財務方針

財務方針:「堅牢性」と「柔軟性」

当社は、財務面において、「堅牢性」と「柔軟性」とを併せ持つことが重要と考えています。
堅牢性とは、経済危機などの大規模なリスクが発現した際にも事業を継続していくことのできる力、柔軟性とは、魅力的な投資機会に対して機動的に対応ができる力を指します。事業投資を通じて持続的な利益成長を実現していくための財務基盤として、堅牢性と柔軟性、この2つを担保する、という財務方針を定めています。

この背景となる資金調達、資本・負債の考え方についてご説明いたします。
JTの設立根拠法は一般の会社法ではなく、「日本たばこ産業株式会社法」であり、日本政府は、常時、JT株式の1/3を超える株式を保有することが定められています。エクイティファイナンスとして新株の発行を伴う調達を行う場合、法律に則れば、新規発行額の1/3を政府に引き受けてもらう必要があるため、資金調達の機動性の観点を踏まえれば、当社においてはデットファイナンスで資金調達をすることが基本となります。

資本の部に一定の制約がある中で、負債とアセットのバランスをマネージ可能な状態にしておくことは極めて重要な課題であると考えています。負債を適切な水準にコントロールしつつ、アセットをいかに強化していくかがポイントと認識しており、その基盤となるものがキャッシュ・フローです。キャッシュフローマネジメントにあたっては、事業のトップライン成長を通じた安定的なキャッシュの創出を最重視し、また財務面では為替影響の緩和、運転資本の最適化に向けた取り組みを行っています。たばこ市場において、とりわけ新興国においては、各市場の経済成長に即した形で、現地通貨ベースでの中長期にわたる事業価値向上を図っております。増税に加えインフレも勘案したプライシング、長期的な視点に立った投資戦略を背景としたブランドポートフォリオの充実によるシェアの伸長により、トップライン成長を通じたキャッシュ創出を追求しております。キャッシュ・フロー創出能力を高めることで、デットキャパシティ(借入余力)を維持向上させるとともにアセットの質を高め、資金を最も効率の良い形で投資に回していくことを目指しています。なお、負債の調達方法に関しては、資金調達環境を踏まえ、劣後ローンの締結や子会社において劣後債の発行を行うことにより、財務健全性及び資本効率性の向上を両立する取り組みも行っています。

現状のD/Eレシオは0.30倍(2023年度12月末時点)、長期債務格付はA+(S&P)、A2(ムーディーズ)、AA(R&I)です。当社では、定期的に格付のシミュレーションを社内で実施しており、今後の事業上必要となるキャッシュを見積もり、追加的な負債と得られるアセットによるキャッシュを精査した上で、格付への影響も考慮し、株主還元・事業投資機会を財務的な観点で検討しています。