INTERVIEW服部慎一郎棋士
インタビュー
2026/07/03 公開
将棋界を牽引している棋士の一人、「忍び」の棋士にスペシャルインタビューを敢行。
今回は、「JTプロ公式戦」初出場を飾る服部慎一郎さんが登場。
なかなか聞くことのできないプライベートなお話から「JTプロ公式戦」への想い、印象に残った過去対局の解説、将棋ファンの皆さまへのメッセージ動画など盛りだくさんです。ぜひ最後までご覧ください。
- 本記事は2026年4月時点のインタビューに基づいたものです。
- 文中に登場する棋士のタイトル・段位は対局当時のものとなります。
プロ入りの瞬間に思ったことを教えてください。
三段リーグは1期目の成績が14勝4敗で、その後も上がれそうで上がれない時期が続き、もどかしい気持ちがありました。5期目でなんとか昇段することができ、うれしいというより、ホッとした気持ちのほうが強かったですね。奨励会の対局では勝敗の結果しか残りません。棋士になると指した手の記録が「棋譜」として残ります。それもあって、恥ずかしくないような将棋を指さないといけないなと強く思いました。デビュー戦を迎えた時は、対局者の席に座るのがとても新鮮な感じがしました。「ここから始まるんだな」という思いを抱いた記憶があります。

棋士になり、指し手や心境に変化はありましたか?
棋士になった頃は終盤の競り合いがすごく好きで、終盤型の将棋だったと思います。対局を重ねていくことで、少しずつ指し手の精度が上がり、粘り強く指すことができるようになったように思います。奨励会の頃は持ち時間が短いので、少し間違えても最後は終盤の勝負に持ち込めますが、棋士になると持ち時間が長くなり、相手も強くなります。一度リードを渡してしまうと逆転が難しくなり、チャンスがないまま逃げ切られてしまうことが珍しくありません。そこが奨励会と違って厳しいところだなと感じました。
大切にされている言葉や行動、こだわりはありますか?
今は「雨垂れ石を穿つ」という言葉を座右の銘にしています。雨垂れのように根気強く、粘り強くやるということを目標にしています。棋士になった頃は関西の所属棋士の中で年下のほうだったのですが、いまは後輩が10人以上増えたので、手本になるような行動をしなければならないと思うようになりました。こだわりかはわかりませんが、3年ほど前から赤色のネクタイで対局に臨むようにしています。赤色は情熱的で好きですし、自分の気持ちを上げてくれるような気がします。
漫才のイメージがありますが、どのようなきっかけで始めたのですか。
高校の文化祭の出し物に漫才を選んだのがきっかけです。ものすごく緊張して、そのうえ全くウケなくて、だんだんと声が小さくなったことを覚えていますね(笑)。終わった後、当時の相方と「このままでは終われない」と意見が一致して、結局卒業まで漫才を続けることになりました。構成を考えてネタを仕上げていく過程は、将棋と似ているような気がします。数年前に棋士仲間と将棋イベントで漫才をやった時、爆笑を巻き起こすことができて、とてもうれしかったです。「JTプロ公式戦」でも大熱戦の将棋を指して、あの時の漫才のような盛り上がりを感じたいなと思います。
「JTプロ公式戦」の印象、初出場が決まったときの気持ちはいかがでしたか?
前年に活躍された棋士が出場できる棋戦ですので、トップ棋士が多いなという印象があります。出場決定の知らせはメールで受け取りました。確か対局に負けた日に「JTプロ公式戦」出場決定のメールを受け取り、本来ならすごく落ち込むところですが、負けたことを忘れるほどうれしかったのを覚えています。昨年は目標としていたタイトル挑戦も叶わず、賞金ランキングの12位までに入るのは厳しいと思っていたので、本当に驚きました。とはいえ1週間程は現実味がわかなくて、もしかしたら「実は間違いでした」というメールが来るのではないかと思い、ドキドキしていました。
「JTプロ公式戦」にはどのような印象がありますか。
大盤操作を経験したことがあります。対局中、解説者の先生の声が思ったより大きくて驚いたのですが、対局者の先生は全く聞こえていないような雰囲気で盤に集中されていたので、トップ棋士の集中力はすごいなと思った記憶があります。棋士になったら一度は対局者の席に座りたいと思っていました。
早指しの将棋なので、激しくスリリングな展開になりやすく、逆転も起きやすい棋戦だと思っています。私は短い持ち時間の将棋ですと、過激な指し方を選ぶこともあるので、そういうところもファンの方々に楽しんで見てもらえたらなと思います。和服での対局も大きな魅力で、今回の出場を受けて和服を新調しました。

北陸への思い、そして「JTプロ公式戦」への思いを一言。
私がこどもの時は、都会に比べると将棋を指す同世代のこどもが少なかったです。私が北陸にタイトルを持って帰ることで、将棋を指すこどもたちがもっと増えて、将棋がさらに盛んになってくれたらうれしいなと思っています。「JTプロ公式戦」に出場するからには「優勝」を狙いたいと思っています。


服部慎一郎(七段)
1999年8月2日生まれ富山県富山市出身
- 2008年小学校3年生の頃に本格的に将棋を始める
- 2011年「将棋日本シリーズ こども大会 北陸・信越大会」高学年部門で優勝
- 2013年奨励会入会
- 2020年四段に昇段、プロ入り
- 2021年「加古川青流戦」優勝
- 2022年五段に昇段、「新人王戦」優勝
- 2023年新人賞・最多対局賞を受賞、六段(竜王ランキング戦連続昇級)に昇段
- 2024年「新人王戦」2回目の優勝
- 2025年七段(順位戦B級1組昇級)に昇段、勝率一位賞を受賞、
「新人王戦」3回目の優勝 - 2026年棋聖戦でタイトル初挑戦、「JTプロ公式戦」初出場
念願の「JTプロ公式戦」初出場を果たした服部慎一郎さんは、2011年度に「将棋日本シリーズ こども大会」北陸・信越大会(当時)に出場し、高学年の部で優勝を果たしています。
今回のインタビューでは、将棋を始めたきっかけから、「将棋日本シリーズ こども大会」の思い出、プロを目指したきっかけなどを語っていただきました。
こども大会への参加を考えている皆さんへのメッセージもいただきました。最後までぜひお読みください!
JTプロ公式戦について
「JTプロ公式戦」はトップ棋士12名の豪華な顔ぶれが、公開対局により「JT杯」のタイトルを争います。
公開対局ならではの間近のライブ感を楽しむなら「会場観戦」、実況を楽しむなら「ABEMA生中継」、じっくり戦況を味わうなら「棋譜中継」。お好みのスタイルでご観戦いただけます。



服部さんに過去の「JTプロ公式戦」の中から一局を選んでいただきました。
特に印象に残った局面もワンポイント解説!
よく将棋を教えてもらっていた山崎隆之八段が、初優勝を決めた一局なので思い入れが強いです。豊島将之JT杯覇者が優勢の時間が長く、山崎隆之八段がそのまま押し切られてもおかしくありませんでした。しかし、土俵際の勝負術が素晴らしく、優勝を決めた9三桂成は今でも強く記憶に残っています。
私は当時奨励会員で、関西将棋会館の棋士室で観戦していました。図の直前で、山崎隆之八段が逆転に成功し、157手目の9三桂成が優勝を決める一手となりました。以下、9三同香なら8六銀を指し、9四玉、8五銀、9五玉、9六歩で詰みます。
私は当時奨励会員で、関西将棋会館の棋士室で観戦していました。図の直前で、山崎隆之八段が逆転に成功し、157手目の9三桂成が優勝を決める一手となりました。以下、9三同香なら8六銀を指し、9四玉、8五銀、9五玉、9六歩で詰みます。
豊島将之JT杯覇者は豊富な持ち駒がありますが、先手玉は詰みません。苦しい局面でも相手に嫌味をつけながら粘る、山崎隆之八段の勝負術が光りました。私も今回の対局で苦しくなったら、この将棋を思い出して頑張るつもりです。
豊島将之JT杯覇者は豊富な持ち駒がありますが、先手玉は詰みません。苦しい局面でも相手に嫌味をつけながら粘る、山崎隆之八段の勝負術が光りました。私も今回の対局で苦しくなったら、この将棋を思い出して頑張るつもりです。