「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)素案」に関する日本たばこ産業株式会社の意見

日本たばこ産業株式会社(以下、JT)は、神奈川県(以下、県)が12月8日に公表した「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)素案」(以下、条例素案)における「喫煙者・非喫煙者の双方の自由や事業者の経済的自由等にも配慮すること」「施設の性質、利用実態等に応じた規制内容とする」との考え方には基本的に賛同するものです。
今般の条例素案におきましては、本年9月に公表された「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」(以下、条例骨子案)から更に、一定の施設に対し本条例の適用猶予期間を設けることとするなど、施設の利用実態・関係事業者の経済的事情等に一定の配慮をした変更がなされていると承知しております。

しかしながら、JTは、今般の条例制定を第一歩として、将来的な公共的施設の全面禁煙を意図する県の考え方には反対いたします。
今般の条例素案では、新たに店舗面積100㎡下の飲食店について3年間の適用猶予期間を設ける等とされましたが、将来的な公共的施設の全面禁煙を意図する県の考え方に変更はなく、また、先般の条例骨子案の際に指摘した問題点である、施設の性格や利用実態を踏まえた内容となっていないこと及び事業者・施設管理者の方々の影響への十分な配慮がなされていないこと等について、以下に指摘する点を含め根本的な解決はなされておりません。
JTは、今般の条例素案に基づいて条例が制定された場合、多くの施設にとって実質的に全面禁煙を余儀なくされる結果となるのではないかとの懸念を依然として持っております。

1.「喫煙可能」な施設が認められていないこと

  • 条例素案は、全ての公共的施設において最終的に「禁煙」か「分煙」の2択を強制し、かつその旨の表示を義務付けています。

  • しかし、本条例の目的として掲げられている「自らの意思で受動喫煙を避けることができる環境の整備」のためには、「喫煙可能」の選択を認めた上で、施設管理者が「禁煙」「分煙」「喫煙可能」の具体的な対応を選択し、施設入り口への掲示を行なうことにより、自らの意思で受動喫煙を避けることができると考えます。

2.「区画化」を要件とする分煙以外の分煙の方法が認められていないこと

  • 「第2種施設の利用形態は様々」であるにも関わらず、条例素案では分煙の方法を「区画化」以外認めていないため、経済的事情や賃貸借契約上の問題等により、これから分煙の導入を検討しようとする多くの施設にとって分煙が困難となり、実質的に全面禁煙を選択せざるを得なくなるおそれがあります。加えて、現在分煙を行っている多くの施設においてさえ分煙と認められないおそれがあります。

  • 店舗面積100m 2 以下の飲食店、パチンコ店、マージャン店、バー、キャバレー等に3年間の適用猶予期間を設けていますが、他の施設と同様、結局3年後には実質的な禁煙を強いられることとなります。条例素案において加えられた「店舗面積100m 2 以下の飲食店」においてこそ、その影響は顕著であり、切実な問題です。

  • 実質的に全面禁煙しか選択できない規制となった場合、喫煙場所規制が導入された国で数多く報道されているように、施設の廃業や従業員の失業等の様々な経済的影響が発生する懸念があります。

  • 県は、様々な分煙のカタチ*を施設管理者に提示すべきです。そのことにより、施設管理者は自らの施設の態様に合った分煙のカタチを選ぶことが可能となります。また施設管理者が選択した分煙のカタチを入口に表示するよう求めれば、利用者はその表示を確認することにより、その施設を利用するか否かを選択することが可能となります。

3.非喫煙区域の面積を喫煙区域と同等以上とするよう一律の義務を課していること

  • 条例素案は、施設管理者に対し、「非喫煙区域の面積が喫煙区域の面積と比べ、おおむね同等以上とするよう」一律の努力義務を課しています。

  • しかし、喫煙区域と非喫煙区域の割合は、施設の性格・態様・利用実態等により様々であり、一律の義務を課した場合には、施設の経営や利用者の利便に大きな支障が出るおそれがあることから、施設管理者が施設の態様等に応じ、決定すべきものと考えます。


上記の問題点に加え、今般の条例素案では、前回の条例骨子案同様、条例の適用対象外と思われる空間・区域等の扱いが依然として不明確なままとなっており、今後はこれらの点についても明確にされる必要があります。

県におかれましては、各施設による自主的な取組みが着実に進んできた事情等を踏まえ、今後も引き続き、条例により影響を受ける県民、施設管理者や県議会等の意見に対し真摯に耳を傾けられ、民間の自助努力に委ねるべきは委ねることとするなど、合理的でかつ規制の結果生じる影響とのバランスのとれた内容となるよう、本条例案を検討していただくとともに、JTとしても分煙コンサルティング等、そのための具体的協力を惜しみなく行なってまいりたいと考えております。

2008年12月11日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 木村 宏

様々な分煙のカタチとは、例示すると「喫煙席と禁煙席を設ける方法」「喫煙できる時間とそうでない時間を設ける方法」「施設の入り口に、たばこが吸えるか吸えないかを表示する方法」などがあります。