INTERVIEW八代 弥棋士
インタビュー
2026/07/24 公開
将棋界を牽引している棋士の一人、「平常」の棋士にスペシャルインタビューを敢行。
今回は、「JTプロ公式戦」初出場を飾る八代 弥さんが登場。
なかなか聞くことのできないプライベートなお話から「JTプロ公式戦」への想い、印象に残った過去対局の解説、将棋ファンの皆さまへのメッセージ動画など盛りだくさんです。ぜひ最後までご覧ください。
- 本記事は2026年4月時点のインタビューに基づいたものです。
- 文中に登場する棋士のタイトル・段位は対局当時のものとなります。
棋士になった時はどんな思いでしたか?
奨励会時代は、「自分が棋士になれるのかな」と不安もありました。棋士になれたことで、自分自身がうれしかったのはもちろんですが、地元の方々に恩返しができたのは正直ホッとしました。棋士になって15年目になりましたが、もうそんなに経ったんだなと感じますね。
棋士になって成長を感じた部分、ご自身の「強み」はどの部分だと感じますか
成長と言えるかわかりませんが、棋士としてやっていくんだという覚悟を持つことを確立したところです。こうした気持ちの変化は奨励会の時にはなくて、棋士を10年以上続けていく中で揺るがないものになりました。
自分の強みは難しいですね。技術的に一番強いと言えればいいですけど、そうではないと思っています。ただ、対局中に気持ちがぶれないように常に平常心を保って指していくことは意識しています。
将棋は勝てる日も負ける日もあります。対局日は自分の実力以上の120%出したいと気負わずに100%を出そうと考えるようにしています。例えば、1回戦と決勝戦で気持ちの違いはありますが、決勝だから「力を何倍も引き出したい」という気負いはないのが自分の良いところだと思います。負けても自分なりに力を出せたと思えば切り替えは早いです。

棋士として大事にしている想いはありますか。
将棋が好きなので“追い求めたい”という情熱を持ち続けることですね。仕事で多くのこども大会に行く機会がありますが、こどもたちが純粋に指している姿を見ると、将棋の魅力は年齢問わずに楽しめることだと改めて思います。私自身も年配の方に教わって、棋士を目指すことができましたから。
こだわりやゲン担ぎはありますか。
ゲン担ぎはありますね。対局前日、夕食を妻と一緒にとるときに、私が「これにしようかな」と言ったら、妻から「それを選んで、前に負けたから違うのにしたら?」と言われたことがあるので、私以上に妻の方が気にしているかもしれません(笑)妻にはゲン担ぎも含め、前日に環境を整えてもらっていますね。
お休みの日はどのように息抜きをしていますか
最近はこどもと遊ぶことが息抜きになっています。家で遊んだり近所を散歩したりしてリラックスできていると感じますね。対局をしていると、一日を将棋盤の空間に縛られて過ごすことになって視野が狭くなってしまいます。私は育った環境の影響もあって、自然が多いところが好きなので、公園などに出かけたり、広いところに行くとリラックスができます。
「JTプロ公式戦」に出場が決まったときにどのような思いがありましたか。
限られた棋士しか出られない棋戦ですから、自分があの舞台に出られると思うと非常にうれしかったです。将棋を知らない方に「八代さんの将棋を生で観戦することはできますか。どんな感じで指しているのか知りたいです。」と言われることがあるのですが、普段の対局は将棋会館で指しているため、観戦してもらう機会がありませんでした。「JTプロ公式戦」では公開対局なので観戦してもらえる環境で指せるのはうれしいですね。
「JTプロ公式戦」の特徴でもある早指しの醍醐味は何でしょうか。また、観戦に来られる方にはどういった部分を見てほしいですか。
早指しは短期決戦になるので、緊張感を短いスパンで維持するのが大事だと考えています。初めて出場するので、シミュレーションしてイメージトレーニングして臨みたいです。それでも、実際とは違うでしょうから、その部分を楽しんで対局したいです。
2026年度の目標を教えてください。
「JTプロ公式戦」やタイトル戦などの檜舞台で指すためには、たくさん勝たないといけません。面白味はないかもしれませんが、目の前の対局を気負い過ぎず、勝つために一日一日を大事に過ごして最善を尽くしていきたいです。今回の「JTプロ公式戦」も一戦一戦を頑張ったことが出場につながったと思っています。

「JTプロ公式戦」に向けて、意気込みをお願いします
公式戦でも普段の対局と環境が大きく違う中で指すことになります。戸惑うことなく、この環境で指せることに感謝しながら臨みたいと思います。勝ちたいのはもちろんですが、会場で将棋を指しているときに、自分がいちばん楽しんでいたいです。


八代 弥(八段)
1994年3月3日生まれ静岡県賀茂郡出身
- 2000年小学校1年生の頃に将棋を始める
- 2005年「将棋日本シリーズ こども大会 静岡大会」高学年部門で準優勝
- 2005年奨励会入会
- 2012年四段に昇段、プロ入り
- 2015年五段に昇段
- 2017年「朝日杯将棋オープン戦」優勝、六段に昇段、新人賞を受賞
- 2019年七段に昇段
- 2025年八段(七段昇段後公式戦190勝)に昇段
- 2026年「JTプロ公式戦」初出場
念願の「JTプロ公式戦」初出場を果たした八代 弥さんは、2005年度に「将棋日本シリーズ こども大会」静岡大会(当時)に出場し、高学年の部で準優勝を果たしています。
今回のインタビューでは、将棋を始めたきっかけから、「将棋日本シリーズ こども大会」の思い出、プロを目指したきっかけなどを語っていただきました。
こども大会への参加を考えている皆さんへのメッセージもいただきました。最後までぜひお読みください!
JTプロ公式戦について
「JTプロ公式戦」はトップ棋士12名の豪華な顔ぶれが、公開対局により「JT杯」のタイトルを争います。
公開対局ならではの間近のライブ感を楽しむなら「会場観戦」、実況を楽しむなら「ABEMA生中継」、じっくり戦況を味わうなら「棋譜中継」。お好みのスタイルでご観戦いただけます。



八代さんに過去の「JTプロ公式戦」の中から一局を選んでいただきました。
特に印象に残った局面もワンポイント解説!
この対局はリアルタイムで中継を見ていました。トップ同士では押したり引いたりの展開が多いですけど、本局は中盤戦がほとんどなくて、戦いになったらすぐに終盤戦に入る激しい攻め合いでした。こんなノーガードもあるんだなと、インパクトがあってよく覚えています。
7七歩の局面は激しい攻め合いです。それでも、次に藤井聡太竜王の7八歩成と金を取る手が王手ですから、豊島将之JT杯覇者は7七同金と歩を取って守ると思っていました。ところが、3二金(73手目)から3三竜(75手目)と攻めの手で応じてさらに踏み込んだのです。
7七歩の局面は激しい攻め合いです。それでも、次に藤井聡太竜王の7八歩成と金を取る手が王手ですから、豊島将之JT杯覇者は7七同金と歩を取って守ると思っていました。ところが、3二金(73手目)から3三竜(75手目)と攻めの手で応じてさらに踏み込んだのです。
そして、藤井聡太竜王の7八歩成(76手目)に豊島将之JT杯覇者が同玉(77手目)と取って頑張ったのも好手でした。先手玉は怖いんですけど、ギリギリまで頑張ってから4筋方面に逃げたのが正しい判断です。藤井聡太竜王の王手は続きましたが、先手玉は大駒が守りに利いていて詰みませんでした。
トップ棋士の中でも詰将棋の名手として知られる藤井聡太竜王を相手に、7八同玉で大丈夫と見切った豊島将之JT杯覇者の強さを改めて感じた将棋でした。
そして、藤井聡太竜王の7八歩成(76手目)に豊島将之JT杯覇者が同玉(77手目)と取って頑張ったのも好手でした。先手玉は怖いんですけど、ギリギリまで頑張ってから4筋方面に逃げたのが正しい判断です。藤井聡太竜王の王手は続きましたが、先手玉は大駒が守りに利いていて詰みませんでした。
トップ棋士の中でも詰将棋の名手として知られる藤井聡太竜王を相手に、7八同玉で大丈夫と見切った豊島将之JT杯覇者の強さを改めて感じた将棋でした。