A History of Tobacco たばこの歴史
アメリカでの「たばこ」の変遷  「たばこ」王国を築いた巨人
アメリカでの「シガレット」普及の影には、1人の製造業者の
大いなる野望がありました。機械による大量生産や斬新な広告戦略で
「たばこ」市場を席捲した男が歩んだ道筋を紹介します。
「シガレット」ブームの立役者の登場
  19世紀の半ばから流行しだした「シガレット(=紙巻たばこ)」は、時流に乗って売り上げを伸ばすものの、手巻き作業の限界などから、1910年代までは大きなシェアを占めるまでには至りません。これが「パイプたばこ」を抜き去って市場のトップに踊り出たのは、1923年のことでした。
  ここには、1人の「シガレット」製造業者と1つの機械の貢献があったのです。

  後に、アメリカを“たばこ王国”へと導いた人物=ジェームズ・ブキャナン・デュークが、故郷のノースカロライナで「シガレット」を製造しはじめたのは1881年のことでした。この年、ある画期的な機械が特許を取得します。それは、「たばこ」を自動的に紙で巻く“ボンサック”の巻き上げ機でした。
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  “ボンサック”は、今日の巻き上げ機の基本となるほどに優れた製造機械でしたが、当時のメーカーは、“消費者は手巻きを求めている・機械は信頼できない”などの理由から、自社への導入をためらっていました。そのような状況下でデュークは、“ボンサック”の将来性を見通して自社工場に導入します。

  やがて、“仕事は手巻き職人48人分・経費は職人の3分の2”という謳い文句通り、“ボンサック”による「シガレット」生産は成功を収め、市場では、機械による大量生産が主流を占めるようになったのです。
「たばこ」市場を手中に収めた“シガレット王”
  “ボンサック”の導入により、「シガレット」市場で成功を収めたデュークは、後にアメリカの「たばこ」市場の王となります。それは彼の卓越した事業センスによるものであり、大きくは4つの特徴に分けられます。
国の税率改訂前に損を承知で製品価格を値下げ。市場の注目を集めた
“ボンサック”側とのリース契約において、自社のみ有利な契約を成立。コストの削減に成功する
コスト削減で得たばく大な利益を広告宣伝費に投入。ニューヨークを中心とする「シガレット」市場を手中に収める
自社との闘いに敗れたメーカーを次々に吸収・合併。1890年には新会社“アメリカン・タバコ社”を設立する
  こうして「シガレット」業界で成功を収めたデュークは、そこで学んだノウハウを基に「噛みたばこ」市場にも進出し、アメリカの「たばこ」市場全体を掌握します。この時期、人々はデュークを“シガレットの百万長者”と呼ぶまでになっていました。
■ デュークがニューヨークへ進出後に製作した自社製品のポスター
■ 当時、広告の一環として用いられていたシガレットのオマケ=たばこカード