規制・重要な法令

たばこ事業

たばこ規制環境は、2005年2月に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」を契機に、年々厳しくなる傾向にあります。

当該条約は、喫煙の広がりの継続的かつ実質的な抑制を目的としており、たばこ需要減少のための価格および課税措置についての条項、たばこ需要減少のための非価格措置についての条項(受動喫煙からの保護、たばこ製品の含有物・排出物に関する規制、たばこ製品についての情報の開示に関する規制、たばこ製品の包装および表示に関する規制、たばこの広告、販売促進およびスポンサーシップに関する規制等)、たばこの供給減少に関する措置についての条項(たばこ製品の不法取引を防止するための措置、たばこ製品の未成年者への販売を防止するための措置等)等を規定しています(日本政府は2004年6月に当該条約を受諾しています)。

なお、当該条約においては、各締約国の一般的義務として、たばこ規制戦略、計画およびプログラムの策定、実施、定期的な更新、および検討を行うことが定められていますが、各締約国における具体的規制の内容・範囲・方法等は各国に委ねられています。当該条約発効後、締約国会議(COP)が定期的に開催され、各条項に係るガイドラインや議定書(FCTCとは別に批准・受諾等を要する)を策定する等、締約国間での議論が継続しています。

各国の具体的規制として、JTグループの主要市場であるロシアにおいては、2013年2月にたばこ製品の店頭陳列規制、販売場所規制、広告・販売促進・スポンサーシップの禁止、最低小売価格の設定、公共の場所における喫煙禁止、不法取引対策等を含む包括的たばこ規制法が成立し、同年6月から段階的に施行されています。

また、EUにおいては、2001年7月に公布された「たばこ製品指令(EU TPD)」が改定され、たばこ製品の包装・表示規制の強化、たばこ製品の添加物規制、たばこ製品のフレーバー規制、電子たばこ製品関連規制、不法品対策等を含むその改定指令が、2014年5月に発効し、各加盟国では本指令に基づいた規制が導入されています。

さらに、2012年12月に、豪州が規定のフォントスタイルおよびフォント色での製品名の刷記を除き、たばこパッケージにロゴ・ブランドイメージまたは販売促進文言を刷記することを禁止するプレーンパッケージ規制を導入しています。現在、同様の規制が、フランス、英国等で導入済みであり、複数国が導入を検討または決定している状況にあります。

日本国内においては、たばこ事業法において、国産葉たばこの買入れ義務や財務大臣による小売定価の認可が定められているほか、たばこ事業法、関連法令および業界自主規準は製造たばこの販売および販売促進活動に関する規制を設けています。この規制には広告活動や製造たばこの包装に製造たばこの消費と健康の関係に関して注意を促す文言を表示することも含まれています。具体的には、製造たばこの包装における注意文言表示については、最新の科学的知⾒に即した文言の追加・改定および表示面積の拡大などの新たな表示方法へ切り替え、広告規制については、インターネット広告等について20歳未満の方を対象としないためのより実効性の高い措置を講じる、店頭広告の大きさや掲示方法について新たに必要な制限を行う等の内容が含まれます。

また、受動喫煙防止の観点からは、2018年7月に「健康増進法の一部を改正する法律(以下「本法律」)」(平成30年7月25日法律第78号)が成立し、多くの人が利用する施設ごとに、望まない受動喫煙を防止するための対策が強化されました。本法律は2020年4月1日から全面施行され、喫煙場所が減少していくものと認識しています。喫煙環境の具体的変化を詳細に⾒通すことは困難ですが、当社グループの業績への影響は一定程度あるものと認識しています。

Reduced-Risk Products(RRP)については、喫煙に伴う健康リスク低減を科学的に評価するための新しい指針や枠組みが、米国や欧州各国等で確立され始めており、リスク低減に関する公的機関からの認証を得るための活動が、たばこメーカー各社の中で活発になってきています。また、これら新しいタイプの製品に関する規制については、EUにおいて、これまで一部のたばこ製品にのみ適用されていたフレーバー規制等を加熱式たばこにも適用することが2022年11月に決定され、米国では2020年2月からフレーバー付き電子たばこの一部についての販売が禁止される例などがありますが、現状では世界的なトレンドが形成されるまでには至っておらず、市場および国ごとに取り扱いが大きく異なっています。

規制によるJTグループの業績への影響

将来における販売活動、マーケティング、包装・表示、たばこ製品および喫煙に関する法律、規則および業界のガイドラインの正確な内容を予測することはできませんが、JTグループは、製品を販売する国内および海外において上記のような規制または新たな規制(地方自治体による規制を含む)が広がっていくものと予測しています。当社グループとしては、たばこに関する適切かつ合理的な規制については支持する姿勢ではありますが、上記のようなたばこに関する規制が強化された場合、または係る規制強化に適時適切に対応できなかった場合には、たばこに対する需要および市場シェアの減少や、新たな規制に対応するための費用等の要因を通じて、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

マーケティングにおける自主規制について

JTグループは、事業を運営する各国・地域の規制を遵守するとともに、「JTグローバルマーケティング原則」に基づき事業を遂行しています。本原則は、たばこ製品について責任あるマーケティング活動を実施していくことが重要であるとの認識を踏まえたもので、当社グループが実施する広告販促活動等の原則を記しています。これには、マーケティング活動の対象を18歳以上かつ法的に喫煙可能な年齢の者とすることや、法的に喫煙可能な年齢の者であっても喫煙開始を推奨したり禁煙を妨げたりすることを目的としたマーケティング活動を実施しないことなどが含まれます。また、法的に喫煙が認められていない年齢の者による喫煙防止は社会全体で取り組む必要のある課題であると認識しており、本原則に基づき、適切な事業運営を行うとともに、各国政府や関係団体等と連携して法的に喫煙が認められていない年齢の者による喫煙問題に向けたさまざまな取り組みを行っています。

詳細はJTのウェブサイトおよびJTIのウェブサイトをご覧ください。

  • アコーディオンを閉じる
  • アコーディオンを開く

医薬事業

日本および世界の主要な市場において、医薬品の研究・開発・製造・販売およびプロモーション等は非常に厳格に規制されています。さらに近年、安全性要求の高まりを背景として、世界的に新薬の承認審査がますます厳格化してきており、より多くの被験者で十分に時間をかけて安全性を見極める必要があることから、臨床試験の大規模化・長期化が進んでいます。一方で、承認申請に必要な資料の質・量ともに国際的な共通化が進められ、開発の効率化や経費削減につながるデータの国際的相互利用を企図した医薬品の開発が盛んに行われています。

日本においては、医薬品の製造販売は「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」により、厚生労働省、または関連する都道府県の規制対象となっています。医薬品製造販売業者は、都道府県から5年ごとに製造販売業許可を取得することが、薬機法により定められています。また、医薬品製造販売業者は、各医薬品について、製造販売承認を厚生労働省より取得することが定められています。さらに日本では国民皆保険制度のもと、保険医療に使用できる医療用医薬品の品目と薬価(公定価格)が定められています。また、薬価制度の抜本改革により、毎年薬価改定、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度対象品目の絞り込み、長期収載品の後発品置き換え率に応じた段階的薬価引き下げ等が行われます。

  • アコーディオンを閉じる
  • アコーディオンを開く

加工食品事業

加工食品事業においては、食品の製造販売業者として、主に食品安全基本法、食品衛生法、食品表示法を含む法規制の対象となっています。

食品安全基本法は、2003年に制定・公布された、食品の安全性確保や消費者保護を目的とした法律であり、食品関連事業者は、食品供給工程の各段階におけるリスクの管理・評価・コミュニケーションを通じた科学的な安全確保の取り組みが求められています。また、食品衛生法は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康保護を図ることを目的としており、食品関連事業者は、食品、添加物、器具または容器包装について自らの責任においてそれらの安全性を確保するために、知識および技術の習得、原材料の安全性確保、自主検査の実施その他必要な措置を講じるよう努めなければならないとされています。2018年には内容を一部改正する法律が公布され、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理などが制度化されました。さらに、食品表示法は、消費者利益の増進を図り、国民の健康保護・増進等に資する食品の生産振興への寄与を目的としており、アレルゲンや賞味期限、原材料、原産地など販売の用に供する食品に関する表示の基準(いわゆる食品表示基準)が定められ、食品関連事業者はこの基準に従った表示をしなければならないとされています。

JTグループは、これらの関連法令の遵守・徹底はもちろんのこと、お客様に安全で品質の高い商品を提供し、安心して召し上がっていただけるように、最高水準の食の安全管理に向け、「フードセーフティ」「フードディフェンス」「フードクオリティ」「フードコミュニケーション」の4つの視点から取り組みを行っています。

  • アコーディオンを閉じる
  • アコーディオンを開く

日本たばこ産業株式会社法

当社は、製造たばこの製造、販売および輸入に関する事業を経営することを目的として、「日本たばこ産業株式会社法」に基づいて設立された株式会社です。日本政府は、この法律において、常時、当社の発行済株式総数(種類株式*1を除く)の3分の1を超える株式を保有していなければならないこととされています。また、当社が発行する株式もしくは新株予約権を引き受けようとする者の募集をしようとする場合、または株式交換に際して株式、新株予約権もしくは新株予約権付社債を交付しようとするときは、財務大臣の認可を受けなければなりません。この法律では、当社の営む事業の範囲は「製造たばこの製造、販売および輸入の事業ならびにこれに附帯する事業のほか、当社の目的を達成するために必要な事業」とされており、「当社の目的を達成するために必要な事業」については財務大臣の認可を受ける必要があります。取締役、執行役および監査役の選任および解任の決議、ならびに定款の変更、剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割または解散の決議には財務大臣の認可が必要とされています。また、毎事業年度終了後3カ月以内に、貸借対照表、損益計算書および事業報告書を財務大臣に提出する必要があります。

なお、2011年12月2日に公布された復興財源確保法*2の附則において、日本政府は、2023年3月31日終了年度までの間に、たばこ事業法等に基づくたばこ関連産業への国の関与の在り方を勘案し、当社株式の保有の在り方を⾒直すことによる処分の可能性について検討を行うこととされています。

*1

株主総会において決議することができる事項の全部について議決権を行使することができないものと定められた種類の株式

*2

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法

  • アコーディオンを閉じる
  • アコーディオンを開く