其の十三 人と煙草の良し悪しは煙になって後の世に知る

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たばこのことわざ集
た ばこの良し悪しが、吸って煙にした後でなくては分からないように、人間の真価も、死んで煙になった後でなくては分からない、との意味である。

人の良し悪しはともかく、たばこの良し悪しが見かけだけでは分からないことは確かである。手にとって火を点け、煙を出して匂いを嗅ぎ、吸ってみてその刺激を味わう。その時、いい香りだ、心地よい刺激だ、と思われたなら、良いたばこなのである。匂いや味には好みがあるから、たばこの銘柄にも人さまざまに好みが出る。

たばこの味と香りに大きく影響するのが、原料となる「葉たばこ」の種類とその配合(=ブレンド)具合である。シガレットの場合、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種などの原料葉たばこを、いろいろな割合で配合して、銘柄独自の味と香りのベースをつくる。

葉たばこは、それ自体でも特有の香りをもつが、燃焼させると、葉たばこに含まれる芳香性物質が蒸散し、嗅覚や味覚をよりいっそう刺激する。これが「アロマ」と呼ばれるものである。また、製造過程でたばこに加えられる香料が放つ香りは「フレーバー」と呼ばれる。

 たばこの煙を吸うと、舌や喉や鼻が刺激される。味覚と嗅覚が一体となった絶妙な感覚で、これがいわゆる“風味”である。一般に香りを嗅ぐ時は、香りを発する物質に鼻を近づけて息を吸い込む。この時、鼻腔の前方から吸い込まれた香りの微粒子が鼻の粘膜を刺激して感じられるのが“匂い”である。これとは違って、一旦口に入れた物質の香りが口から鼻へと遡り、鼻腔(びこう)の後方から漂うのが風味である。愛煙家は、着火したたばこの先端から出る紫煙(=副流煙)の匂いと、口に含んだ白煙(=主流煙)の風味との、複合した香りを楽しんでいるのである。

煙の匂いと味を楽しむ───火を使うことを覚えた人類にして、はじめて可能となった遊びである。
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