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CEO
メッセージ「JTグループの
さらなる成長に向けて」代表取締役社長
寺畠 正道
当社グループを取り巻く経営環境および業績について
2024年度を振り返ってみると、地政学的リスクの顕在化、世界的なインフレーションによるサプライチェーンコストの上昇、大幅な為替変動などにより、当社グループにとって厳しい事業環境となりました。しかし、そのような状況下でも、たばこ事業がトップライン成長を牽引したことで、全社の売上収益および調整後営業利益(Adjusted operating profit 以下、「AOP」)は過去最高の実績を達成し、2022年度から3期連続での達成となりました。
特に、利益成長の中核かつ牽引役であるたばこ事業では、Combustibles*1において主要市場を含めた多くの市場でのシェア拡大やプライシング効果の発現が、引き続き利益成⻑のドライバーとなりました。Combustiblesでは持続的なROIの改善を戦略として掲げており、2024年10月に完了した米国Vector Group Ltd.(以下、「Vector社」)の買収はこれに寄与するものと考えています。同社買収により、ROIの改善はもちろんのこと、米国市場におけるプレゼンスの拡大や、為替変動の影響を受けづらいハードカレンシーによる安定的なキャッシュ・フローの創出、中長期に亘る利益貢献等を期待しています。
Reduced-Risk Products(以下、「RRP」)*2では、Combustiblesから得た利益を原資に、Heated tobacco sticks (以下、「HTS」)*3への投資を強化し、当社グループのグローバルHTSブランドであるPloomの地理的拡大を推進しました。この結果、2024年度にはヨルダン、フィリピン、韓国を含め新たに11市場に展開し、展開国数は26市場(2025年5月時点)となり、着実に進捗しています。
また、加工食品事業においても厳しい事業環境の中、AOPは2期連続で過去最⾼を達成し、グループ全体の利益成長を補完する役割を果たしています。
なお、カナダにおける当社現地子会社を含む被告たばこ会社に対する喫煙と健康に係る訴訟において、2025年3月6日(現地時間)、現地裁判所は、再生計画案を承認する旨の決定を下し、和解することとなりました。これにより、当社現地子会社に対し係属中のすべての訴訟が終局的に解決する等、当社カナダ事業における過去四半世紀に及んだ不透明な状況が解消されることにとどまらず、収益やキャッシュ創出における当社グループへの継続的な貢献を見込むことができる状況となりました。
*1
Combustibles:製造受託/RRPを除く燃焼性のたばこ製品
*2
Reduced-Risk Products(RRP):喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品。当社製品ポートフォリオにおける加熱式たばこ/E-Vapor/無煙たばこ製品等が含まれる
*3
Heated tobacco sticks(HTS):たばこスティックを直接加熱する加熱式たばこ。1スティック=紙巻たばこ1本として換算
事業を通じた「心の豊かさ」を提供
会社化以前から大切にしている価値観である「心の豊かさ」を2023年度に、JT Group Purposeとして再定義しました。私はこのPurposeの具現化に向け、既存事業の価値最大化と「心の豊かさ」に資する事業の開発・実行を推進していくことが重要であると考えています。
既存事業の価値最大化
現在の主力事業はたばこ事業であり、今後の成長にも自信を持っています。特に、Combustiblesは今後も販売数量と収益の大半を占めると想定しており、引き続き重要な役割を果たしていくと考えています。また、HTSは2035年度までに最も成長するカテゴリであると見立てており、これを将来の利益基盤とするために、RRPの中でもHTSに対して経営資源を集中的に投入しています。2028年末までのRRPビジネスの黒字化*4に向けては計画に沿って進捗しており、日本、イタリアを含むkey HTS marketsにおけるHTSの当社グループカテゴリシェアを10%台半ばまで拡大することを目指します。
*4
RRPカテゴリの粗利からマーケティング費用を差し引いた損益の合計(間接費の配賦前)
「心の豊かさ」に資する事業の開発・実行
既存事業以外においても、JT Group Purposeの具現化に向けた取り組みを推進する目的でコーポレートR&D組織D-LABを設置しています。D-LABでは、「⼼の豊かさ」を中⼼概念とした研究や未来の事業シーズの探索・創出を推進し、数十年後の未来においても多くの方に「心の豊かさ」という価値を提供できるようさまざまな活動を行っています。社会における「⼼の豊かさ」を育むことに貢献できるよう、⻑期的な視点で取り組んでいきます。
JTグループのさらなる成長に向けて
当社グループを取り巻く事業環境は引き続き、地政学的リスク、各国政策が世界経済に与える影響、増税・規制議論の進展、それらに伴う消費者行動の変化等をはじめとし、より一層不透明感を増しています。これらの動向を今後も引き続きモニタリングし、柔軟に対応してまいります。
当社グループは、中長期的には引き続き全社利益管理指標である為替一定ベースAOPの年平均mid to high single digit(1桁台半ばから後半)の成長を追求していきます。なお、経営計画2025の計画期間である2025年度から2027年度においては、為替一定ベースAOPのhigh single digit(1桁台後半)成長の実現を見込んでいます。中核事業であるたばこ事業を取り巻く事業環境は、総需要の減少、ダウントレーディングの継続、RRPに対する規制・税制の複雑化、競争の激化など、依然として厳しい状況が続くと予想されます。従来の紙巻たばこなどを含むCombustiblesにおいては、シェア成長とプライシングを主要な成長ドライバーとし、力強いトップライン成長の実現を目指し、RRPにおいては、HTSへの重点的な投資を継続・強化し、Ploomの地理的拡大、既存市場でのシェア獲得を強力に推し進めることで、2028年度のRRPビジネスの黒字化を実現していく考えです。
なお、当社は2025年5月7日に、塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)への医薬事業の承継および鳥居薬品株式会社(以下、鳥居薬品)の株式の譲渡に係る合意について公表いたしました。
医薬事業、ならびに鳥居薬品は、長きに亘り、当社グループの利益成長に貢献してまいりましたが、近年の医薬事業を取り巻く環境変化を踏まえますと、当社グループがこれまで積み重ねてきた創薬力を更に発展させ、より多くの患者様に医薬品を届けるためには、医薬事業と鳥居薬品の双方について価値を見出し、かつ新薬創出に重点を置く製薬企業である塩野義製薬の下で事業展開を行うことが最善の選択と判断しました。
今後の当社グループの事業ポートフォリオは、たばこ事業と加工食品事業の二つとなりますが、それぞれの位置づけに変更はございません。引き続き、たばこ事業は利益成長の中核かつ牽引役と位置づけ、加工食品事業については利益成長を補完する役割を担うものとし、グループ全体でJT Group Purposeの実現と中長期に亘る持続的利益成長を目指してまいります。
人的資本の拡充
当社グループのさらなる成長にとって、事業を推進する「人財」が最も重要な競争力の源泉であり、当社グループの大きな強みでもあると考えています。私は過去に海外企業の大型買収およびその後の統合プロセスも担ってきましたが、多様な人財なくして円滑な統合、その後の成長は成し得なかったと実感しています。当社グループは、国籍数で見ても100カ国以上の従業員が働いています。また、国籍や性別、年齢だけではなく、経験や専門性など、異なるバックグラウンドや価値観を尊重することが会社の持続的な成長につながるという、ダイバーシティ&インクルージョンの考えに私も大きく共感しています。
当社グループの従業員一人ひとりが原動力である(People come first)との考えのもと、2024年度には人的資本の定義を明確化し、人的資本拡充に向けた注力テーマを設定しました。また、著しく変化する事業環境の中でも当社グループが持続的に成長していくためには、それを支える組織力をさらに高めていくことも重要です。組織力は、企業とそこで働く従業員が、企業の目指す方向性を理解しともにその実現に向け、自発的に成長・貢献し合い信頼関係を築くことで育まれるものと考えています。従来積極的に各職場に訪問し、従業員との対面でのコミュニケーションを積極的に図る中で、当社グループの方向性やJT Group Purposeに込められた想いや価値観を共有してきました。今後は、当社グループ従業員を対象としたエンゲージメントサーベイ(EES)の結果も踏まえながら、状況把握・検証をしっかりと行い、組織力をより一層高めてまいります。
ステークホルダーの皆様へ
持続的な利益成長を目指すべく、経営理念である「4Sモデル」およびJT Group Purposeに基づき、経営資源を配分していく方針に変更はございません。具体的には、中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資、なかでもたばこ事業への投資を最優先とし、引き続き事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視していきます。株主還元についても引き続き、資本市場における競争力ある水準として、配当性向75%を目安*5とし、中長期に亘る利益成長を実現することで、さらなる株主還元の強化を追求していきます。
今後も継続すると見込まれる厳しい事業環境の中においてもグループ一丸となって、お客様の期待を上回る製品やサービスを生み出し続け、当社グループの持続的な成長を目指していきます。同時に、事業を通じて、さまざまなステークホルダーの皆様へ「心の豊かさ」を提供し、必要とされる存在であり続けるために、私自⾝強いコミットメントを持って当社グループの弛まぬ進化に邁進してまいります。ステークホルダーの皆様には、今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
*5
±5% 程度の範囲内で判断

経営資源配分方針
- 中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資を最優先
- 事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視