LEGEND

広島サンダーズのレジェンド

家族への手紙3

「金メダルよりも大切」な手紙

世界を舞台に戦ってきた猫田は、広島から遠く離れた日本や世界の各地から、妻や子供へ多くの手紙を送っている。
「金メダルよりも大切」と禮子夫人が語るように、バレーボールのこと、家族のこと、さまざまな思いが綴られている手紙は、家族との温かな絆の証なのだ――。

少し早いけど たんじょうびおめでとう

1978年8月1日付
長女桂子さん(当時8歳)へあてた手紙より

猫田桂子さんへ
お父さんは 今 ポーランドという国に来ています 日本よりすずしくて きもちのよいきせつです 夏休み中ですが べんきょうしていますか 午前中はあそばないで べんきょうしなさいね ひるからはあそべる時間があるでしょう お父さんは8月21日に帰ります それまでお母さんをこまらせないように お母さんの言うことをよくきいてくださいね ゆうこちゃんやただあき君をかわいがってください 桂子ちゃんのたんじょうびにはお父さんはいません 少し早いけど たんじょうびおめでとう 9才ですね がんばってください

お父さんより

おかあさんのおてつだいもしましょう

1978年8月1日付
次女優子さん(当時6歳)へあてた手紙より

ねこだゆうこちゃんへ
なつやすみですね あさはやくおきてラジオたいそうへいっていますか おねえさんがべんきょうしているとき じゃまをしないように ゆうこちゃんも ほんをよんだり えをかいたりしましょうね そしてあそんだあとは あとかたづけをわすれないようにしましょう おかあさんがあとかたづけをしていたら おかあさんはおしごとでつかれているので びょうきになってしまいますよ おかあさんのおてつだいもしましょう ただあきくんにもやさしくしてやりましょう

お父さんより

たくさんごはんをたべましょう

1978年8月1日付
長男忠明くん(当時2歳)へあてた手紙より

ねこだただあきくんへ
ようちえんはたのしいですか
ともだちはできましたか
ただあきくんはたんじょう日がくると3才ですね おにいちゃんになるのだから おかあさんのいうことをよくききましょう おねえちゃんたちとけんかをしないように なかよくあそびましょうね よるもはやくねるようにしないと あさはやくおきれませんよ かぜをひかないように たくさんごはんをたべましょう

お父さんより

禮子も元気で、子どもにも心配がない。これが私の宝です

1978年8月1日付
禮子夫人にあてた手紙より

ポーランドに無事到着しました。チェコでは4日で3試合。しかも、朝4時に起きて移動するなど、大変でした。手紙を書く時間もないぐらいでした。しかし、会社の姉さんたちには書いたので先に着いていることと思います。
試合は1勝2敗。21日から出発まで準備でいそがしく練習量も少なかったので、チームプレーが思うようにいかず苦労しましたが、だんだんよくなってきました。
ポーランドも強敵ですが何とかいけそうです。体調もよく季節も一番よい時です。
日本は暑いでしょう。子どもは夏休みで遊ぶことにばかり気をとられているのではないかと思います。午前中勉強しておけば、外で遊んで元気になるのならよいのですが。
暑い中で仕事も大変でしょうが、体が一番大切です。疲れたようなら休んでもよいし十分気をつけてください。
禮子も元気で、子どもにも心配がない。これが私の宝です。家庭に不安があるとバレーどころではありません。その点感謝しております。安心してバレーをやっています。留守が多くて寂しいと思いますが、苦しい後には楽しみがあるはずです。21日に帰った後のスケジュールは考えてください。残念ながらゆっくりはできないと思いますが、計画はまかせます。
桂子の誕生日はいませんが、忠明の誕生日にはいますので一緒にしましょう。

禮子へ

勝敏

これが最後の全日本の選手生活となるでしょうし、頑張ります

1979年12月11日付
禮子夫人にあてた手紙より

9日、全員元気でバーレンに入りました。こちらの気候も思った程、暑くなく快適です。16日から大会が始まります。
中国、韓国もバーレンに入りました。大会に出場の選手は全員同じホテルです。中国、韓国の選手の顔を見れば、自然にきんちょうしてきます。練習にも一段と熱が入ってきました。今のところ、故障者もなく、順調に仕上がっています。
日本は寒くなりましたか。出発する前は12月とは思えない程でしたが、忠明は風邪をひいていませんか。この手紙が着くころには冬休みに入っているかもしれませんね。桂子はラボでどこかへ行く話もあったようですが。
とにかく、みんな風邪をひかないように元気でいてください。お父さんも元気で体重も2~3キロ落としました。絶好調です。
中国、韓国に勝って、モスクワ行きのキップを手にして、若い選手に引き継ぎたいと思っています。これが最後の全日本の選手生活となるでしょうし、頑張ります。

禮子へ

勝敏