日本の歴史【江戸期】

「たばこ」は、時代の移り変わりの中で人々の生活や文化、風俗と深く関わってきました。日本の歴史の中で「たばこ」が歩んだ道すじを、年表を通して振り返ってみましょう。

江戸期

伝来から定着、日本独自の喫煙文化へ発展

たばこが日本に伝えられた当初、喫煙やたばこ耕作は、風紀の乱れや失火、米や麦などの耕作の妨げになるとして禁じられました。しかし、禁令下においてもたばこは流行していったため、次第に容認され、庶民を中心に嗜好品として広く親しまれていきました。
江戸時代の人々は、刻んだたばこをキセルで吸っていました。当初は刻みも粗いものでしたが、次第に喫味がやわらかな細刻みたばこが好まれ、定着しました。また、たばこ盆やたばこ入れなどの喫煙具がつくられるなど、日本独自の喫煙文化が発展しました。

江戸期エピソード

江戸期 1543年~1867年 伝来から定着、日本独自の喫煙文化へ発展
たばこの歴史 西暦 年号 日本の歴史
「たばこ」の渡来説のなかには、元亀・天正から文禄年間(1570~1596年)に外国より伝来したという説もあるが、確たる資料は現存していない 1543 天文12 ポルトガル人が種子島に漂着する(鉄砲の伝来)
1549 天文18 宣教師フランシスコ・ザビエルが来日
(キリスト教の伝来)
1551 天文20 ポルトガル船が九州に来航する
(南蛮貿易が始まる)
1582 天正10 「本能寺の変」で織田信長が没す
1590 天正18 豊臣秀吉による天下統一
慶長以降、「たばこ」および喫煙に関する文献や、喫煙風俗を描いた絵画が多く見られるようになる 1596 慶長元年
1600 慶長5 政権をめぐり、徳川家康派と石田光成派が戦った「関ヶ原の合戦」が起こる
フランシスコ会の修道士ヘロニモ・デ・ヘススが家康に謁見。「たばこ」を原料とする葉と、「たばこ」の種子を献上する 1601 慶長6
1603 慶長8 徳川家康が征夷大将軍となり、江戸に幕府を開く
現・大阪府堺市周辺で、葉たばこ専用の刻み包丁=「たばこ包丁」の生産がはじまる 1605 慶長10 徳川秀忠が2代将軍となる
「たばこ」の喫煙や売買、耕作の禁令が公布される
これより前にもたばこの禁令が出たという記録もあり
1612 慶長17 「キリスト教の禁教令」が公布される
秋田藩の院内銀山に、この頃まで“たばこ役”が置かれる
禁煙令が公布される 1614 慶長19 徳川家康勢と、豊臣秀吉の息子・秀頼勢が戦った「大坂冬の陣」が起こる
「たばこ」の喫煙および売買、耕作の禁令が公布される 1615 元和元年 諸大名の統制を図ることを目的に、法令「武家諸法度」が制定される
元和2~8(1616~1622)年の間に5度、「たばこ」の売買および耕作の禁令が公布される 1616 元和2
禁煙令が公布される 1623 元和9 徳川家光が3代将軍となる
寛永期から喫煙自体は許される 1624 寛永元年
現・島根県大田市温泉津町で葉たばこに課税される 1631 寛永8
現・三重県津市八幡町で、“たばこ座”が許される 1634 寛永11
1641 寛永18 オランダと中国の2国を限定として、長崎県の出島で貿易が許される
昔から開拓されていた田畑=本田畑での「たばこ」の耕作が禁止される 1642 寛永19 「寛永の大飢饉」が起こる
本田畑に加え、新しく開拓された田畑=新田畑でも「たばこ」の耕作が禁止される 1643 寛永20 庶民による田畑の売買を禁じた「田畑永代売買禁止令」が公布される
江戸で家屋内での喫煙が許される 1649 慶安2 徳川家綱が4代将軍となる
江戸城内では喫煙が禁じられていたが、場所を限って許されるようになる 1654 承応3
この頃から風俗画のなかに「たばこ」を刻んで売る店=「たばこ屋」が見られるようになる 1655 明暦元年
現・愛媛県松山市に在した松山藩で、「たばこ」の耕作が奨励される 1656 明暦2
京都で紙製の「たばこ入れ」が販売される 1666 寛文5
本田畑での「たばこ」の耕作の禁止が強化され、以後、同種の禁令が多数出されるようになる 1670 寛文10
1683 天和3 徳川綱吉が5代将軍により、庶民の装飾を禁じた「衣服制限令」が公布される
江戸で歩きたばこの禁令が公布される 1690 元禄3
秋田藩で「刻みたばこ」に課税される 1697 元禄10
「たばこ入れ」も含め、献上物以外の諸品に対して金銀類の使用が禁止される 1704 元禄17
1716 享保元年 8代目将軍となった徳川吉宗が財政の安定を目的に「享保の改革」を始める
1760 宝暦10 “初めて喫煙した将軍”といわれる徳川家治が10代将軍となる
1787 天明7 11代目将軍となった徳川家斉のもとで、松平定信が政治改革を目的に「寛政の改革」を始める
寛政年末から文化の初め頃、現・徳島県三好市の阿波池田地方で、昆布の刻み機を基に「かんな刻み機」が考案される 1804 文化元年
1825 文政8 「異国船打ち払い令」が公布される
1830 天保元年 幕政や諸藩の改革を目的に「天保の改革」が始まる
1842 天保13 「異国船打ち払い令」が廃止となり、異国船への薪や水、食料の供給が許される
この頃までに江戸の職人が、西陣織の平金糸切り機を基に「ぜんまい刻み機」を考案したといわれる 1844 弘化元年
1853 嘉永6 アメリカ海軍の軍人マシュー・カルブレース・ペリーが浦賀に来航し、鎖国政策をとる幕府に開国を求める
1854 安政元年 「日米和親条約」が調印される
開港した港の周辺で外国の喫煙風俗が見られるようになる 1859 安政6 神奈川・長崎・函館の3港が、諸外国に開港される
この頃、江戸の職人が「螺旋式ぜんまい刻み機」を考案したといわれている 1865 慶応元年
1866 慶応2 倒幕運動の基盤となった「薩長同盟」が成立する
1867 慶応3 江戸幕府最後の将軍となった15代目徳川慶喜が「大政奉還」を行い、政権を天皇に返上する
「王政復古の大号令」が発せられ、摂政・関白などの官職および幕府からなる朝幕体制が廃絶し、総裁・議定・参与の三職を中心とする新政府が発足する