からの要請があれば、各施設が喫煙に関する対応を入口に掲示するよう、奨励する活動にも協力したいと考えております。
JTのこれらの取り組みは、たばこを吸われる方と吸われない方とが協調して共存できる社会の実現に向け、様々な形で貢献するものと確信しています。

2008年3月6日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 木村 宏