まず、お話を聞いたのは、マーケティング戦略部でコラボ商品を手がける戸田菜々美(とだ ななみ)さん。
ゆみ:
今回の人気店とのコラボ商品、さっそく食べました! テーブルマークはこれまでにもコラボ商品を販売していますよね?
戸田さん:
はい。テーブルマークがコラボ商品に力を入れるようになったきっかけは、コロナ禍でした。「それまで外食でラーメンを食べていたけれど、お店に行くのが難しくなった」というお客様の声から、自宅で店舗の味を楽しめないか、と考えました。
ゆみ:
コラボするお店はどうやって決めているんですか?
戸田さん:
お客様のニーズを踏まえつつ、実際にお店に足を運んで純粋に「おいしい!」と思ったお店から選んでいます。私はそれほど熱狂的なラーメン好きではなかったのですが、商品開発担当になってからはリサーチのために毎日ラーメンを食べています。最近はガッツリとしたスタミナ系ラーメンのニーズが高いので、今回は東の元祖ニュータンタンメン本舗、西の天理スタミナラーメン、というラインアップですが、もちろんどちらも私自身がおいしいと感じてコラボを打診しました。
ゆみ:
重視するのは味だけでしょうか? 交渉しやすそう……とか?
戸田さん:
それはないですね(笑)。いつも交渉は真正面から行っています。︎テーブルマークの製麺技術の高さは、食べてもらえば絶対に納得してもらえますから。麺にこだわりがある分、その取り扱い量も他社と比べて圧倒的に多いです。コラボ商品で使用する麺も、小麦粉の種類や、麺の切り方を工夫し、コラボ商品一つ一つで専用のものをつくっていて、麺だけでなく、スープもお店と遜色ないレベルに仕上げていると自負しています。味以外に重視するものといえば、お店の雰囲気。お客さんの表情をチェックして、地域に愛されているかどうかを探っています。その地域で愛されているお店の味を全国に広める──それがコラボの意義でもあります。
ゆみ:
コラボというからには、味の再現性がポイントになると思います。
戸田さん:
それが楽しくもあり大変でもあり……。その分、監修先のお店のファンの方や、お店には行けないけれど食べたかったお客様から「おいしかった!」というお声をいただくと、うれしいですね。
ゆみ:
それぞれの商品の味のこだわりなども聞かせてください! まずは「元祖ニュータンタンメン本舗監修 タンタンメン」から教えてください。
戸田さん:
はい。ここからは、開発担当の筑紫美帆(ちくし みほ)さんと一緒にお答えできればと思います。
筑紫さん:
開発担当として、味づくりと商品設計を担当しています。
ゆみ:
味づくりはなんとなく分かるのですが、商品設計って……?
筑紫さん:
量産が必要な家庭用冷凍商品にとって欠かせない役割で、試作した味を工場でも再現するための製造用レシピを考えています。
戸田さん:元祖ニュータンタンメン本舗のタンタンメンは、ベースとなる深い味わいに加えてニンニク、唐辛子とパンチのある素材が絶妙なバランスで調和しています。筑紫さんには何度も何度も試作品をつくってもらいました。
筑紫さん:
麺とスープをそれぞれ作っても、実際に組み合わせたときの味が最終的な完成形。何通りも麺・スープを掛け合わせて、20回ほど試作しました。今回の商品はガラスープにもこだわっており、豚のガラでも清湯系なのか白湯系なのかで味の出方が変わります。また、唐辛子はお店と同じ産地のものを使うなど、材料を吟味しています。パンチある味わいと甘みのバランスも難しく、試作品をお店に持って行って、お店の方の意見を聞きながら詰めていきました。
ゆみ:
……そこまで試作と試食を繰り返しているとは思いませんでした。
戸田さん:
加えて冷凍食品は凍結を経て届けられるものですから、それも考慮しないといけません。何度もつくり直してもらって、私は筑紫さんに嫌われたかもしれません(笑)。
筑紫さん:
コラボ商品は正解の味がある分、難しさがありますね。こだわって仕上げた商品の味を、実店舗の味が好きな方々はもちろん、近くに店舗がなくなかなか行きづらいというお客様にも、楽しんでもらいたいです。
戸田さん:
天理スタミナラーメンの開発は、坂本誠司(さかもと せいじ)さんにご担当いただきました。
ゆみ:
天理スタミナラーメンの店舗では、具材を炒めてそこにスープを入れている……とお聞きしました。
坂本さん:
その通りです。ですので、今回のコラボ商品の鍋調理は、具材と濃縮スープを一緒に調理する方法を採用しています。
戸田さん:
天理スタミナラーメンは「野菜の旨味とスープ味わいが一体」になっているのがおいしいですよね。そのおいしさを再現するのを目指しました。
坂本さん:
監修先からテーブルマークにはない知見を学ぶことが多いのはコラボ商品開発の特長でもあり、我々が得られるメリットともいえますね。
ゆみ:
実際の方法を取り入れることで、味の再現性も高まるんですね。難しかった点は何でしょうか?
坂本さん:
冷凍食品はコスト面での制約もあり、監修店とまったく同じ原料を使うことはできません。監修店に足を運び、ヒアリングを重ね、「ここだけは外してほしくない1番目のこだわり」を最優先とし、可能な限り「2番目のこだわり」「3番目のこだわり」も再現していきます。今回は、麺の細さにもこだわっているお店でしたので、0.1mmレベルで追求しました。
ゆみ:
さすが麺に自信があるテーブルマークですね。味のポイントは何でしょうか?
戸田さん:
この商品では単に辛いだけではない、豆板醤やだしのコクが再現できていると思います。
坂本さん:
そうですね、具材を炒めたうまみにだしのコクが加わって、幅広い層に受け入れられる味に仕上がりました。