例えば、環境中たばこ煙と疾病との関連について多く引用されるものとして、米国環境保護庁(EPA)が1993年に発表した報告書『受動喫煙による呼吸器への健康影響』があります。この報告書は、環境中たばこ煙を原因とする肺がんにより米国で年間3千人の非喫煙者が死亡しているとしています。しかしながら、この報告書は、環境中たばこ煙と肺がんの発生との間に統計的有意性はないとした研究を無視する等、自らの望む結論を導くために恣意的・主観的な手法を用いているとして、同報告書を不服とする訴訟の第一審(ノースカロライナ州連邦地裁)においてその信頼性を否定されています。また、米国議会調査機関(Congressional Research Service)も、同報告書およびそこで使用されたデータについて、「これらの統計的証拠は、受動喫煙が健康に実質的な影響を与えると結論付けるには十分でないと考えられる」としています。

なお、2002年12月に上記訴訟の控訴審において訴えが退けられたところですが、これは当該報告書が法的な規制効果を発生させるような最終的な行政行為ではなく単なる調査報告に過ぎないことから、法廷による審査の対象ではないとする決定であり、報告書の具体的内容の当否を判断したものでは無いと理解しています。

更に、近年発表されたいくつかの大規模な調査研究においても、以下のように環境中たばこ煙と疾病との関連性は確認されていません。

  • WHOの付属研究機関である国際がん研究機関(IARC)は、「受動喫煙は肺がんを引き起こすと結論付けるに足る十分な証拠がある」(2002年)としていますが、同機関による世界最大規模(欧州7ヶ国12センター)の環境中たばこ煙と肺がんに関する疫学調査研究(1998年)では、環境中たばこ煙への曝露と肺がん発生との間に統計的に有意な関連性は認められていません。

  • 米国カリフォルニア州の成人約12万人を1960年から1998年までの長期にわたり追跡調査した研究論文が、2003年5月に英国の医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表されています。この研究では、調査対象のうち喫煙習慣のある配偶者を持つ非喫煙者約3万5千人について、統計的に有意な疾病リスクの増加は認められていません。論文は、「環境中たばこ煙への曝露と虚血性心疾患および肺がんとの関連性は、一般的に考えられているものよりかなり弱いと思われる」と結論付けています。
    なお、この研究は、米国がん協会によって1959年から1972年まで実施された大規模調査のデータを利用し、たばこ付加税を財源としたカリフォルニア大学の「たばこ関連疾病研究プログラム」の支援により1997年まで追跡調査を行っていたものですが、その後の最終段階において、米国のたばこ業界から資金援助を受けています。