INTERVIEW石田直裕棋士
インタビュー
2026/07/17 公開
将棋界を牽引している棋士の一人、「晩成」の棋士にスペシャルインタビューを敢行。
今回は、「JTプロ公式戦」初出場を飾る石田直裕さんが登場。
なかなか聞くことのできないプライベートなお話から「JTプロ公式戦」への想い、印象に残った過去対局の解説、将棋ファンの皆さまへのメッセージ動画など盛りだくさんです。ぜひ最後までご覧ください。
- 本記事は2026年4月時点のインタビューに基づいたものです。
- 文中に登場する棋士のタイトル・段位は対局当時のものとなります。
棋士になった日のことや、ご自身の心境の変化について教えてください。
たくさんの方にお祝いしていただきましたし、棋士の先輩方に「おめでとう」と言っていただき「これから始まるんだな」という気持ちが強くなった瞬間でした。大学を卒業して約1年半後の出来事で、同級生はみんな社会人として働いていましたので、プレッシャーというか、焦りのようなものを抱えながら三段リーグを過ごしていたように思います。棋士になってようやく、友達とも会いたいなという気持ちになりました。心に余裕ができて、安心したというのが率直な心境でした。
学校生活での勉強や同級生との交流は、どのような影響がありましたか。
友達との何気ない会話や勉強から、将棋とは違った刺激を受けたり、リフレッシュできたりして、とても良い時間でした。今でも年に1回くらいは飲みに行くような仲間ができたという意味でも、大学は非常に大きな存在でした。数学が昔から好きだったので、大学は理工学部数学科に通っていました。数式を「当てはめる」感覚は、将棋の終盤の部分に近いところがあるのかなと思っています。プログラミングも数学科で習い、ちょうどAIが出てくる直前だったので、習っておいて損はないかなと思ったのですが、もうほとんど忘れてしまいましたね(笑)。

棋士としてのこだわりや、座右の銘はありますか。
「人事を尽くして天命を待つ」です。師匠の所司和晴八段もよく「勝負は時の運だ」とおっしゃっていましたが、運の段階にたどり着くためには、日々の努力を怠らず、やるべきことに対して誠実に向き合うことが大事かなと思っています。私は将棋の結論を知りたいという目標を持っています。そのためには最新の戦法についていき、理解度を深めていくことが大事だと思って取り組んでいます。それと同時に、将棋から離れ、心身をリセットする時間も大事にしています。
息抜きのためにしていることはありますか。
野球が好きで4番打者を務めています。野球もプレーが止まっている時間が多く、打球のゆくえを予測して動き方を考えたり、常に先を読んだりすることになります。そういう駆け引きは、将棋と通ずる部分があって好きですね。あとはラップミュージックも好きでよく聴いています。ただ、対局中に頭の中で音楽が鳴ってしまうのが怖いので、対局前はあまり聴かないようにしています。学校からの帰り道に祖父の家に寄り、祖父に車で家まで送ってもらう時に聴いていたのがきっかけだったと思います。なかなかファンキーな祖父でしたね。
「JTプロ公式戦」は初出場ですが、出場が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。
これまで「JTプロ公式戦」は“見るもの”というか、こどもの頃もプロになってからも、ずっと雲の上の存在である先生たちがやっているお祭りのような棋戦でした。奨励会時代には、地元の北海道大会で大盤操作を任されていました。距離としては対局者は目の前にいますが、実力としてははるか遠い場所だなと感じながら大盤の駒を動かしていました。ですから、まさか自分がその舞台に出られることになるとは思っていませんでした。
「JTプロ公式戦」ならではの醍醐味や面白さ、ご自身の将棋で見てほしいところはどこでしょうか?
短い持ち時間で、最後は秒読みで、スリリングな展開になりやすいところでしょうか。手に汗握りながら見ていただけるとうれしいです。私は斬り合いの将棋のほうが向いているかなと思うので、そういう展開になれば自分らしさが出てくると思います。そのあたりに注目していただけるとうれしいですね。なかなか経験できることではないですし、格式高い素晴らしい棋戦だと思います。自分がその場に立てることを誇りに思います。

初戦の相手である羽生善治九段への想いを教えてください。
羽生九段とは初めて対局します。私がこどもの頃から「JTプロ公式戦」に毎年出場されていて、ご活躍ぶりを最も多く見てきた先生です。大きな舞台で対局できるので非常に楽しみですし、対局の日まで1日1日をかみしめて準備していければと思います。観戦する皆様に楽しんでいただけるよう、自分の力をしっかりぶつけて精一杯頑張りたいと思います。


石田直裕(六段)
1988年12月5日生まれ北海道名寄市出身
- 1999年小学5年生の頃に将棋を始める
- 2001年奨励会入会
- 2012年四段に昇段、プロ入り
- 2014年「加古川青流戦」優勝
- 2017年五段に昇段
- 2024年六段(五段昇段後公式戦120勝)に昇段
- 2026年「JTプロ公式戦」初出場
JTプロ公式戦について
「JTプロ公式戦」はトップ棋士12名の豪華な顔ぶれが、公開対局により「JT杯」のタイトルを争います。
公開対局ならではの間近のライブ感を楽しむなら「会場観戦」、実況を楽しむなら「ABEMA生中継」、じっくり戦況を味わうなら「棋譜中継」。お好みのスタイルでご観戦いただけます。



石田さんに過去の「JTプロ公式戦」の中から一局を選んでいただきました。
特に印象に残った局面もワンポイント解説!
相矢倉らしい押し引きから中盤は行方尚史八段が好調に攻めていたが、少し攻めあぐみその隙に飛車を見捨てて入玉した渡辺明JT杯覇者がリード。しかし、今度は行方尚史八段が強靭な受けですさまじい粘りを見せ、徐々に後手の攻めが細くなる。渡辺JT杯覇者も細い攻めを繋げ、大熱戦の末持将棋に。行方尚史八段の粘り、渡辺明JT杯覇者の細い攻めを繋げる技術がぶつかった名局でした。
行方尚史八段が苦しい局面ですが、131手目の8二銀成は渡辺明JT杯覇者の攻めを誘い、上部開拓を狙った受けの勝負手でした。実戦は渡辺明JT杯覇者8七香成、行方尚史八段同馬、渡辺明JT杯覇者8六歩、行方尚史八段9六馬、渡辺明JT杯覇者8七金、行方尚史八段7九玉、渡辺明JT杯覇者9四歩、行方尚史八段8八歩と進みました。
行方尚史八段が苦しい局面ですが、131手目の8二銀成は渡辺明JT杯覇者の攻めを誘い、上部開拓を狙った受けの勝負手でした。実戦は渡辺明JT杯覇者8七香成、行方尚史八段同馬、渡辺明JT杯覇者8六歩、行方尚史八段9六馬、渡辺明JT杯覇者8七金、行方尚史八段7九玉、渡辺明JT杯覇者9四歩、行方尚史八段8八歩と進みました。
玉を下段に落とされても頑張れるとみたのが、行方尚史八段らしい粘り強い判断でした。秒読みの中、両者の持ち味が存分に出た一局で、私もこのような熱戦が指せるように頑張りたいです。
玉を下段に落とされても頑張れるとみたのが、行方尚史八段らしい粘り強い判断でした。秒読みの中、両者の持ち味が存分に出た一局で、私もこのような熱戦が指せるように頑張りたいです。