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こども大会 OB紹介

将棋を始めたのは5歳のお正月でした。もともとスイミングを習っていたんですが、中耳炎になってしまったんですね。早く気づけばすぐ治るんですが、口数の少ない子だったらしく、周囲が中耳炎に気づくのが遅れて重症化してしまい、入院することになりました。それまでは外で走り回るのが好きな活発なこどもでしたが、退院後は外で遊ぶのをドクターから制限されてしまいました。

それで「家で遊べるものを」と母がホームセンターで将棋盤と駒を買ってきてくれたというのが将棋を始めたきっかけです。偶然に偶然が重なった出会いでした。

最初の頃は、玉を詰ませるよりも飛車を取るのに夢中になっていたようです。そうやっていくうちにのめり込んでいって、将棋会館の子供将棋スクールに通うようになりました。その後は千葉の柏将棋センターで、師匠である石田和雄九段の元に通って腕を磨きました。

柏将棋センターに毎日通えたのは、一つ年上の三枚堂達也さんの存在が大きかったです。三枚堂さんがいるから自分も行きたくて、学校が終わった後に通っていました。柏将棋センターの雰囲気も良くて、私と三枚堂さんが行くと「いっちょやってやるか」という大人たちが相手をしてくれました。強い人とたくさん対局ができましたね。

「将棋日本シリーズ こども大会」は、昔のことなので詳しくは覚えていないのですが、大きな大会だという認識はこどもながらにありました。当時は将棋大会が多く、夏休みになると、そういう大会に出られるのが楽しみでした。「将棋日本シリーズ」もその一つでした。

この大会に出た頃はそれなりに棋力がついて、勝ち進みたい気持ちが強く、必死だったと思います。こどもの頃は、トロフィーとか盾とか、そういう賞品が欲しかったのをよく覚えています。この大会でもらった盾は今も飾っていますよ。それと、当時はJTの飲料がもらえましたね。そういうのも、こどもの頃はうれしかったです。

袴を着られること、こどもながらに考慮時間があることも他の大会とは違っていました。それに、あれだけ大きな会場での一斉対局はなかなかありません。そういった点が印象に残っています。

将棋大会に出て賞品をもらうのがすごく楽しかったのですが、奨励会に入ると、こども向けの大会に出られなくなりました。こどもながらにこれは苦しいなと思った記憶があります。

他の棋士に比べると、自分の場合は棋士を目指すことを意識するのが遅い方だったと思います。はっきりそう思ったのは、奨励会三段リーグの頃ですから、中学から高校にかけての時期でした。

そういうプロになるかどうかわからない状態の時も、家族は自分を支えてくれました。今にして思えば、こどもの頃も将棋に打ち込める環境を整えてくれていたんだなと思っています。小学生の頃から自分でバスや電車に乗って柏将棋センターに通っていましたが、その習慣を付けてくれたことで、将棋が楽しくなったし、今の自分があると思っています。