【探索】香りとテクノロジーの掛け合わせは、人や社会に何をもたらすのか「KAORIUM」を通じて探る、新たな関係性から生まれる体験と価値

2026/10/19

KAORIUM

嗅覚のデジタライゼーションによって新たな顧客体験を提案するSCENTMATIC株式会社は、2019年から、香りと言葉を相互に変換するAIシステム「KAORIUM(カオリウム)」を展開しています。AI技術によって目に見えない香りを言葉に置き換え、これまで感覚だけで捉えていたものを、言葉を手がかりに選べるようにすることで、新たな体験や接点を生み出してきました。

KAORIUMを開発する際に着目したのは、「ゼロからプラスへ」という発想です。不便や面倒といったネガティブをなくすことだけではなく、「なくてもいいけれど、あると心が少し豊かになる」ものをつくること。その可能性を考えるなかで、テーマとして見出したのが「香り」でした。例えば、フレグランスは、生活に必ずしも必要なものではありません。それでも、好きな香りを身につけることでリラックスできたり、自分らしさを表現できたりします。

こうした香りが持つ力にテクノロジーを掛け合わせて見えない感覚を言葉にし、言葉を手がかりに再び香りを捉えることで、これまでとは異なる香りの楽しみ方や捉え方が生まれます。そのアプローチを形にしたのがKAORIUMです。

KAORIUMを通じて見えてきたのは、香りと言葉を行き来することで、自分の感覚に気づき、他者との違いを知り、社会との新たな関わりにつながる可能性でした。

■ 香りと言葉を変換するAIシステム「KAORIUM」とは

  • ・香りと言葉を相互に変換するAIシステム。最先端のテクノロジーによって、曖昧で捉えにくい香りの印象を言葉で可視化し、ある言葉に紐づく香りを導き出すことを可能にする。
  • ・言葉を意識しながら香りを深く味わう体験は私たちのまだ見ぬ感性への気付きをもたらす。
  • ・香りと言葉をつなぐ今までにない体験が生み出す価値は、フレグランスの世界にとどまらず、感性教育、飲食体験、購買体験など様々な分野に新しいビジネスチャンスを生み出すものとして、その可能性に大きな期待が寄せられている。

香りと言葉から、人と世界との新たなつながりを探る

「まだ見ぬ“心の豊かさ”」の創造を目指すD-LABでは、多様なテーマを通じて未来の価値創造に向けた探索を行っています。本記事ではその一つとして、香りと言葉を行き来することが、人の感覚や社会との関わり方にどのような変化や広がりをもたらすのかに着目します。香りと言葉を組み合わせることで広がってきたKAORIUMのさまざまな活用を通じて、香りが生み出す新たな体験や価値の可能性を探ります。

前提|時代とともに変化する、香りの役割

香りは、科学的には嗅覚を刺激するものであり、目に見えず、形もありません。それでも人は、古くから香りをさまざまな場面で利用してきました。食べられるものや危険なものを判断する手がかりとして、宗教や儀式で特別な役割を持つものとして、時代によっては身分や社会的な立場、文化や習慣を表すものにもなりました。そして最近では、気分やシーンに合わせて香りを使い分ける「フレグランス・ワードローブ」という考え方も広がっています。香りは、特別なものから日常のものへ。そして、一つの正解を選ぶものから、そのときの気分やなりたい自分に合わせて選ぶものへと、香りとの関わり方も広がっています。

香りの価値は、その人の感じ方や使われる場面によって変わります。それは、香りを言葉にしたときにも同じことが言えます。同じ香りでも、そこから思い浮かべる言葉や情景は人によって異なり、その言葉を手がかりにすることで、香りの捉え方も広がっていきます。だからこそ、KAORIUMの可能性を一つの答えに閉じるのではなく、香りと言葉を通じて何が生まれるのかを探っていきます。その先に見えてきたのが、自分、他者、社会とのつながりです。

1|自分とつながる――自分の感覚に気づく

香りについて「なんとなく好き」と感じていても、その理由を言葉にするのは簡単ではありません。KAORIUMでは、香りを表現するさまざまな言葉を手がかりに、自分の感覚を少しずつひらいていきます。「甘い」「爽やか」といった特徴だけでなく、「落ち着く」「懐かしい」「元気になれる」など、その香りから受ける印象や、そのときの気分にも目を向けます。こうして香りと言葉を行き来することで、「自分は何が好きなのか」「今、どんな状態なのか」といった、自分自身への理解が深まっていきます。香りを通じて自分の感覚に気づき、日常の中で自分らしく選択する。その積み重ねが、暮らしの中の豊かさにつながる可能性があります。

2|他者とつながる――感じ方の違いから広がる世界

香りは、同じものを嗅いでも、感じ方は人によって異なります。こうした感性の違いに目を向ける機会を、教育の場で形にしたのが「KAORIUM 香りの授業」です。授業では、果物や花、木など、地域の特産品の香りを題材に、自由な想像を広げ、自分の感じたことを言葉や物語にして発表します。互いの表現に触れることで、自分の感性を大切にしながら、自分とは異なるものの見方にも気づくことができます。さらに、地域の特産品を題材にすることで、普段は意識していなかった地域の魅力を、香りという新たな切り口から知るきっかけにもなります。そこには、正解や効率だけでは測れない、感性をひらき、世界の見え方を広げていく学びがあります。

3|社会とつながる――香りから広がる新たな関係

KAORIUMは、フレグランスをはじめとした商品・サービス、教育、スポーツ、アート、ケアなど、さまざまな領域へと広がっています。たとえば、スポーツでは、KAORIUMを活用し、アスリートが自宅やオフの時間にリラックスできる、個々にパーソナライズされた香りの開発に挑戦しています。ケアでは、好きな香りから想起される言葉を手がかりに、子どもの感情を捉える新たなアプローチの可能性を探っています。KAORIUMは、さまざまな領域に香りと言葉の接点を広げることで、新たな体験や価値を生み出し、人や社会とのつながりを広げています。

香りと言葉の関係性から見てきたこと

KAORIUMを通じて香りと言葉の関係を見つめる中で、香りは単に感覚で楽しむものに限らないことが見えてきました。

香りという目に見えない感覚を言葉にすることで、自分では気づいていなかった感覚を捉えたり、異なる感じ方や価値観に触れたり、これまでとは異なる形でさまざまな領域とつながります。そこには、香りと言葉を組み合わせることで広がる、新たな体験や価値の可能性があります。

そして、AIをはじめとするテクノロジーが加速度的に進化する今、これまで捉えることが難しかった人の感覚や感性を、より深く理解し、新たな形で社会につなげていく可能性も広がっています。香りと言葉の関係を起点に、テクノロジーと感性を掛け合わせることで、これからどのような体験や価値を生み出せるのか。その可能性は、まだ広がり続けています。

D-LABや SCENTMATIC では今後も、進化を続けるテクノロジーと感性の掛け合わせから、これまでにない体験や価値がどのように生まれるのかを探りながら、香りと言葉を通じて広がる「心の豊かさ」の可能性を探っていきます。

■ SCENTMATIC(セントマティック)が拓く、香りの新たなる価値

香りを言語化するAI KAORIUMで、新しい「香りの体験」を創る企業です。私たちが提供する「嗅覚のデジタライゼーション」は、人の感性に働きかけ、様々なビジネスシーンにおいて活用されています。KAORIUMは世界的なデザイン賞『A’ Design Award』でシルバー賞を受賞しました。また、東京大学大学院と「言葉による香りの感じ方への影響」について共同研究も行っています。

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■ D-LAB(ディーラボ)とは

2020年に発足したJTグループのコーポレートR&D組織です。「D-LAB」は「Delightful Moment Laboratory」の略称で、JTグループのPurposeである「心の豊かさを、もっと。」の実現に向け、長期的な視点でJTグループのまだ見ぬ「心の豊かさ」の研究・探索・創造に取り組んでいます。

活動の起点にあるのは、「心の豊かさとは何か」という問いであり、本質的な人間らしさに向き合いながら、「心の豊かさ」を実現する新たな価値を創り、かたちにし、社会へ届けていきます。その実現に向けて、大企業やスタートアップ、大学・研究機関、クリエイターなど多様なパートナーと協働しています。100件を超えるプロジェクトでは、日々、研究・探索・検証を重ねながら、人々が潜在的に求めている豊かさを実現する方法を探り、新たな価値の発見や事業・サービスの創造につなげています。また、社会や人々を取り巻く環境が変化し続ける中で、「心の豊かさ」への理解も常に問い直しながら活動しています。

D-LABは、JTグループが大切にしてきた「心の豊かさ」 という価値を数十年後の未来においても人々に届け続けるために、今後も多様な活動を行ってまいります。