「大阪府 受動喫煙防止対策のあり方について 報告」に関する意見

大阪府知事 松井 一郎 殿

今般、大阪府において取り纏められた「大阪府 受動喫煙防止対策のあり方について 報告」(以下、「報告書」と記します。)について、日本たばこ産業株式会社(以下、「JT」と記します。)の意見を以下のとおり申述いたします。

大阪府におかれましては、「実効性のある受動喫煙防止対策のあり方を検討する」ことを目的として、2012年5月に「大阪府衛生対策審議会 受動喫煙防止対策検討部会」(以下、「検討部会」と記します。)を設置し、その後4回の検討部会を重ねた後、2012年10月に報告書を取り纏められ、答申がなされたものと承知しております。

報告書では、飲食店や宿泊施設といった主な民間施設においては、事業者の経済影響への懸念に対する配慮が重要であるということを踏まえ、対策として分煙を認め、推進方法としてはガイドラインで方向性を示すこととしているものと認識しております。
しかしながら、報告書の一部内容については、科学的根拠や合理性が欠如した点も含まれております。

今後、大阪府において、合理的で実効性の高い受動喫煙防止対策を検討される上で、特に重要と思われる問題点について、以下のとおりJTの意見を申し述べます。

1. 受動喫煙防止対策として、全面禁煙しか認めていない施設がある点について

受動喫煙を防止する趣旨・目的は、人々が意図せずにたばこの煙に曝されることを回避することにあるものと承知しておりますが、そのための措置として分煙、例えば厚生労働省の示された分煙効果判定基準に則った喫煙室の設置なども有効な選択肢となるものと考えております。
しかしながら、報告書では、官公庁、公共交通機関や運動施設等の施設は、建物内全面禁煙または敷地内全面禁煙という喫煙室や喫煙所の設置などが一切認められない内容となっています。これは、受動喫煙防止のための措置を超えて、一律に禁煙を強制するための措置とでもいうべきものであり、本来の受動喫煙防止の趣旨・目的を逸脱するものと考えます。

2. 分煙では受動喫煙防止効果が不確実であるとしている点について

「人々が意図せずにたばこの煙に曝されることを回避する」との目的は適切な分煙によっても達成可能です。
しかしながら、報告書では、分煙は「受動喫煙防止としては不確実」であるとし、あくまで「直ちに全面禁煙の実施が困難な場合の選択肢の一つ」としてしか認めておりません。このような分煙の位置付けは合理性を欠くものであって、適当ではありません。時間分煙やポリシー表示といった対策は、「暫定的な措置」ではなく、受動喫煙防止に有効な措置の一つとして認められるべきと考えます。

3. 民間施設の受動喫煙防止対策を全面禁煙義務化するという点について

報告書では、公共交通機関や運動施設といった民間事業者も多く含まれる施設を、学校や官公庁施設等と同じ施設区分に分類しており、施設の運営や経営に関する事業者の自由が大きく制約されるものとなっています。また、民間施設(特に未成年者や妊婦が利用する施設)については「将来的には全面禁煙義務化をめざす」としており、更に答申において、「速やかな法制化を図るとともに、定期的に点検し施策を推進すること」と付言されていることから、事業者の取り組みの如何に関わらず、段階的に全面禁煙義務化が推進されることを懸念しております。
喫煙に対するお客様のニーズを無視し、事業者の施設運営や経営に関する自由を大きく制約することとなる施設の全面的な禁煙化は、海外の事例や先の神奈川県における受動喫煙防止条例の影響においても示されているように、事業者に多大な影響を与えることは必至であり、府民の生活にもその影響が波及するものと考えられます。

4. 官公庁施設、公園、通学路等の屋外区域を受動喫煙防止対策の対象としている点について

報告書では、官公庁、運動施設等の屋外区域が「受動喫煙による健康影響を防止するため」との理由から、必要な対策方法として「敷地内全面禁煙」と記載されているとともに、公園、通学路、屋外レジャー施設等といった屋外にも受動喫煙防止のための対策が必要とされておりますが、屋外での受動喫煙による深刻な健康影響に関する科学的事実は示されておりません。
また、報告書の参考資料で引用されている健康増進法25条や厚生労働省 健康局長通知においても、受動喫煙の定義は、「屋内におけるたばこ煙への曝露」とされており、受動喫煙防止対策として屋外での全面禁煙を求める内容とはなっておりません。
屋外の喫煙環境については、一律的な全面禁煙といった対策ではなく、施設利用者の要望等を踏まえ、利用者満足と環境美化や火災防止の観点から施設管理者が自主的に判断すべきものと考えます。

JTは、2012年6月28日に、検討部会から受動喫煙防止に関する意見聴取を受けた際に申し上げたとおり、たばこを吸われる方と吸われない方との協調ある共存社会を目指し、喫煙マナーの啓発や受動喫煙防止対策の推進として、希望される事業者の方々に分煙コンサルティングを実施する等、幅広い方々に知見や情報の提供を行ってまいります。
大阪府に対しましても、法制化やガイドラインを策定する際、あるいは実際の運用の場面において、分煙コンサルティング等により蓄積した知見等を提供し、大阪府と府民および事業者が一体となった取り組みとなるよう協力を行ってまいりたいと考えております。
今後、受動喫煙防止対策をより一層推進していくためには、府民や事業者ならびに市町村の協力が不可欠です。大阪府におかれましては、以上述べました点を含め、十分に府民や事業者等の意見を聴取され、全ての関係者が理解・納得し、一体となって取り組みを進めていけるよう、慎重な検討をお願いいたします。

2012年11月30日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 小泉 光臣

※「大阪府 受動喫煙防止対策のあり方について 報告」については、大阪府のホームページにてご確認ください。