A History of Tobacco たばこの歴史
絢爛豪華! 喫煙具の発展
「細刻みたばこ」による喫煙が定着すると、日本人は喫煙具のなかに
美を求めるようになります。使用する人の階層やTPOに応じて
さまざまに作られた江戸期を代表する喫煙具の数々を見てみましょう。
多種多様な形と素材を取り揃えた「キセル」
  江戸期を代表する喫煙具の「キセル」は、もともとはヨーロッパのパイプや東南アジアの喫煙具を模倣したものと考えられ、その原型は長く大きなものでした。それが「細刻みたばこ」の登場によって、「たばこ」を詰める“火皿”が小さくなり、長さも携帯しやすいショート・サイズになり、やがてはデザイン性に富んだ形へと変貌を遂げたのです。
photo01   伝来当初は、「たばこ」を詰める部分の“火皿”や「たばこ」を吸う“吸口”部分に金属を用いた「羅宇(らう)キセル」が中心でしたが、やがて全体を金属で作った「延べ(のべ)キセル」なども登場します。そして、それらの金属部には、美しい彫刻が施されていきました。また、「キセル」には、木や陶器、ガラスや石も素材として使われました。
「羅宇キセル」
「銀大内小姓形牡丹文(ぎんおおうち こしょうがた ぼたんもん)きせる」(羅宇/38.3センチ)
初期の「キセル」
「銅肩付河骨形(どうかたつき こうぼねがた)きせる」(72.3センチ)
「延べキセル」
「銀三升御召形雲龍文(ぎんみます おめしがた うんりゅうもん)延べきせる」(24.5センチ)
「ガラス製のキセル」
「ぎやまんきせる」(29.9センチ)
「変り形キセル」
「金銅変り形花唐草文(こんどうかわりがた はなからくさもん)延べきせる」(13.9センチ)
庶民のアクセサリーだった「たばこ入れ」
  「たばこ入れ」とは、「キセル」や「たばこ」を1つにまとめて携帯するための道具です。
  士農工商の身分制度が敷かれ、質実剛健がよしとされていた江戸時代には、庶民が着飾ることは幕府によって厳しく制限されていました。そこで、彼らがささやかにも身を飾るために用いたのが「たばこ入れ」だったのです。
photo02   日本における袋物の発展にも影響を与えたとされる「たばこ入れ」は、大きくは次の4種に分けることができます。
壱 懐中
武士や女性が、着物の懐に入れて使用した袋。筒は付随するタイプとしないタイプがある
懐中
「金綴錦波兎模様女持ち懐中
(きんつづれにしき なみうさぎもよう
おんなもちかいちゅう)たばこ入れ」
弐 一つ提げ
「たばこ」が入った袋を、根付(=ヒモの先に付いた留め具)で留め、腰から提げて使用する袋
一つ提げ
「金唐革一つ提げ(きんからかわ
ひとつさげ)たばこ入れ」
参 提げ
“一つ提げ”に「キセル」を収める筒が附属したタイプ。「たばこ入れ」の代表的な形態として知られている
提げ
「黒棧留革提げ(くろさんとめがわさげ)
たばこ入れ」
四 腰差し
「キセル」を収めた筒を、腰に差して使用した袋
腰差し
「つづれ錦 鶴模様女持ち腰差し(つづれにしき つるもよう おんなもちこしさし)たばこ入れ」
漆工芸の技巧が光る装飾豊かな「たばこ盆」
  屋外での使用を主とする「たばこ入れ」に対し、家屋内での喫煙に用いられたのが「たばこ盆」です。炭火を収める“火入れ”をはじめ、灰を捨てる“灰落とし”や「刻みたばこ」をしまう“たばこ入れ”など、「キセル」での喫煙に必要な諸道具を1セットにしておくことができます。
  「たばこ」の伝来当初は、ありあわせのお盆などが用いられていましたが、「キセル」による喫煙が人々に浸透したことで、機能的に優れたものへと変化していきました。
photo03   特に装飾には、漆絵のほか、貝を磨いて薄片にし、素材の表面に貼り付けて飾る螺鈿(らでん)など、多彩な漆工芸の技巧が活かされ、江戸期の日本の高いデザイン力を垣間見ることができます。
「黒漆塗り紅葉に若松蒔絵提げ(くろうるしぬり もみじにわかまつ まきえさげ)たばこ盆」
「黒漆塗り紅葉に若松蒔絵提げ(くろうるしぬり もみじにわかまつ まきえさげ)たばこ盆」
「朱漆内黒漆塗り(しゅうるし うち くろうるしぬり)たばこ盆」 「銀製御簾造り(ぎんせい みすづくり)手付きたばこ盆」
「朱漆内黒漆塗り(しゅうるし うち くろうるしぬり)たばこ盆」 「銀製御簾造り(ぎんせい みすづくり)
手付きたばこ盆」
「青貝松葉螺鈿(あおがいまつば らでん)たばこ盆」
「青貝松葉螺鈿(あおがいまつば らでん)たばこ盆」
風俗画などを参考に、想定復元された初期の「たばこ盆」
風俗画などを参考に、想定復元された初期の「たばこ盆」