RESULT2025年度二回戦第四局
対局結果
二回戦第四局(熊本大会)
97手にて佐藤天彦九段の勝利


開催日:9月13日(土)
会場:グランメッセ熊本 展示ホールC・D
後手伊藤 匠叡王
先手佐藤天彦九段
勝者の佐藤天彦九段は、11月9日(日)に行われる「準決勝第二局」で永瀬拓矢九段と対局!!
- タイトル・段位は対局時点のものです。
講評/勝利棋士コメント
大盤解説者・屋敷九段の講評
対局前の両者のコメントでは、伊藤叡王「熊本は初めて訪れました。ラーメンや馬刺し、からし蓮根と食べ物は有名なものが多くて楽しみです。佐藤九段は居飛車党でしたが最近は振り飛車を使われて、粘り強い棋風とマッチしていい将棋を指されている印象です。こども大会には小学生時代に出場して、強い意気込みで臨んだのが思い出です。『JT杯』は限られた棋士しか出場できないため、強さを感じさせられる将棋を指したい。前回は初戦敗退で内容も悔いがあります。集中していい将棋を指したいです」と意気込みを語った。
一方の佐藤九段「熊本では2019年の『JT杯』と2017年の朝日杯で対局しています。また、阿蘇山を観光したり小学生時代に玉名での将棋合宿に参加したりと、対局以外でも訪れています。伊藤叡王とは初手合いです。最先端の研究家で、すべての戦型で研究がそつなく行き届いているうえに、棋士にしかわからないような工夫や新しい研究の試し方をされている印象です。昔から知識はある程度重要でしたけど、現在はAIを使って取り入れる時代なので精度が非常に高いんですね。そんな研究家の伊藤叡王が相手ですので、そうした精度の面で試金石の対局になると思っています」と抱負を語った。
本棋戦の振り駒は、抽選で選ばれた来場者が行う。振り駒はと金が3枚出て、佐藤九段の先手に決まった。
対局は最近振り飛車を多用する佐藤九段が3手目▲2六歩で居飛車を用いる。そして、伊藤叡王も6手目に△4四角と出て趣向を凝らす。そもそも伊藤叡王の2手目△3四歩が珍しく、双方が裏をかくような出だしだった。駆け引きの末に矢倉戦となり、激しく駒がぶつかった。
59手目▲3七角と方向転換してから佐藤九段の厳しい攻めが続いて優位を広げていく。その後も伊藤叡王に粘る余地を与えずに97手で寄せきった。勝った佐藤九段は準決勝で永瀬九段と対戦する。
大盤解説の屋敷九段の講評は以下の通り。
伊藤叡王が凝った作戦に出ましたね。佐藤九段はじっくりした序盤戦にして、どちらが先攻の権利を得るかという矢倉戦になりました。
実戦は▲4五歩で先手がペースを握りつつあったので、局後に伊藤叡王も述べていましたが序盤の△4四歩が結果的に争点を与えてどうだったか。それが疑問手というのは高度な感想でトップレベルの厳しさです。
▲3七角は手番を渡すので瞬間的に先手が不安かなと思いましたが、後手陣も乱れていて次に▲5四歩が入ると厳しい攻めになります。その辺に佐藤九段のうまさが出ました。調子よく▲6五歩と桂を取って先手の攻めが続きました。
佐藤九段がうまく攻めてしっかり勝ち切った印象です。伊藤叡王としては、ほぼ一方的に攻められ続けて不本意な将棋になったと思います。
勝利棋士・佐藤九段のコメント
伊藤叡王の2手目△3四歩は予想していませんでしたが、3手目は振り飛車ではなく▲2六歩を指そうという気分でした。伊藤叡王の作戦は「菜々河流」といわれるもので、彼のキャリアの中でもこうした変化の仕方は珍しいと思います。どう応じるのが普通なのかわからなくて、仕方なく無難な対応になりました。
若いタイトルホルダーとの対戦で、相居飛車のつばぜり合いに興味があった面もあります。中盤で▲3五歩とした局面はさほど自信があったわけではなくて、わからないまま進めていました。
本譜は△8一飛に▲5四歩から▲6五歩と桂を取って、▲5三歩のくさびも入るため先手が勝ちやすい展開になったと思います。
準決勝で戦う永瀬九段も、タイトル戦に多く出ていて最先端をいく方です。今日の伊藤叡王に対してもですが、どういう戦いができるかは長く続く課題で、準決勝も大きな試練になると思います。
動画
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