結論

これまで、喫煙者を依存症と見なすことは科学的に根拠がないこと、禁煙指導に健康保険を適用するか否かの検討にあたっては、中医協において依存性の専門家を交えて議論すべきであること、及び禁煙指導を行ってもその効果には疑問があることを説明してまいりました。


また、たばこを吸われる方々と吸われない方々の医療費に差があるとするには十分な証拠がないことも述べました。


さらに懸念すべきことは、禁煙指導に対し健康保険を適用すれば、医療費増加のおそれがあるという点です。

厚労省が「ニコチン依存症の概念は国際的に確立している」とする根拠として参照された国際的診断基準では、アルコールであれニコチンであれ、全ての物質について共通の基準が適用されています。

事務局厚労省から中医協に提出された「たばこ依存スクリーニングテスト」によれば、1,800万人もの喫煙者がたばこ依存症と診断されると言われていますが、こうした国際基準に従い、この「スクリーニングテスト」と同様の基準でアルコール等他の物質の依存症を診断すれば、通常の社会生活を送っておられる方々のうち何千万人もが依存症=病人ということになります。


このように極めて多数の人々を潜在的「病人」とするような新たな診断基準を創り出すことは、将来の医療費増につながる危険をはらむものです。

以上の観点から、私たちは、禁煙指導に健康保険を適用すべきかどうかについて、全ての科学的データを公開した上で十分な議論がなされる必要があると考えます。

中医協における議論の中で、禁煙指導を健康保険の給付対象にすべきであるとの立場からは、「保険の対象とすることは、病気であるという意識を植え付けるためのPR効果を狙ったものである」といった趣旨の意見も出されましたが、国民医療費の総額を抑制しようという今般の流れの中にあって、健康保険制度をこのような目的に用いることは、果たして適切なことなのでしょうか?

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2006年1月23日