厚生労働省「労働政策審議会 点検評価部会 中間評価(案)」に対するJTコメント

厚生労働省の労働政策審議会 点検評価部会が公表した「2010年度 労働政策審議会 点検評価部会 中間評価(案)」について、日本たばこ産業株式会社(以下、JT)の意見を以下のとおり申述いたします。


「2010年度 中間評価(案)評価シート」では、たばこに関して、「17. 職場における安全衛生対策の推進」中の「関係施策の状況」において、「労働政策審議会の建議を踏まえ、原則、全面禁煙又は空間分煙を義務化(飲食店等において、それらの対策が困難な場合には、当分の間、一定の濃度又は換気についての基準を守ることを義務化)することなど受動喫煙防止対策の強化について検討中」と記載されております。

事業者に対し受動喫煙防止対策を義務付けるなど、仮に新たな規制を導入する場合、規制により影響を受ける事業者やたばこを吸われる従業員・顧客等の方々から十分に意見の聞き取りを行い、規制導入により予想される各種の影響等について慎重に検討していただく必要があるものとJTは考えております。今回の評価シートの記載に関しては、特に以下の2点にも留意していただきたいと考えております。
1点目は、空間分煙に関する基準についてです。評価シートでは、「原則、全面禁煙又は空間分煙を義務化(中略)を検討中」と記載されていますが、仮に分煙の基準を一律厳格なものとしますと、関係者に対して様々な影響が生じると考えられます。例えば、すでに多くの事業場において分煙等の取組は進んでおりますが、そのような事業場においても、新たに分煙に関する一律の基準が設定されますと、追加工事のための資金負担が必要になる可能性があります。また、建物の構造上等の理由により、費用をかけたとしても基準を充たすことができないケースでは、実質的に全面禁煙を強いられる結果となることに加え、今まで分煙等に費やした投資も無駄なものになってしまうと考えられます。
2点目は、飲食店等における換気等についての基準の遵守による受動喫煙防止対策に関して、評価シートでは「当分の間」とされていることについてです。換気等の基準を守ることによる受動喫煙防止対策が「当分の間」認められるものに過ぎないということになりますと、逆に、現在換気等による対策を進めようという事業者の意欲を却って減退させてしてしまうおそれがあります。また、換気等による対策が認められなくなった後には、上記したように分煙したくてもその基準が満たせない飲食店等は全面禁煙とせざるを得なくなってしまいますし、その結果、売上減少等といった深刻な影響が生じる事態も懸念されます。
厚生労働省におかれましては、「今後の取組み」に「国民のコンセンサスの形成を踏まえ」とあるとおり、十分にこれらの点などに留意していただいた上で、事業者の方々が納得して受動喫煙防止対策を将来に亘り推進していくことが可能となるよう、効果的かつ実態に見合った受動喫煙防止対策のメニューを幅広く提示し、事業者の方々がそれぞれの状況に合った対策メニューを選択できるようにしていただきたいと考えております。
JTはこれまで、事業場により様々である分煙の取組事例を収集し、効果的な分煙手法に関する研究を行ってまいりました。また、分煙に関する知見や当社の分煙に関する考え方は当社ホームページを初めとする様々な機会を通じて広く情報提供し、特に希望する施設管理者の方々に対しては、その施設の態様等に応じた分煙に関するコンサルティングを無償で実施してまいりました。JTといたしましては、これらの経験を踏まえ、職場における受動喫煙防止対策の推進に関する様々な具体的協力が可能であると考えております。

JTは、たばこを吸われる方々と吸われない方々が協調して共存できる調和ある社会が実現されることが望ましいと考えており、今後とも、適切な分煙の推進や喫煙マナーの向上等により喫煙を取り巻く環境を改善すべく、引き続き行政や事業者の方々、たばこを吸われる方々など、幅広い関係者の方々と、様々な方法で積極的にコミュニケーションを取ってまいります。

2011年5月16日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 木村 宏