2022/12/12

COLUMN

2022/23シーズンが開幕、
6勝8敗で7位スタートも
「高い目標に向けて
チーム一丸となって戦う」

ロサノ監督が新たに就任した2022/23シーズン。王座奪還に向けての戦いが始まった。

地元広島で新シーズンが開幕

新たなシーズンの幕開けは地元・広島から――。
王座奪還に向け、JTサンダーズ広島の2022/23シーズンはホーム広島からスタートした。

ラウル・ロサノ新監督が指揮を執る初陣は、10月22、23日のVC長野トライデンツとの「2022-23 V.LEAGUE」開幕戦。豊富な経験を持つロサノ監督をもってしても「非常に特別な緊張感がある」と言うように、JTサンダーズ広島同様に新監督が就任したVC長野の勢いに押される場面もあったが、主将の小野寺太志が「広島での開幕なのでいつも以上に気合を入れて臨んだ」と言うように、2戦とも好守で圧倒。以後4連勝を飾る好スタートを切った。

豊富な経験を持つ新監督、外国籍選手と期待のルーキーセッター

昨シーズン課題とされた攻撃力の向上を克服すべく、今シーズンはアメリカ代表のアウトサイドヒッターのアーロン・ラッセルや、中国代表のオポジットでもある江川が加入。両者ともに開幕戦からスタメン出場を果たし、江は「まだミスも多かったが、ホームの声援が力になった」と日本でのデビュー戦に安堵の笑みを浮かべた。ラッセルも「最初の試合はいつも難しいが初めてプレーする国で、日本のバレーは非常に興味深い。私はこのチームメイトを誇りに思うし、これからも楽しみたい」と述べるとともに「セッターとのコミュニケーションも取れているので、コンビネーションの精度を高めていきたい」と江と同じく笑顔を見せた。

豊富な経験を持つ指揮官、外国籍選手に加え、今シーズンの新戦力として開幕戦から存在感を発揮したのがセッターの阿部大樹だ。「ずっと緊張していて食事も喉を通らなかった」と苦笑いを浮かべ、同じ筑波大学の先輩である坂下純也と再びチームメイトとなったことから「純也さんへの安心感、信頼は高いけれど、そこだけに頼ってはいけない」と自らに課し、学生時代とは異なるステージでの活躍を誓う。
「夏場の厳しい練習で積み重ねてきたところを少しずつ出すことができたと思うし、もっとコンビの精度を高めたい。自分一人で全部やらなきゃ、と思うのではなく、同じセッターの先輩方もいるのでとても心強いです」

阿部の言葉通り、ロサノ監督もセッターを阿部だけに固定するのではなく、昨シーズンレギュラーセッターとして活躍した金子聖輝や、選手兼コーチの合田心平と3人のセッターを併用しながら、それぞれの持ち味を発揮する。ロサノ監督も「対戦相手ごとにどのセッターが最も効果的かを見極めながら起用したい」と話すように、その都度ベストな選手を起用する。これはセッターのみならず、すべてのポジションに共通することだ。

実際にラッセルが負傷で欠場を余儀なくされて以後、アウトサイドヒッターには新井雄大、武智洸史、井上慎一朗を起用し、それぞれが持ち味を発揮。高さや堅実なディフェンスからの切り返しなど、誰がどこに入るかによって戦い方も異なる。開幕の4連勝後、連敗も続いたがさまざまな選手の力を発揮し、大事な終盤でどの選択をするのがベストか見極めるためにも、結果以上の収穫が得られているのは間違いない。

230試合出場の安永「もっともっと上に行けるチーム」

何より大きな変化は、選手の身体つきやジャンプ力の高さ。ブロックの移動や、ブロックをしてから攻撃に入るスピードなど、直接数字には直結しないフィジカルコンディションの高さだ。
ロサノ監督が就任後、これまでは主に午後をボール練習としてきたが、朝8時半からボール練習が始まり、午後はトレーニングも行う。選手にとっては非常に過酷な練習を重ねてきたが、その成果は着実に現れ、実際にスパイクの高さが増した選手も少なくない。ラッセルに代わり、パナソニックパンサーズ戦に出場し、攻撃面で高い決定力を残した新井はこう言う。
「監督が代わって練習量自体が増え、フィジカル面で多少の疲労はあります。でも身体の変化も感じていて、毎週計測する最高到達点も常に高いところを維持しているし、自分でも跳べている感じがある。オフェンス面で期待されていると思うので、コンディションを整えながら積極的なプレーをしていきたいです」

変化はオフェンス面だけでなく、ディフェンス面も同様。そう言うのは主将でミドルブロッカーの小野寺だ。
「自分が日本代表で抜けている間もだいぶ練習してきたと聞いていたし、実際合流してからもチーム全員の運動量やボールに対する反応の速さが全然違った。ボールを追いかける粘り強さも含め、全員が向上しているので、ブロックのタッチボールが飛ばされても追いついてくれるし、コート内に収まるので、安心してブロックに跳べる。そこからテンポの速い攻撃ができるのは、シーズンを通して強みになると感じています」

11月26日のウルフドッグス名古屋戦でVリーグ通算230試合出場を達成したミドルブロッカーの安永拓弥も「もっともっと上を目指していけるチームだと思っているので、個々の力だけでなく、チームとして結束させながらもっと上を目指したい」と意欲を見せるように、ベテランもルーキーも問わず、全員が目指すべき目標は同じ。主将の小野寺は言う。
「ここ2シーズン非常にふがいない結果が続き、応援してくださる方々にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でもその分、今シーズンにかける思いは僕も、チーム全員が強く持っているので、練習の成果をしっかり発揮できるように、高い目標に向けてチーム一丸となって最後まで戦います」
復活を誓う長いシーズンが、いよいよ始まった。