あなたにとって「心の豊かさ」ってなんですか? 徹底的に考え抜く、JTグループ社内イベント「Dサミ」 とは⁉

JTグループで、従業員が「心の豊かさ」を探求・発表する社内イベント「Dサミ」を開催。その中での提案は、研究や事業へ発展する可能性を秘め、「心の豊かさ」への想いが形になるきっかけにもなっている。

読了目安時間:約9分

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「心の豊かさ」を対話する ――「Dサミ」、今年も進行中!

 

2024年から始まった、JTグループ内で開催されているイベント「Delightful Pitch Summit」、通称「Dサミ」。これは、従業員それぞれが考える「心の豊かさ」を突き詰めて探求し、その内容を経営陣へプレゼンテーションする……という取り組みです。人が集まるイベントが大好きな私は、今年も「Dサミ」への募集が始まったと聞いてワクワク……!

 

そんな中、前年の参加者がプレゼンした「心の豊かさ」が、プロダクトや催しの形になって進展しつつあるという情報をキャッチ。 早速、取材に向けてリサーチを開始しました!

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「心の豊かさ」を起点に、従業員の探求をサポート

 

JTは「心の豊かさ」実現に向けた研究活動や、創造に向けた取り組みを行っています。その一環として実施しているのが、2024年から始まった「Dサミ」。従業員が個々人の「心の豊かさ」へ徹底的に向き合い、対話することを目的としたイベントです。応募者が考える「心の豊かさ」を実現しうるなら、プロダクトやイベントなどのアイデアでも、研究テーマでも、個人的な想いでも、なんでも応募OK! また、JTグループの従業員なら所属の会社にかかわらず誰でも応募が可能です。おのおのが思う「心の豊かさ」を掘り下げ、数回の選考を経て、最終選考ではJTの経営陣に想いを直接プレゼンします。

 

Dサミの大きな特徴は、単なるビジネスコンペではないこと。大賞受賞者だけでなく、「心の豊かさ」の実現に寄与できそうな想いや、今後「心の豊かさ」を実現するアイデアの種になりそうなテーマに対しては、会社がその実現や探求を支援します。対象となった従業員は、新規事業を創出する部署へのインターン権を得られ、費用面などのサポートも受けられます。

 

昨年応募された、香りやリラクゼーションがテーマの「心の豊かさ」へのアイデアは、具現化に向けて実際に動き出しているのだとか。そこで、これらを提案した、加藤万由(かとう まゆ)さんと栗田実咲さん(くりた みさき)さんにお話を聞きました。

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キーワードは「ありのまま」。二人がたどり着いた「心の豊かさ」

 
ともこ: 2024年度のDサミ最終選考に参加されたお二人ですが、普段はどんなお仕事をしているんですか?
 
加藤さん: 私は、応募当時は経営企画部に所属。資本市場においてJTがどのように評価されているか、適切な評価を受けるためには何が必要か、などについて分析していました。今は「心の豊かさ」を探索・創造する“D-LAB”という部署で、事業創造のプロジェクトに携わりながら、応募時の「心の豊かさ」を具現化することが本業になっています。栗田さんはいかがですか?
 
栗田さん: 私は関西にあるたばこ工場の製造部門で、従業員が安心・安全に働けるような仕組みづくり、いわゆる安全管理の仕事をしています。
 
ともこ: お二人とも、Dサミへの応募時は、最終選考での内容とは異なった業務をしていたんですね! そんなお二人がDサミに応募時に提出したテーマの概要と、応募の経緯を教えていただけますか?
 
加藤さん: 私は、「心の豊かさ」を「ノスタルジー」と定義。その上で、過去の香りをいつでもどこでも保存して再現できる香りディフューザーを提案しました。ディフューザーのアイデアは、入社して2年目の時に先輩と話しながら出てきたものです。以来、社内外問わず、色々な人とどうしたらこれを実現できるか議論してきました。

そんな中でDサミが始まって、自分のこの想いをぶつけてみたい、と思ったという経緯です。もともとJTに入社したのは、たばこを含めた嗜好品に心惹かれ、「世の中をあっと言わせるような、人の心を豊かにする新しい嗜好品をこの手で作りたい」という想いがあったから。Dサミは、この想いの具現化にぴったりのイベントでした。
 
栗田さん: そうなんですね! 私も加藤さんと同じように、「心の豊かさ」を追求したいと思ってJTを選んだんです! よく心の豊かさについて考えたり、意見を言ったりする姿を見て、同僚からも「歩く“心の豊かさ”」なんていじられるくらいで(笑)。「心の豊かさ」の探求は私にとって人生を懸けられるテーマです。Dサミを知って、「やらないわけがない!」と手が勝手に動いていました。

そんな私の応募内容は、加藤さんのようなプロダクトではなく、研究テーマです。私にとって、「心の豊かさ」とは「目の前のことを五感で捉え、“今この瞬間”を味わう」こと。 水や風といった自然の事象を五感で感じるとリラックスし、「今」という瞬間に没頭できるのでは、と仮説を立てたんです。いわゆる瞑想に近い発想なのですが、瞑想にはトレーニングが必要です。でも、誰もが無意識に五感で感じられるようになればもっと心豊かに生きられるのでは、と仮説を検証するための研究テーマとして提出しました。現在は、この内容をさらに深めて、具体的なイベントを考案し、実行したところです。
 
ともこ: どちらもユニークですね! このようにお二人それぞれの「心の豊かさ」を定義するまで、どんな背景があったのでしょうか?
 
加藤さん: 背景には、自分の原体験があります。私は子どもの頃、アメリカのサンディエゴの海辺近くに9年ほど暮らしていて、そこでの生活は友達にも囲まれてとても幸せでした。ところが日本に帰国してからは、学校ではなかなかなじめず、学業の成績も伸び悩み、親からも認めてもらえなくて……「どこに自分の居場所があるのか」「何のために頑張ればいいのか分からない」そんな苦しい時期が続いていたのです。

そんな中、久しぶりにアメリカに行き、サンディエゴの海の“あの潮の香り”が鼻に通った瞬間、自然と涙が溢れてきました。どこかしら、その香りが私を抱きしめ、慰めてくれて、「私の居場所・原点はここにあったんだ。」と胸がいっぱいになったんです。前を向くにも向けない時、自分を見失ってしまいそうな時、過去の記憶と再びつながることで、もう一度歩き出すきっかけをつくりたい──そのように考え、思い出の香りを保存・再現できるディフューザーを提案しました。
 
栗田さん: 私の場合は、中学時代に不登校になったことが原点でした。当時は温泉で有名な大分に住んでいたのですが、ある日、学校に行かずに足湯に漬かっていたんです。すると温かな気持ちになって、「はあ~気持ちいい」という脱力感とともに、ふっと「なんだか私は大丈夫かも」という根拠のない想いが湧いてきました。それまでは「学校に行かないといけない」という不安で頭でっかちになっていたのが、その瞬間、先の不安や過去の後悔が消えたんです。自信のなかった自分にとって、当時の感覚は唯一といっていいほど信用できるものでした。その感覚を覚え力が湧いてきたことで、不思議と人生も好転していきました。

後から振り返れば、リラックスして五感が優位になったことで、「今」を味わい、目の前のことを冷静に捉えられるようになったのかもしれません。でも、そんな体験がきっかけとなって、私なりの「心の豊かさ」が定義され、Dサミの提案へ行き着きました。
 
加藤さん: 栗田さんの着想の背景にはとても共感できます。二人とも、つらい体験が「心の豊かさ」を考える原点になっていますね。
 
ともこ: つらい体験を乗り越え、内省することで、それぞれの「心の豊かさ」を定義したんですね。Dサミの応募や選考にあたってはどんなことをされたのでしょうか。
 
加藤さん: 選考過程を通して、同じ部署の上司、同期・同僚、会社関係なく友達やパートナーに協力してもらってディスカッションし、具体性を高めていきました。さらに、漠然とした提案では説得力に欠けると思い、香りの保存・再現に関する技術をもった会社などを訪ねて協業先となりうる仲間を作りました。社内でも研究開発の部署など、香りにつながりがある人に個人的にヒアリングをしましたね。
 
栗田さん: すごい行動力ですね! 私の場合は、自分にとっての「心の豊かさ」って何だろう? と探る時間が一番長かったと思います。自分の歴史を書き出してみて、どこで心が動いたかを振り返り、その時の場所に行ってみたりもしました。加えて、周りの人の困り事をひたすら聞いてみたことも。その結果、頭を空にしてぼーっとできていない人が意外と多いということにも気付かされました。そんな風にさまざまな話を聞きながら、自分にとっての「心の豊かさ」の深掘りを進めていきました。
前年の「Dサミ」最終選考での加藤さん(左)と栗田さん(右)
 
ともこ: きっかけは共通項がありましたが、実際の経緯ではアクティブな加藤さんと内省的な栗田さんで対称的! 定義した「心の豊かさ」から、「その豊かさを実現するためには?」と問いを立てることで、だんだんとアイデアを形にしていったのですね。Dサミでの提案内容の、現在の進行状況を詳しく教えてください。
 
加藤さん: コンセプトである「ノスタルジー」に立ち返っています。さまざまなヒアリングを経て、「ノスタルジー」という概念をさらに広げられる可能性を感じ、研究を進めているところです。また、研究を事業化するため、ディフューザー以外にも視野を広げて、展開を模索中。その過程で、価値観の異なる他者と心の豊かさについて議論できるのは良い刺激になっていますし、自分の価値観や哲学がよりはっきりとしてきていますね。
 
栗田さん: 私の研究テーマである「五感を優位にした無意識での瞑想」は、休憩とも親和性が高いもの。それもあって、去年のDサミが終わった後、新規事業を創造するJTグループのコーポレートR&D組織 “ D-LAB ” から「私たちと一緒に研究テーマを具現化してみませんか?」とお声がけいただきました。そこでは、“より豊かな休憩”をテーマに「呼吸する休憩所」(※)という取り組みを展開しているんです。

お話を受けて、「呼吸する休憩所」とサウンドバスという取り組みをコラボするイベントを企画・実行しました。サウンドバスとは、天然の水晶でできたクリスタルボウルと呼ばれる打楽器などの演奏を、全身で没入して聞く体験のこと。これにより、リラクゼーションや癒し効果を図ります。

イベント当日は、子どもから大人まで、本当に幅広い世代の方々にご参加いただきました。会場で、深い呼吸を誘うクッション「fufuly」をそっと抱きながら、サウンドバスの音の世界に身を委ねる……言葉ではない、無意識の“感覚”として、心がふっと休まる時間を味わっていただくことが、この企画の狙いでした。終了後のアンケートでは、ほとんどの方が「頭で考えるのではなく、五感で感じていた」と回答。音と呼吸に包まれることで、“意識しない深呼吸”が自然に生まれていたことに、私たち自身も驚かされました。

目の前にあるものを、真っすぐ五感で受けとめ、“今この瞬間”を味わう――そんな「心の豊かさ」を、ほんの少しでも届けられたのではないかと、静かに、でも確かに、小さな手ごたえを感じています。

※呼吸する休憩所:ゆっくりと深い呼吸をすることがより良い休憩につながる、というコンセプトの下で展開されている休憩所。抱きかかえることで深い呼吸を促すクッション「fufuly」や、カフェイン・GABAを含む蒸気を吸引するデバイス「ston s」が設置されている

 
ともこ: Dサミをきっかけに深掘りした「心の豊かさ」が、実際のイベントになったんですね! 最後に、お二人にとっての心の豊かさとは何でしょうか?
 
加藤さん: ひとことで言えば「自己受容」。今の社会は、よりよいパフォーマンスや意思決定をし続けること、いわば最適化が常に求められているのを感じます。個人的にも、生きづらさを感じる瞬間が多くあります。そういう中で、自分らしさを取り戻して回復し、その上で良いも悪いも含めたありのままの自分を受け入れるのが、私の考える「自己受容」です。

自己受容の過程では、自分の弱さを見つめることも必要で、痛みもあります。でも、自分の考え方を捉え直していく中で、失敗してもいい、あの時の苦しい気持ちには意味があった、などと考えられることはとても豊かなことですし、これからの時代の強さになっていくと思っています。
 
栗田さん: 「ありのまま」は、すごく共感できますね。私は、心の豊かさ=五感が優位な状態だと思っていますが、それを端的に伝えるために「裸足の感覚」と伝えます。オフィスでも実際に裸足になって怒られたりもしていますが(笑)、裸足になって五感を優位にし、安心してありのままでいられる状態が私にとって100%心豊かな状態なんです。
 
加藤さん: 「裸足」、いいですね! 日常の中でも、裸足になることで五感に立ち返って、自分を取り戻せる。私の考える「自己受容」にもつながる糸口になりそうです。Dサミでの提案内容以外にも、栗田さんと何か協業できたら、新しい形の心の豊かさが実現できそうですね。
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どんな「心の豊かさ」が飛び出すか、今年の「Dサミ」にも期待

 

お二人の話を聞いていて何より印象的だったのは、「心の豊かさ」について話す時の楽しそうな表情! つらい原体験を糧にしながら、自身にとっての「心の豊かさ」に向かって真っすぐに進む姿勢は、頼もしく見えました。また、お二人の取り組みが広く展開されていけば、まだ見ぬ新しい「心の豊かさ」を、さまざまな人に届けられそうです。

「心の豊かさ」は人それぞれ。だからこそ、JTグループ従業員がそれぞれの考える“豊かさ” に向き合い、それに基づいたアイデアや想いが飛び出してくるDサミに、私は心引かれるのかもしれません。今年のDサミは、どんな形の「心の豊かさ」が登場するのでしょう? 期待してしまいます!

profile

担当社員の
ひとことプロフィール

(左)加藤万由さん。JT D-LAB。最近、心の豊かさを感じた瞬間は、サンディエゴ時代の大親友と17年ぶりに再会したこと。時を経ても、国や言語が違っても通じ合えるという、幸せを味わえたそう。

(右)栗田実咲さん。JT関西工場。最近、心の豊かさを感じた瞬間は、同僚夫婦と仙台のサウナに行ったこと。森の中のハンモックで、頭上に木の葉が揺れるのを見ながら、自分も一緒に揺れて、パワーチャージができたとのこと。

※プロフィール掲載内容は2025年7月の取材当時のものです

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